旭対オルガレギオン 1
雪原の門番オルガレギオンは旭に襲いかかる、
初撃は牛での突進攻撃、
左手の巨大な斧を肩に背負い右手の長槍は地面を削るように、
雪をかき分けながらやってくる。
「ッッッ」
旭は冷静に牛の突進攻撃をギリギリで右に躱す、
雪原の門番オルガレギオンは槍を地面に刺し、それを支えにし急停止する、
回避して正面を向いたばかりの旭に振り返りながら狙いを定め、左手巨大な斧を振るう、
「ッッッ」
間一髪での更に右に回避、神がかりと言っても過言ではない、
初見で、あの重量感あり過ぎる突進をかわし、その直後に巨大な斧の斬撃、
17才の元女子高生は避ける、
「はぁっはぁっはぁっ、」
もう肩で旭は息をしている、一瞬の攻防、
しかし、その密度は異次元、たとえ、斎藤 一に勝ったとはいえ、
たかが一勝、あの『タイプ』との経験値、
転用できる部分は多いとはいえ、敵が違えばプレッシャーも違う、戦い方も違う、
今相手位にしているのは遙かな巨躯、巨体、
人の感情すら無い、化物、BOSS。
だが、これは彼女の望んだ戦い、
「(あっっぶないぃぃぃ、なにあれッ、こわっこわッ、
でも、これくらいじゃなきゃ、これでいいっ、これでいいよッ)」
「(ともかく、攻撃パターンを見極めないとお話にならない、
レピオスは6、アニマの雫は25、おそらく、予感では半日はかかる、
それは構わない、攻撃パターンの変化も当然あるはず、
とにかくパターン確認して感触を確かめて、よしっ、確認終わりっ)」
雪原の門番オルガレギオンは
現状の確認を刹那の思考で終えた旭に向かい次の攻撃に移っている。
旭に対し、真正面になるようにバックステップ、
そのまま再び突進してくる、先ほどと同じように、トレースするように、
ほぼ同一のタイミングで旭は突進を右に躱す、
旭が先ほどまでいた場所を3メートル程超えたところで止まり、
旭が今いる方向に前足を上げて方向転換する、そして構えた槍で遠目からの攻撃、
「!?」
旭は咄嗟の判断でオルガレギオンから離れるように後ろに後転する。
「(槍の先端から雷ッッ、それでリーチを伸ばすのッッずるすぎッッッ)」
しかしそれだけでは終わらない、その槍を纏った槍の突き雷槌攻撃は後二回旭を狙い続ける、
「うそっ、でしょっ」
そう言いながらも連続3連、槍攻撃を旭は躱す、
「ッッッ(あれは、前に出ながら躱さないと攻撃できないのかっ、)」
雪原の門番オルガレギオンはスタスタとゆっくりと歩く、
様子を見るかのように、旭に向かうわけではなく、旭を起点に円を描くように、
「はぁッはぁッはぁッ(次は、なに?)」
オルガレギオンは何を思ったか小走りに旭と距離を取り始める、距離は80m、
「なにっなんなのッッ」
声にする、不安感、未知への恐怖、
その思考の片隅に龍人などいない、そんな余裕など無い、
槍を構える、走りだす、雷を強力に纏う槍、右手を引き、旭は理解する
「(投擲!?っ 速度はっ避けッッ)」
その思考の刹那放たれる、
高速の雷槌を纏う槍、『そんなもの』初見で避けられるわけはない、
「がッッッ」
その槍は雷の槍は、旭の右膝に突き刺さり 貫く、
その槍は旭から15m先の雪の地面に突き刺さる、
旭は回転する、2回転する、槍の威力に無力に回転する、
無様に頭から雪の地面に顔を埋める、
「!?」
この攻撃はコレでは終わらない、それは旭は直感している、
雪の冷たさが、痛みが、思考を遮ったとしても、それはわかる。
投擲した勢いそのままに走り来る牛、
雪原の門番オルガレギオンは旭の手前10メートルで飛ぶ、
その跳躍力は破格、
重たいであろうその巨躯を軽々と地面から5メートルは上に飛上させる。
そして両手持ちした巨大斧を旭の直上に振りかぶり
寝転ぶ旭に追加の攻撃を加えようとする、これは確定したダメージ、
初撃を食らった時点で、ある意味約束された無慈悲な一撃、
狂人な意志力で即座に立ち上がり、
対応するのならギリギリ躱せるという所見にはおよそ不可能、
だからこれは仕方のないダメージ、
龍人は、動かない、戦う前の約束があるから、
まだ死なないとわかっているから、
そして例え絶命だとしても龍人は動かない、
助ける期間はもう過ぎている。戦いを汚すことは許されない。
「ッッッ」
その巨大な斧は勢いをつけ、
上空からオルガレギオンの体重も乗せられた無慈悲の一撃が旭の背中を砕き、刃は肉をえぐる、実際に砕かれるわけではない、肉をえぐられるわけではない、しかし、痛みは伴う、放たれた一撃は、放ったオルガレギオンの身体を地面から離し、雪とその下にある地面をせり上げ、隕石か何かが遙か上空から落ちたかのような惨状を生み出す、
「アガッッ」
声は出る、その衝撃と痛み、想像すらしたくないほどの激痛ではない、
その果ての何か、身体は吹き飛ばされる、上空に 再び2回転 尻餅をつく形で、
「はぁッはぁッはぁッ」
旭は膝をつき、両手で膝に手をつき、支えにし、震えながらも立ち上がる、
落ちていた武器を、ロングソードを手に取り、前を向く、
待ってはくれない、立ちはだかるは雪原の門番 オルガレギオン、
この世界のBOSSの中で龍人が知るかぎり3本の指に入る、
下手をするなら、条件次第でナンバーワン、
強化されたという噂、初見、一人、レベル、ステータス、
旭は気づいていない、現状、この世界で無謀をするなら、これ以上はない、
まだ残している手段もある、
ダメージを負い極限状態になった時 攻撃パターンすら増え、変わる、
レピオスは半分、一時間で1つ回復するとはいえ、
アニマの雫も多少所持しているとはいえ、
恐らくこれは龍人の理解すら超える戦い、
だが、これが朝凪 旭の通常ルート、最長で、最短、
それしか無いルート、間違えてはいない、正しさしか無い、
彼女がただの女子高生なら、人としてなら間違いでしか無い、
「ッッッ」
オルガレギオンの攻撃は始まる、
これはオルガレギオンが死ぬか 旭が死ぬまで続く命のやり取り、
お互いに死のうとも、復活する。
しかし、旭には退路がない、
帰還のアイテムも所持は所持はしているものの、
そんな選択肢など最初から無い、
以前一度死んだ彼女は、もう一度の死を恐らく許せない、許されない、
その瞬間失う資格、『吾妻龍人の相棒』という資格、
彼女はいつもギリギリ、胃液を吐き出しそうな、
喉の手前まで来ていそうな、ギリギリ、内臓はギリギリ、
だからこそ、いつも彼女は、外面は、笑う、彼女は、いつも酷く正しい、
いつも、矛盾を抱えることを自然にしか出来ない、彼女は意味天然の矛盾者。
避ける、避ける、躱す、
突進からの三連突き、突進からの巨大斧による攻撃、
彼女は、笑う、人としての所作が起こすダメージの残症が和らぐまで避け続ける、
「はぁッはぁッはぁッ(もう少しっもう少し)」
「((痛みはない、これは勘違い))」
しかし、この世界、『カルマ』、『地獄』、
絶望の大地『テラ・グラウンド』甘くはない、
のがしてはくれない、いつだろうが与えられる試練、試され続ける生者、
雪原の門番オルガレギオンは再び旭から距離を取る、それは、『絶望』、
その刹那、龍人はこの日、一度目の戦慄をする、戦慄を覚える、
雪原の門番オルガレギオンが旭に背を向けた瞬間、
龍人は旭がレピオス瓶を飲むと踏んでいた。いや、踏んでも居なかった、
それは息を吸う用に行なう、当然の行動、
生者なら当然の行動、
これがゲームだとしても、当然の行動、
彼女の決断は、いや、彼女は恐らく決断はもうしていない、
それは、彼女の当たり前、彼女の行動は、『行動はなにもしない』
龍人は理解する、『斎藤 一』と何をしてきたのか、ほぼ理解する。
「なにを、おまえっ」
あまりの戦慄と、驚愕に、龍人は発言せざる得ない、
理解したとしても言葉はもれざる得ない。
あの強烈な攻撃を食らった旭は未だ回復をしていない、
それまでの攻撃はただ躱すだけ、回復せず確実に回復できるモーション、
あの行動を待っていたと思っていたが、それすら違かった。
彼女の目的は、生と死の狭間での経験値、それ以外興味が無い。
もう一度『あれ』を喰らえば彼女は死ぬ、
ぎりぎり持ちこたえられるかもしれないが、
そんな状況で初見の相手に手札をすべて見ていない相手に、
BOSSにそこまで背水状態で立ち向かうことは龍人にとって死、
龍人の目から見てその行動は異常、しかし、それは龍人の常識、
龍人は『最強の脳筋』、
言い換えれば『最強の、最長の臆病者』
その反対は、必然に『最究極の無謀』、『最速の無謀者』、
旭は気づいている、気づきすぎている、無自覚などで入られない、
無謀でありながら利口であろうとしようとしている、
それは、龍人がまだ、持ち得ない、
これから踏み出さなければならない『領域』、
彼が持ち合わせない未だ未開の地、
ヴァルディリスとの戦いで僅かに踏み込んだばかりの『領域』、
雪原の門番オルガレギオンは旭を真正面に再び先ほど旭が食らった、
あの高速の雷槌の槍と、過重の大斧の体制に入る。
走りだす、疾走りだす、人と牛のハイブリット、その槍は放たれる、
「(放たれたと思ったら食らっていた、ならっ)」
旭は避ける、躱す、ギリギリで躱す、理屈でわかっていても普通なら動けない、
高速の雷槌を纏う槍の投擲、自らの死、
そんなものを感じながらの回避行動、次に来るは過重の大斧、
迫り来る足音に恐怖しないものはいない、
飛ぶ、両手に持つ巨大な斧を、上空から、頭上から、旭に容赦なく振り下ろされる、
「ッッッ」
旭は前進する、前方へ回避行動を取りつつ、
BOSSの攻撃により飛散する雪と地面に乗り、
下降しながら旭は雪原の門番オルガレギオンに攻撃を試みる、
「はッッッ」
二連撃、旭のこの戦い初めての攻撃、
旭は『感触』からどれほどの体力か予測する、
雪原の門番オルガレギオンから予測しながら距離を取る、
「ふー(やっぱり時間、掛かりそうだなぁ、でもこれが、私の戦いだから)」
「(今日は、今回は、龍人も見てる、)」
「(燃えない私じゃない、…私じゃ…ないよッ)」




