二人の長者
ヴァルディリス城の王の玉座、
『玉座の間』、
龍人は辿り着く、
黒い鉄の金の装飾を施された立派な扉を龍人は押し開く、
その眼前には余裕な面持ちで玉座に座る『ルアーノ・ヴァルディリス王』
右肘は玉座の肘掛けに、右手で頬を突き、
左手の薬指に付けられた『指輪』を仕切りに気にし、見つめている、
「よう、『ヴァルディリス王』、俺との戦いを望んでるって?」
それなりに足音を立てて来たはずだが、
全く気付こうとしないヴァルディリス王に龍人は声をかける、
「ああ、来たか、…そうだな、望んでいる、」
ようやく龍人に気づいたヴァルディリス王は指輪を見せびらかすように龍人に手の甲を向け言う、
「この『指輪』がそうしろと言っている。」
「? その『指輪』が? なんの効果もない『謎の指輪』じゃなかったのか?」
訝しむ龍人にヴァルディリス王は少し語彙を強めて言い放つ、
「何を言っているッ、この『指輪』は、『示す指輪』は、
『転生』への近道を常に示してくれる『最高の指輪』だ、
指示に従えば1年ほどでたとえ『カオスアニマ』を受け入れていようと
『転生条件』を満たすと言っているっ」
自信満々に、『悪い矛盾』を語るヴァルディリスに龍人は呆れる。
人は『矛盾』する生き物、
『人としての龍人』としても、
『ラノベ作家』であった『作家としての龍人』としても、
それは明らかに悪い矛盾と感じ、龍人は完全に呆れていた。
「(『矛盾』にも『良い』『悪い』がある、
こいつの『言葉』から『感じる』のはその『悪い矛盾』、
明らかに、借金まみれの妻帯者の男が
現実感のない夢物語の『一発逆転』の手があると
『意気揚々』として語っているようにしか見えねぇな、)」
そう一瞬のうちに感じた情報を脳内で整理した龍人は
ご乱心とはわかっていてもルアーノ・ヴァルディリスに苦言を呈する他はなかった。
「…? うんなわけないだろう、『カオスアニマ』を集めることが条件だろ?、
『始まりのばばぁ』がそう言ってたろ?
だいたいお前は今、お前自身が言ったように『カオスアニマ』を受け入れ、
『特需』を得てその『輪』から外れているんだ、
取外方法があるなら可能性はあるかもしれないが『特需』を受けてしまった以上
その時間自体は取り消せねぇ、ゆえにそれもおそらく無理だろう、なに言ってやがる、」
ヴァルディリスは、その『正論』を鼻で笑い、言い放つ、
「『例外』がないとも言ってないよ、龍人、
まあここで議論してもしょうがない、…やろうか、『吾妻龍人』、」
「…(だから一度でもカオスアニマを受け入れちまったら『例外』もクソもないだろう)」
「無論、この『指輪』が言うように、お互いの『カオスアニマ』を賭けて、」
ヴァルディリスは左手の中指に付いた『示す指輪』を
胸元で右手で触りながらそう言い放つ、
「…まぁいい、お前がトチ狂おうと、ご乱心だろうと、なんだろうと、
こっちにゃ好都合だ、
…吾妻龍人は、『カオスアニマ』を賭けてルアーノ・ヴァルディリスと戦うことを誓う。」
『もう与太話には付き合っていられない』、
そう言い放ちながら龍人は『カオスアニマ』を賭けて戦う宣誓をする、
その宣言を聞き届け、大剣『ベルフォニア』を右手に、
左手に大盾『ガルゾムの大盾』を展開させる、不気味ななにかの顔が描かれる白金の大盾、
「ルアーノ・ヴァルディリスは、『カオスアニマ』を賭けて、
吾妻龍人と戦うことを誓おう。」
一瞬仄暗く光り輝く二人、契約は成された、ヴァルディリスは不敵に笑い、言う、
「さぁ、勝てるかな、『脳筋』、『吾妻龍人』、
あの日の立会いとはわけが違うぞ、
かつての王、
この城を築いた『ガルデア・マキナス』の『カオスアニマ』を取り込んでいる、
この『ルアーノ・ヴァルディリス』に、」
「勝つさ、一度放棄した『転生』を、
叶いもしない『即席の転生』を願う『クソ王』など、『楽勝』すぎる、」
龍人は大剣『ヴォルファング』を右手に持ち臨戦態勢に入る、
二人の『長者』の戦いが、始まった。