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熟練の生者たち

挿絵(By みてみん)



 ここはアイテール、始まりと終わりの村、

 その一角に生者に平等に与えられているお座りアイテム

 『灰色の石』を使用した生者が複数人居る、

 このアイテムはおしりは少し冷たいように見えるがそういう冷たさはない、

 少し硬さがあれではあるが、

 ちょっとしたお話程度なら何ら問題ない生者の必須アイテムである。

 

 そのアイテムを使った複数人の生者と数匹が神妙な面持ちでそこで待機していた。

 まだ昼を少し過ぎた時間、

 通常なら亡者や亡獣などを狩りにアニマを狩りに行く時間、

 アイテールにはまばらにしか生者はいない。



「皆集まってもらって感謝する、雑貨商人『クインテット』、アヒルのジョージだ、」



「とりあえず僕の偏見で誠に勝手ながら優秀な『生者』を選定させてもらった」



「僕が簡単に自己紹介する、右から」



「『脳筋おじさん』、吾妻龍人、と、成長著しい『脳筋の相棒』、朝凪 旭」



「『鉄の心』綾辻鉄心あやつじてっしん



「『夫婦生者』ジャック・ユーキリス、アリス・ユーキリス夫妻」



「『オカマの槍使い』 天堂てんどう まさる



「ちょっとちょっとジョージ勝子しょうこって紹介して」



 オカマの槍使い、天堂 まさるはその紹介が気に食わなかったのか

 勝子しょうこと訂正するように要求するが、龍人の言葉がそれを許さない形になる、



「で、この6人で『ヴァルディリス王』をやる、そういう話なのか?」



「その通りだよ龍人、まぁいまから詳細を説明する、しばらく聞いててくれるかな」



「ああ」



 龍人は視線を真正面に戻し、目を閉じうつむき、聞くことに専念する体制を取る、


「今回集まってもらったのは『ヴァルディリス王』が領地を広げようとしている、

 というか現在進行形で戦闘能力の極端に低い

 お抱えの行動範囲の広い全く攻撃性のない白金の騎士の霊体に命令し、

 広げ始めている。」



 霊体にも種類がある、地に根付き力を増すタイプ、

 ただの浄化ついでにほとんど戦闘力のない操り人形タイプ、

 この後者のタイプは直ちに浄化はするが王を名乗ることを許された者に

 承諾することで起こせる意味『奇跡』のようなタイプである、



「場所は『始まりの狩人と亡者の森』、そこに新たな城を築こうとしている」



「(…本当に『ご乱心』だな、確かに様子はおかしかったが、

 ヴァルディリス、気は確かか?、)」



 口に出しても良かったが話を腰を折る可能性もあったので

 龍人は心のなかでそう声を発する、

 目を開けジョージに視線をやり、続きに聞き入る、



「いままでヴァルディリス城から行ける『詩姫うたひめほこら

 『神に至れぬ古竜の巣』があるわけだが、

 前者は我々『商人』もその他生者も行き来が自由だった、

 だがそれすらもこれからは拒否するらしい、

 そして更にはこの『領地拡張』、というわけだ」



「『詩姫の祠』には皆知っての通り、

 『魔法』を伝承させるための『魔晶石ましょうせき

 『ミルドクリスタル』が取れる唯一の場所、

 私事ですまないが『商売』としても、

 これから迷い来る『生者』たちのためにも、これを許す訳にはいかない」



「その為に、『ルアーノ・ヴァルディリス』を撃たねばならない、…前置きは以上だ」



「もちろん私達、『商人』は出来る限りバックアップするわ、ね、松原、」



 女魔法系武器商人シエスタ・パンドラが言う、

 魔法系の伝承石を売る彼女からした死活問題だ、

 だがそれほど焦っている様子はない、『問題はすぐパージできる』、

 そう言う面持おももちだ、それだけ集まった6人の実力を知っているのだろう。



「はい、弓矢、武器、予備が必要なら『無償』で提供します」



 もう一人の武器商人松永も、同じ商人仲間がいなくなるのは困るのだろう、

 協力は惜しまないらしい、


「見返りに何かを『報酬』として出すべきなのでしょうが、

 あなた方は熟練の『生者』だ。私達ではその報酬を用意できない、

 完全なボランティアとなってしまうが、受けてもらえるのなら、

 この場に残ってもらいたい、

 了承できないのであれば席を立ってもらって構わない」




     「……」




 その言葉に、沈黙と不動で6人は答えた。



「…ありがとう、アルフレド、ゴーシュ、クレオパトラ、小太郎、

 地図と敵の配置のコマを」



 黒いシルクハットを冠るジョージはそう、熊と、ペンギンと猫と、犬に指示を出す、

 カオスな光景ではあるが、アイテールでは『日常』でもある。

 動物は基本『リディアの港』の先、

 『仄暗い野盗たちの楽園』の更に先『獣たちの怨嗟の魔境』から始まる。


 人と竜と同じように、転生を目指せはするらしいが、目指すものはいない、

 何も装備できない、装備品がない、攻撃方法も種別により違い、

 現世の攻撃力がそのままがその者の攻撃力、故に全く平等ではない、

 一度の死ですぐにアニマを失い、亡者、いや、『猛獣』と化し、

 その果てに他の『猛獣』のアニマと融合し、

 その土地の力場が創造する未知の獣と化す、

 だが彼らはそこを抜け、『アイテール』までたどり着き、

 長年ここでお茶などを売る雑貨屋を営んでいる。

 そこで得た、人のアニマを使用しているため、彼らは話せる。



「ヴァルディリス城の中は敵が多い、旧ガルデアの銀色の騎士、

 現ヴァルディリス王の配下、白金の騎士、

 ヴァルディリス王はガルデア王の『カオスアニマ』を取り込み、

 あの城にいる全ての騎士に命令、動かすことができる。

 その現在の量は鉄心がつい最近一周りしたばかりなのでほぼ正確に把握してある、

 数にして70」


「雑魚はこれだけのメンツなら余裕でなんとかなるだろうが、

 どうする、あの『サイトウ』と『ヴァルディリス王』は、」



 6人の一人、『鉄の心』黒髪の生者、綾辻鉄心はそう尋ねる。



「『カオスアニマ』による『決闘』、それしかないでしょう、

 『サイトウ』はどうかしりませんが、

 『ヴァルディリス王』に限ってはそうするしかない、

 いくら乱心しているとは言え

 カオスアニマを取り込んだことで

 いくら囲んで大聖堂送りにしたところで復活する可能性が高いです、

 最悪ここアイテールで復活する彼を粛清し続けるのが一番安全かもしれませんが

 流石に気分がいいものではないですし、この村は平和であってほしい、

 カオスアニマによる決闘を受けるかどうかは向こうの

 『気分次第』という不確かなものに頼ることになりますが…、

 状況的にヴァルディリス王は本来受けるしか無い、

 今の乱心したヴァルディリス王は少し読めないところがあるのは確かですが……」



「…やってみなきゃわからんか、」



 鉄心はそう自分に言い聞かせるようにそう言った。



「ともかく『カオスアニマ』を転生に使わず、

 取り込んだ『ヴァルディリス王』はかなり厄介だと思われます、

 私は、その役目、『龍人』にお願いしたい、」



 その視線に目を開き答え、龍人は言葉を発する、



「…まぁ、そうなるな、『転生』を目指して長いことこの世界にいる俺が適任だろう。」



「ノンノン、それはちがうなぁ龍人、『転生』なら私達ユーキリス夫妻も目指している、」



 龍人は少し驚いた表情でジャック・ユーキリスの顔を見る、



「…俺もな、」



 続けて『鉄の心』綾辻鉄心も自己申告する。



「私は目指してないけどこの世界にいる長さならかなりのものよ? んーちゅっぱッ」



 聞いてもいないが『オカマの槍使い』、ピンク色の坊主頭、天堂 勝、

 いや勝子はエアキッスを交えて申告する。

「…そうかすまなかった、自惚れが過ぎた上に無知過ぎたな、

 まぁそれでも、一度練習試合だが遥か昔に立ち会ったことがある、

 理由としては弱いが俺が適任だとは想う、」



 龍人は頬を掻きながら少しうつむき、謝罪をした。

 そんな龍人に目をやりながら綾辻鉄心は言う、



「…そうだな、やはりお前が適任だと思う、吾妻、」



 龍人はその眼差しに視線を返し言葉を返す。



「…龍人でいい」


「俺も、鉄心でいいぜ」



 互いに若干の笑みを浮かべ、



「異論がある人はいますか?」



 アヒルのジョージは他に問う、



「ないよ、ね、ダーリン」



「ああ、龍人が適役だろう、」



「わたしもなんの異存もないわ」



 ジョージはそれを確認すると次に問題を定義する、



「となると残る議題は『サイトウ』ですが」



      「私がやる、」



「!?」



 ジョージの発言の最中に旭が横槍を、いや、自分がやると、手を上げて申告する、



「『カオスアニマ』を賭けるかどうかは向こう次第だけど」



 その顔は『真剣』、『本気』、その瞳は、『本気』の輝きは、引く余地も、一片の迷いもない、



「おい、」



 龍人も予想外だったのか『なに言ってやがる』と声をかける、



「龍人は黙ってて、私も目指してるんだからいつかは『通る道』でしょ。」



 凛として譲る気などない様子の旭に、綾辻鉄心は確認する、



「旭ちゃん、やれるのか? あいつは相当強いぞ、

 この世界に約1000年くらいはいる熟練の生者だぞ」



 そういう鉄心に旭は視線をやり、逸らすことはない、



「俺の目から見ても相当やる、お前も見てただろう、旭、

 相手は現世でも百戦錬磨、この世界でも熟練の生者だぞ?」



 龍人に視線はやらず、鉄心に視線をやり続けながら旭は言う、



「『私』が、やる、」



「…」



「ふふふ、大した女だ、俺は異存ない、」



 鉄心はその真剣な眼差しを崩し、旭の『品定め』を終える、



「私達もないわ、ね? ダーリン」



「おーないね~、旭の『本気』、伝わった、OK、ノープロブレム」



「私も特にないわ、異論あるとすれば旭ちゃんが『女の子』なのが、ざ・ん・ね・ん・」



 それを聞いたアヒルのジョージは、最後の言葉をかける、



「話はまとまったようだ、作戦決行は『今日』鍛冶屋虎徹の時計でマルマルマルマル、

 その時刻にここを出て『ヴァルディリス』を撃つ、

 やつは、『カオスアニマ』を得て受け入れてから寝ていないと噂がある、

 故に『不可視の休息』も使っていないだろう。

 そうでなかった場合、すべての敵を排除した後、早朝にやつを龍人が撃つ、作戦の成功を祈る」





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