古竜の夢
深夜、現世で言うなら0時前後、古竜、リオレイルケイルと様々な話し、
疲れた旭は毛布にくるまりスヤスヤと可愛い寝顔を覗かせて寝ている、
焚かれた焚火が、パチパチと音を立ててわずかに周囲を照らす、
「しかし、だいぶ暇だったのになんでお前は存在していられるんだ?
BOSSじゃないなら尚更だ」
「そうだな、それだけ私も『本気』だったということだ、
そのサイズが、『本物』だったということだ。
たとえ『漏れ』が始まったとしても、始まっていたとしても、
『未練』もまた大きい、『何か』を求め続ける想いがまだある、すぐには浄化されんよ」
「…なるほどな」
「…私はな、『神』に、『憧れ』ていた、
『焦がれ』ていた、
この世界の神、竜の姿をした神、
『蒼き鱗』をまとう、この世界の『死の神』、」
「? なんだそりゃ聞いたことないぞ?」
「そうなのか? ……なるほど、お前たち人は会ったことは忘れさせられるようだ、
かつて戦闘で回収したアニマたちが、
私が独自に回収した世界に浮かぶ霊子たちが、
さまざまアニマがそう言っている、そう結論づけている、」
「会う? どういうことだ?」
「龍人、お前は死んだことはあるか? この世界で」
「……ない、」
「ふふふ、『奇特』なやつだ、根が『臆病者』なのかな、
だがそれも正しい、失いたくない、お前の気持ちよくわかる。
『最長』だが、『最短』、お前の目指すもの、わたしは嫌いではない」
「やめろ、こっ恥ずかしい」
「ふふふ、褒められ慣れてないな、それもまたお前か。
ともかく、この世界で死んだ先にいる神、蒼き竜、
『淵度』、『END』、お主らの言葉で淵の奥底の温度、終わり」
「『淵度』…か」
「私は数度しか死んでいないが、憧れたよ、行く度に、その美しさに、あの『領域』に」
「『領域』?」
「あそこは、蒼い、蒼い広大な空と、白き雲と、冷たさを僅かに感じる水面の世界」
「そこに佇む、蒼き傷ついた竜、わたしは、一度目の死の時、
初めて他者を美しいと思った、
いや、美しいという言葉さえ、おこがましいとすら思った。
あれはきっと神の『領域』、神に至った者の創り出した世界」
「私はだから目指した、もし、『転生』を成せれば、
あそこに至れるのではないか、あの水面の温度の中で、あの蒼き竜と、
共に永久に語らえるのではないかと、」
「…なぜ、その蒼き竜と語り合いたいんだ」
「…一人は悲しい、張り合うものが居てこそ生とは『潤い』を生む。
まぁあの竜は、そうではないのかもしれないな。
神とはいえ何処か遠く、『最果て』に意識を共有する誰かがいるからこそ、
わたしが憧れるほどの何かを感じさせるのやも知れぬ、」
「…お前の一方的な片思いか」
「ふふふ、そうだな、それも『男』に、私はお主らの言葉で言う『ホモ』、ではないのだがな」
「……」
「笑うところなのだが…」
「…突っ込むのも面倒くさい」
「……」
しばらくの沈黙、龍人は幸せそうな顔で寝る旭に目をやる、
「…旭がどうかしたのか、健やかな、いい娘だ、私が人の男なら放おっては置かないな」
その龍人の目線に気づいたのか、
古竜リオレイルケイルは旭に対する印象を龍人が聞いていもいないのに告白する。
「…まぁな、あいつの『好意』にどう答えていいかわからん、」
地面を見つめ、顔を伏せ龍人はそう応える。
「答えればいいだろう、あの娘もお前を好いとるようじゃないか、
この世界はいつ『浄化』のきっかけがあるかわからん、
今は『本物』でも、『明日』にはもうわからない、
そういう世界だ、わかっておるのだろう?」
「……俺には妻がいてな、息子もいた、
だから、それを無視していいものかわからんところがあるんだよ、
その先にある『復讐』もあるしな…」
「はっはっはっ」
突如として大声で笑い始める古竜リオレイルケイル、龍人は慌ててそれを咎める、
「【馬鹿野郎ッッ、旭が起きるだろうがっ】」
「すまんな、あまりにおかしくてな」
まだ笑いが残っているのか、若干弾んだ声でリオレイルケイルはそう答える。
「…何が…おかしい」
「貴様はこの世界で何年生きた、私は数えてはいないがそれこそ現世の一生の何百倍は生きただろう、」
「生きたっていうのかね、これ」
「そう言うな、聞け、お前ほどの『熱量』を持って生きているものなど早々におらん、
そしてそれを一人で受け止められる女もな、たとえ居たとしても、
それでも、今、そばにいるのが彼女なら、いてくれるのが彼女なら、
その彼女を愛せばいい、そのぐらいの『器量』持ちでなくてどうする。
それに現世の常識などこの世界では邪魔になることが多いのではないかな、
一人の人を想うことも立派だが、
今隣りにいる者を想えないのでは、それは『本物』かね? 『正しい』かね、
人としてではなく、人としてでも、現代を生きた『吾妻龍人』としても、
この世界を生きる、『吾妻龍人』としても、
『矛盾』とは本来、していいものだと私は思うがね、
それすらも『利用』できないで転生は果たせるのかね?」
「『矛盾』に関しては同意だが…そういうもんかね」
「まぁおまえさんの『勘』がそう言わないのなら、まだその時ではないのだろう、
だがその時が来たらちゃんと答えてやることだな、
答える気がないなら私があの豊満な柔らかそうなおっぱいを揉ませてもらおう」
「揉ませるかよ」
少し声を強めて龍人が言う、
「一応嫉妬はするんだな、こわいこわい」
「ちっまさか竜に説教されるとは思わなかったよ」
「わるかったな竜で、それに説教ではない、ただのありのままの意見だよ」
「いや、すまない、参考になった、…あ、ありがとうよ」
素直に言葉を受け止められた龍人は、古竜リオレイルケイルにどもりながらも礼を告げた。
「ふふふ、『礼』など、初めて言われたな、
そう…あの…あの竜と語らったらこんな感じなのかもしれんな…」
「よせよ、俺は神じゃない、ただの『脳筋おじさん』だ」
「…私にとっては『神』でなくても良かった、…そういうことだ、
旭とも、龍人とも十分に今宵語らえた、楽しかったよ、私も『礼』を言うよ、ありがとう」
「……そうか」
龍人は空を見上げる、古竜リオレイルケイルもまた、
空は、黒く、星は輝き、少し夜にしては暖かな風が、龍人達をより心地よい想いにした。
リオ…




