西区の奥
前回のあらすじ
犬系の鼻はすごい(確信)
夜6時半頃
「どうだった?」
「ダメです。見つかる気配がありません。」
捜索を終えて戻ってきた人が情報を交換している。
「あれ?リョウはどこだ?」
「すまん。遅くなった。」
リョウが少し遅れてロボルと一緒にやってくる。
あまり浮かない顔をしているので、そっもダメかと思ったが、どうやら違うらしい。
「…なんか掴んだな。」
「気づくの早すぎ。」
「リョウタロウさん。手がかりを見つけたんですか?」
「見つけたは見つけたんだが、内容がよろしくない。」
リョウの表情から、本当によろしくないことがわかる。
「助け出せそうか?」
「まぁ、な。」
「その反応から察するに、助ける算段はついてるけど、やりたくない感じか。」
「さすが相棒。わかってるじゃん。」
「でも、そんなこと言ってる場合じゃ…」
リョウが、その言葉はごもっともという反応をする。
「まず、この救出作戦に参加が許されるのは、俺、ショウ、ロボル、あともう1人馬車の運転ができるやつだ。」
「流石に4人では危険だ。私たちも…」
そこまで言いかけたエヴを制する。
「場所は西区だぞ?できるなら女性陣はご遠慮願いたい。」
西区は奴隷商人やら賊の溜まり場だ。だから女性陣を参加させたくないのか。キーラ以外の被害者を出さないためにも。
その意図を汲んだのか、女性陣は黙り込む。
「んで、馬車の運転ができるやつは?」
「私なら。」
そう言ってアンスが手をあげる。
「わかった。じゃあアンスに頼む。アンスは俺の指定した場所で、馬車に乗ってロボルと待機してるだけでいい。」
「は、はい。」
「それじゃあ、他の奴は家に入っててくれ。俺はショウと打ち合わせをする。」
みんな納得がいっていない様子だが、渋々中に入る。
そして、家の前には俺を含める、作戦のメンバーのみになった。
「じゃあ、詳細を話すぞ。」
リョウはキーラが西区奥の娼婦街に連れ去られた可能性が大きいこと。そこから助けるまでのシナリオを話した。
「マジで?そんなとこに行くわけ?間違ってないだろうな?奴隷商人相手の方がよっぽどやりやすいですけど個人的に。」
「ホームレスから裏は取った。その疑わしき娼館から出てきたやつに今晩新しい“商品”が入ることも聞いた。これでもし違えば恐らく永遠におさらばだ。」
「その出てきたやつは?」
「無論始末した。足がつくとまずいからな。」
それを聞いてアンスが浮かない表情をする。
「いくらなんでも、殺すことないんじゃ…」
「あそこじゃ人が死ぬのは日が昇るように当たり前のことだ。それにそこから俺たちの家がばれて、みんなアウトってなったら最悪だからな。」
そこで俺はある疑問が浮かぶ。
「でも、なんでキーラなんだ?」
「それも判明してる。なんでもそこは、客からの依頼で対象を“堕として”くれるんだとよ。」
「つまり、意図的にキーラを狙った輩がいると?」
「そう考えるのが妥当だな。ま、全部終わったら殺せばいい。」
「間に合うんでしょうか。」
するとリョウは腕を組み、少し考えながら言う。
「あいつは“今晩”って言ってたからな。それより前にやればなんとかなると思う。もう少し暗くなったら行こう。」
そう言って、家に入り俺たちは準備を始めた。
夜8時半頃
馬車を借り、アンスとロボルをあらかじめ決めた逃げ道の先に待機させたあと、俺とショウは西区に入っていった。
すると、先に進むにつれて、ショウがそわそしだす。
「俺、こういうの苦手なんだよなぁ〜」
「知ってる。俺だって来たくはなかったさ。そうだ。これ付けとけ。」
そう言って買っておいた目元を隠す仮面を渡す。
「身バレを防ぐためか。よく揃えたな。」
「1時間でどんだけ動いたか。まあ、さっきの準備の時にも少しやってたんだけどさ。」
「そういえば少し出てたっけ。」
「さて、見えてきたぞ。」
目線の先には4階建てのマンションのような見た目の館。
その周りにもそれ系統の店が多くあるが、ひときわ目立つ。
周りは露出度の高い女性が闊歩している。
「本当に大丈夫なのか?」
「多分ね。自信はないけど、相手が金に弱いことを願う。」
俺の懐には1000ゴールドある。これでなんとかならなければドンパチするしかない。
「頼むぞ。俺今にも体が勝手に逃げ出しそう。」
ショウはこう言うのに耐性がない。
俺はゲームでたまにはこう言うのを見たことがあるのでショウほどではないが、いざ目の前にすると帰宅欲がすごい。
男の夢?そんなものは豚にでも食わせておけ。
俺たちは仮面をつけ、ローブを着て、フードをかぶってその館に入った。
次回、演技と薬と一目惚れ




