年越し
前回のあらすじ
メイドが増えた。
みんなが里帰りしたり、メイドが増えたりと色々あったが、今年も遂に終わる。
8月46日
一年の最終日だ。
さて、今日は国で大きなイベントがある。
夜通し国全体でお祭りなのだ。
出店が連なり、有名な楽器団が演奏したりと。とにかく騒ぐ。
約1週間、これが続く。
通りは人でごった返す。
もちろん問題も起こる。
この国にはギルド、軍、騎士団のほかに警察のようなものが存在する。
人々のいざこざを解決するためだ。
自警団に近く、まあせわしなく働いている。
まるでハロウィンの渋谷みたいだな。
実際あれはすごかった。
まだ規模は小さいけど。
そんな中、俺は人々の間を通って行く。
何も買わず、何も見ず。
そして人のいない路地裏に入って“成果”を確認する。
(ほどほどだな)
そう、スリだ。
こういう場でのスリはやりやすい。
ギルドがしまっていても出費はある。
まあ、小遣い稼ぎだな。
というか、こういうのが本業なんだけどな〜
ま、出店で何か買い食いする分くらいはたまったか。
そして、スっては使い、スっては使いを繰り返して時間を過ごした。
午後2時ごろ。
家に戻って昼寝しようとして帰ると庭でロボルとオレールとクミナが遊んでいた。
子供は変わらないな。
「何か食べますか?」
「いや、食べたきたから。いいよ」
自分のベッドで寝転がり、一年を振り返る。
転生してからというもの、様々なことがあった。
目標は盗賊だったのだが、場に流され続けて、結局スリと貴族の家への不法侵入しかしていない。
まだまだ目標へは遠い。
たまにこのまま冒険者として生きていくのもいいかもと思ってしまう。
今の暮らしが楽しくないわけじゃないし。
ただ、冒険者として生きていくなら、足りないものがある。
現世にいる3人だ。
そいつらとは、幼稚園からの付き合いで、小中高と同じ学校へ行き、クラスも奇跡的に一緒だった。
家族ぐるみで仲が良かったし、仲良しという表現がお粗末なくらいだった。
血を分けた兄弟とかそういうレベルじゃなかった。
親の都合で転校する俺にわざわざ同じマンションで俺の部屋の隣3つを借りて付いてくるくらいに。
実際、毎日誰かの部屋に集まってゲームして、そこに泊まる日だってあった。
死んだあの日、俺以外の3人は委員会で居残りだった。
俺が死んだことを知ったのもかなり後だっただろう。
今まで、あいつらの夢を見て泣いたことだってある。
どうせこの世界で冒険者として生きるなら、どんなゲームも一緒にやってきたあいつらがいなきゃ俺にとってその冒険者としての人生に意味なんてない。
この世界では年越しの際、神様に1つお願いをするらしい。クリスマスがない代わりみたいなものだ。
七夕に近いかもしれない。
願うなら、あのダメ神以外に祈るね。
もし、できるなら…
もう一度、あいつらに…
「リョウタロウ様、夕食の時間です。」
寝てたか。もう夜の7時だ。
結構寝てたな。
「わかった、今いく。」
一階に降りると、ご馳走が並んでいた。
「ずいぶん豪華だな。」
「一年の終わりですから。」
「ご馳走さま。」
「お粗末様です。」
「アンスたちは起きてるのか?」
「はい、神さまに願い事するので。リョウタロウさんはしないんですか?」
「ああ、叶うような願いじゃないからな。それに結構疲れちまってな。俺は寝るよ。」
「はい、おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。」
はあ、目、覚めちまった。
午前3時、みんなはもう寝たみたいだな。
もう一回寝るのもきついしな。
貴族の家漁りにいくか。
そう考えて外に出る。
「寒っ」
この間雪が降ったせいもあって、かなり寒い。
「まだまだ騒いでるとは、元気だねぇ。」
眼下にはまだ騒いでいる人々。
さて、衛兵も浮かれてる隙にっと。
貴族の家から金目のものをいくつか盗み、路地裏に捨てる。
もう少し俺にも実用性のあるものをおいてくれてもいいじゃないか。
そんなこんなで夜明けがきた。
「ふう、異世界の初日の出ってのも乙なものだな。」
そう言って盗んだ酒片手に新しい一年どうしようか考えながら、1人で少し泣いた。
「なんで…俺だけなんだろうな…」
次回、新年だよ!全員集合!




