狼
筆者は北海道に住んでるんで停電の影響もろに食らっちまったぜ。
前回のあらすじ
エルフが仲間になった
チクショ〜目の前で種族差別が見たくないあまり、踏み込んでしまった〜。一生の不覚だわー。
いやね。悪党を目指すなら慣れなきゃダメなんだろうけどさ。異世界ったらさ、前の世界と違うものを求めてしまうじゃない?魔法とかモンスターとか。そんな楽しそうなところに前の世界の嫌なものが混ざってみ?なんか所詮人間はどこまでいっても人間なんだなあーって思わされる訳よ。それが嫌で色々話し込んでたらこのザマよ。
あんな期待に満ちていて、美形で爛々と輝く目で見つめられたら断るに断れないじゃないかよ!
クソ〜。日本人の悪い癖。頼まれるとあまり断れない。直さねば。速やかに修正せねば…
んで現在。子鹿亭で昼食なう。
この後はちょっと森にでも出てみようと思ってる。一人で。実は度重なる戦いで、レベルが8から14まで上がっていたのだ。それでちょっと体を動かそうと思ってね。
「リョウタロウさん。午後からはどうするのですか?」
まるで師匠に習うかのような目で質問するな。
森に行くと知られれば確実について来るだろうし。隠さねば。
「テキトーに街を歩く。ディアナはエヴリーヌと宿にいろ。荷造りとかで疲れてるだろうし、女同士ならそれなりに話もできるはずだ。色々教えてもらえ。」
この面倒なことを全て丸投げする人の図よ。
さて。現在は森の中。さまざまな薬草や植物がある。
何故森の中にいるのかというと、鑑定のレベル上げである。
ヨームみたいなのがこれからわんさか出てこられると困るんでね、あれを鑑定出来ればそれなりに戦えるかもしれんし、まぁそんなポンポン鑑定のレベル上がっても俺が困るけど。
でも妙だな〜。モンスターどころか動物1匹もいないなんて、普通森の中ってもっと動物達でワイワイガヤガヤしてるようなイメージがあるんだけど。
王都からはそれなり離れてるが帰れない遠さではない。こんだけ動物がいなかったら猟師の人は大変…
そんな呑気なことを考えながら歩いているとき、尋常じゃない寒気を感じた。一歩。その踏み出した一歩で入っちゃいけない領域に入った感じ。まるで地雷を踏んでしまった兵士のような気持ち。
でもその悪寒は地雷とは比較にならない。地雷なら運良く生き残るかもしれないが、これは戦車の砲門を向けられてる感じ。今それくらい死を身近に感じてる。ヨームよりもすごい何かがこの近くにいる。ここからその気になれば王都の城壁が見えなくもない距離。もしこの気配の根源が王都に向かった場合、落ちる。
あのでかい街は必ず陥落する。
森の奥に視線をやると、白っぽいでかい物体が見える。おそらくあれだ。すげー逃げたい。でも、そこ正体を確かめないことには、ギルドに報告できない。ホラ吹きと思われて、そのまま王都がおじゃんになるのは避けたい。知り合いもいるし。
木の陰からその物体を捉える。
どでかい…狼?みたいなのが寝てる。でかさは大型のトラックくらい。鑑定で結果出るかな?
エンシェントウルフ レベル249
結果知りたくなかったよ〜なんだよ249って化け物の域超えてるぜ?でもなんでこんな奴がこんなレベル11のゴブリンが出るようなところに?てか弱ってね?衰弱しきってね?肩で息してるようにも見えなくもない。死期迫ってる感じもする。…って目合ったー!
思いっきり目合っちゃった!あっこれオワター。死んだわこれ。短かったな〜俺の異世界ライフ。
って動かないな〜。普通餌前にしたら襲うと思うけど、来ないね〜。それだけ衰弱してるのか?じゃあ誰にやられた?そんなやつも近くにはいて欲しくないよ?
恐る恐る近づいてみる。相変わらず俺のことは無視。見たところ外傷はない。では何故こんな衰弱してるん?考えられるのは空腹。でも俺を見た瞬間に襲って来なかったあたりこれは違う。となると…老化?
もしかしてもうおじいちゃんなのか?病室で横たわってる系おじいちゃんなのか?そう思ってると、
返事をするように、鼻息をフンッと出すでか狼。
えっ、心読まれてるの?やっぱレベル249まで行くとそんなこともできるの?
んで今のが返事と仮定するとやっぱ老死しそうなのか。
せっかくの長い狼生の幕引きを邪魔しちゃ悪いし、俺はこれで失礼しますよ〜。
と立ち去ろうとした俺を止めるように静かに吠える。
何さ。やっぱ最期の晩餐にするとかやめてね?とか考えてると、奴は尻尾を上げた。すると中から灰色の小さい物体が出て来た。
子供?とりま鑑定。
ウルフ レベル1
あっ子供はただの狼なのね。ってお前どんだけ長生きしたらそうなるのよ。
すると奴は子狼と何か話したかと思うと、子狼が俺のところにやってきた。奴はというと俺を見つめてる。
はっ?なにそのあとは任せた感満載の目は。俺が普通の冒険者だったらお前ら2匹とも殺してるよ?俺が殺さないのは、あくまでも前世で動物には優しくしましょうって教育を受けたからであって。まさかこいつそこら辺見透かして子供を俺に?そう思うといいように利用されてるような気がして腹が立ってくる。
「お前。自分の子供くらい、自分で面倒見…!」
そう言いかけて、奴に触れた手の感触に驚く。
細い。
毛のせいで大きく見えるが中身は肉があまりなく、げっそりしてる。おそらくここから一歩も動けない。
改めて奴の顔を見ると、子狼を見ながら涙を流してる。子狼は自分の親との別れを悟ったのか、奴を見つめて、呻いてる。
きっと本当は自分で育てたいに違いない。でもそれができないから、比較的レベルの低いモンスターがいるここまできたってことか。ここなら運が良ければ子狼一人でも生きていけるって考えたわけだ。そこに即殺しない俺という人間が来たと。
たしかに同じ状況に置かれたら、ほとんどの親はそうするかもな。
信頼は出来ない。でも、一人より誰かに育てて貰う方が生き残れる。
親は誰だって自分の子供の成長を願ってる。子供の成長を自分の目で見たいと思ってる。
でもそれが出来ない。
こいつの悲しみは計り知れない。
でも、この広い世界に一人出すより、俺に頼むことを選んだ。その方が生き残れると考えたからだ。衰弱したこいつを見つけた段階で、殺さなかった俺に。
そんなの見せつけられて、ほっとけるほど俺は鬼じゃない。あークソ。鑑定のレベル上げなんてするんじゃなかった。
「本当にいいんだな?」
そう聞くと返事をするように静かに鳴く。まるで、
こいつを頼む
とでも言ってるかのように。
「わーったよ。でもあの世に行ってから、後悔すんなよ?」
そういうと、奴は口角を上げてニヤッと笑った。
こいつ人間の言葉わかるんだな。
そして奴はそっと息を引き取った。
驚くことに奴のからだは崩壊して、灰になった。
証拠隠滅ってか。ほかの人間に見つかったらこいつが子供ってバレるかもしれないからか。
最後まで子供のことしか考えてなかったんだな。
しかし、全部が灰になったわけじゃなかった。
牙が二本だけ残ってた。一本は小さなもので、もう一本は15センチほどの大きなもの。まるで子狼と俺への贈り物みたいだな。鑑定するとどちらもエンシェントウルフの牙と出た。回収してバッグに入れておく。
俺は子狼に向き直り、抱き上げる。
「本当に俺でいいか?」
「ワン!」
「いい返事だ。さて帰るぞ。」
「ワン!」
子狼が仲間になった。
子鹿亭ってペット大丈夫かな?
ようやくネットが使えるようになったぜ。
おのれド◯モ、ダウンするとは許せん。




