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No.9

 ーー翌朝ーー


 結局徹夜での家創り作業となってしまったものの、眠い目を擦りながらも何とか終わらせる事が出来た。

 完全におれ好みのオシャレなレンガ造りの町が、一晩の内に完成してしまうのだ!改めて自分のスキルの凄さを実感してしまう。

 この町は前世の記憶を元に創り上げた町並みで、どこぞやの外国にある古い町並みを意識している。

 この世界でこんなに美しい町並みは、他に無いだろうと自画自賛してしまう。

 

 キルル、ゴンザレス、ベティーの3人も朝起きて、目の前に広がる町並みを見るなり……驚きと共に自然と(綺麗な町)などと口から漏れ出ていた!

 それから朝食を済ませ、早速獣人達を迎えに出向く。ゲートをくぐるなり……


 「おはようごぜいますお頭!!」


 ライオネルが挨拶して出迎えてくれたのだが、なんだか眠そうなライオネル。どうしたのか訪ねると、おれ達の仲間になれる事やみんなが安心して暮らせる場所になるのが嬉しすぎて眠れなかったらしい。

 本当にこの人も見た目と違い、可愛い内面を持っている。

 既に獣人達の準備も整っており1ヶ所に集まっていたので、ゲートを創り移動を開始してもらう。

 家の割当て等はサイサイやハクロウに任せる事にして、おれは一足先にライオネルを連れ自宅へと戻る。

 ゴンザレスはギルドへと出社していた為、キルルとベティーを含めた4人で今後の事を話し合う。

 これだけの人が増えてしまうと食料の問題などもあるし、もう安全に暮らせるのだから無理をして空賊をやらなくてもいいとも思ったのだ。

 おれの考えでは、みんなに仕事を振り当てたい!子供やお年寄りは仕方がないけど、基本的には働かざる者食うべからずなのだ。

 仕事はいくらでもある筈!この町にはまだ何もないのだからーー農業などで食べ物を作る人、それを売るお店をやる人、それらの食材を使って飲食店なども出来たら嬉しいし!

 洋服店、武器店、大工さん、お花屋さん、等々それこそ今なら、各々がやりたい事を始められる!

 ただまず優先すべきは食料問題なので、そこを中心に始めてもらいたい。


 「任せて下さいよ!みんな喜んで仕事をしますぜ!」


 ライオネルの返事を聞き、それから農業地の場所等を話し合う。あとはライオネル達で話し合い、みんなが仕事を持てるようにすると言う。

 何か必要な物などがあれば相談してほしいとだけ伝え、ライオネルは獣人達と話し合うべく家を後にした。

 それから必要最低限の農具などを用意して、あとは全て獣人達に任せる事に!何でもおれがこのスキルを使ってやってしまうのは、獣人達にとっても良くない。

 1人1人がやりがいのある仕事を持てば、充実した毎日が送れるだろうとおれは思うから。

 決して自分の仕事が増えると面倒だから、なんて事はないとだけ先に言っておこう!誰に?自分自身にそう言い聞かせる……


 ライオネルを中心に家の振り分け、獣人達の仕事、等々順調に決まりつつあるようだ。

 さてさておれ達は今後、ゴンザレスからの依頼があるまでは何をするか?今回の件もあり、おれはやりたい事が出来てしまった!!

 それは他にも奴隷となっている人達を助けたいと言う事!勿論奴隷と言っても、主人といい関係を築けている奴隷もいるだろう。

 そう言った人はいいのだが、無理やり働かされたり、暴力を受けていたり、性奴隷なんかもいるって話だった。

 おれはそう言った人達を救ってあげたい。例えそれが自分のエゴだとしても、嫌々毎日を過ごすよりはマシだと思う。

 そんな訳でキルルとベティーに相談してみると……


 「キルルもウィルの意見には賛成!助けてあげられる人は助けたい。」


 「船長はお前だ。好きにしな!アタイも手伝ってやるからよ!」


 2人からのオッケーももらったので、あとはゴンザレスが帰ってきたら情報をもらってそれからまた話し合う事に。

 

 「おはよぉ!みんな早起きだね。」


 眠そうな顔で部屋から出てきた・・・誰?!


 「ドラちゃんおはよ。よく眠れた?」


 キルルは何食わぬ顔でドラちゃんなんて言っているのだが、ちょっと待ってほしい!!昨日は2歳位の女の子だったよね??今日は5歳位にまで成長してるように見えるんですけど?

 ベティーも何も言わずに朝食の支度を始めてるし、突っ込みを入れたいのはおれだけなんでしょうか!?

 龍神と言う種族はそう言うもんだと、納得するしかないのだろうか? 

 明日にはまた成長しているのか?だとすると数日中にはキルルやおれより歳上の見た目になってしまうけど……これは気にしたら負けな気がしてきたので、おれはあっさり考える事をやめてしまう。


 それからキルルとベティーがドラちゃんに読み書き等を教えたりして、今日はのんびり過ごしているとーーライオネル、サイサイ、ハクロウの3人が家へとやって来た。

 どうやら全ての振り分けが終わり、報告に来たようだ。

 最初は食料確保の為に、みんなで農業を営むようだ。安定したら各々がやりたい仕事を始めるらしい。

 報告が終わるなり3人は改まっておれの前に膝まずき、この島に受け入れてくれたお礼と共にあるお願いをされる。


 「お頭!俺達3人はお頭の為に空賊として共に戦いたいんですァ!!」


 どうやら他の獣人達とも話し合い、3人だけでもおれの為に空賊として命を張り恩返しをしたいと。そんな命張られても……なんて思ったのだが、相当な覚悟を持って述べているようだ。

 3人を一旦落ち着かせ、まずはおれが好きで空賊なんてやっている訳ではない事を説明する。

 勿論オルガや龍の髭空賊団だけは、おれの手でケリをつける事も含め!説明を終えると何故か泣いている3人の獣人達……


 「お頭とお嬢にそんな過去が……龍の髭は必ず俺達の手で潰してやりやしょう!」


 何故か既にメンバー入りしている事になってるけど?!しかもお嬢とは??いつの間にか獣人達の間では、おれ達の呼び名が既に決まっているらしい。

 おれはお頭、キルルはお嬢、ベティーは姉さん、ゴンザレスはゴンザレス。なんでゴンザレスだけまんまなのかはさておき、微妙な呼び名だと思うんだけど・・・


 「キルルはお嬢か・・・ベティーさんは姉さんだって!」


 「悪かないね!」


 いやいやいや!気に入るような呼び名じゃありませんけど?まぁコイツ等は悪い奴等じゃないし仲間にしてもいいのかな。

 おれは3人の獣人達を見ながら思ってしまったのだ……ただ何となく思った事を口にしてしまう。


 「三獣士って感じだな!」


 ボソッと呟いたおれを、みんなが一斉にガン見する・・・


 「ありがとうごぜいやす!俺達は白銀の空賊団三獣士として活躍しやすぜ!!」


 ・・・え?別に命名した訳じゃないよ?!でもみんなニコニコと嬉しそうにしているしいいのかな?


 ただの思い付きの命名が後に・・・その名を世界中に知らしめるのだった!!!


 農業等は獣人の方々に全ておまかせなので、おれ達は空賊メンバーのみでのんびりゴンザレスの帰りを待つ。

 新たにメンバー入りした三獣士にも、今後奴隷となっている人を1人でも多く救いたい事を話すと……すんなりと承諾してくれた!

 そう言うおれの優しいところに俺達は惚れ込んだんだと!流石お頭なんて持ち上げられてしまう。

 これでメンバー全員の承諾得た今、ゴンザレスの帰りが待ち遠しく思う!今までゴンザレスの帰りが待ち遠しいなんて思った事ないんだけどね。

 日もくれいつもなら既に帰宅している筈のゴンザレスが、今日に限ってなかなか帰ってこない!


 今日は急遽獣人達の歓迎会も兼ね、町をあげての飲み会をしようと言う事になり……外では着々と準備も進んでいた。

 一般の獣人達は外に出れる事自体なかなか無かったようで、ただ準備をしているだけなのに生き生きとしていた。子供達は嬉しそうに外を走り回っていた。

 そんな光景をこの目で見ていると、おれもこの島に獣人達を受け入れて良かったと思う。

 歓迎会の準備が終わっても帰ってこないゴンザレス……何かあったのかと少し心配になりだした時、ゴンザレスが疲れた顔で帰ってきた!


 「今日は遅かったじゃん!?獣人達の歓迎会をやろうって事で準備も出来てるよ!」


 ゴンザレスは疲れきっていながらも、獣人達顔を見るなり安心した表情となったのだ。

 どうしたのか聞いてみるとーー今日獣人達がいた要塞を、賞金稼ぎ達が手を組み一斉に攻め込んだとの情報がギルドに入ったそうだ!

 ギルド側も突然の情報で慌てたらしく、今日1日その情報収集や対応に追われていたそうだ。

 ゴンザレスは今日獣人達がクラウドに引っ越す事を知っていた為、余計に心配していたようだ。

 無事に引っ越しが終わっていたのを、自身で確認出来てホッとしたようだ。

 どうやら賞金稼ぎ達とは入れ違いで引っ越しが終わったようで、もし今日引っ越しをしていなかったらと思うと……ゾッとするね。

 タイミングよく引っ越し出来て本当に良かったと思う!

 

 「ただ要塞がもぬけの殻になっていた事も問題になっててな」


 どうやら要塞近くで監視をしていた奴がいたらしく、昨日は獣人達がいた事を確認されていた。ついでに要塞に出入りしていたおれ達の空賊船、リベルタもバッチリ目撃されていたのだ!

 エルムにて黒熊空賊団を壊滅させた空賊船と同じ船だった事もバレ、おれやキルルが2人で獣王空賊団を壊滅させたのでは?なんて話も上がっているらしい。

 まだ白銀の空賊団って名前まではギルドでも分かってないんだって!それを聞いてしまった我が空賊団メンバーは、全員が目に炎を灯し……無言で何かに闘志を燃やしている。

 どーせ白銀の空賊団の名を広めるとかそんなところなんだろうけど、おれは空賊として有名にはなりなくないのでやめてほしいんですけど……

 誰も聞いちゃいないよね。


 とりあえずゴンザレスも帰ってきた事だし、今日はみんなでパァーっとやろう!!!

 ライオネルが空賊団メンバーを1人1人紹介して獣人達に顔を覚えてもらい、それから乾杯と共に和気藹々と歓迎会が始まった。

 クラウドは誰かが攻めてくるなんて事はあり得ないので、みんな安心して暮らせる事に喜び合いながら飲み食いをしていた。

 おれはそんな光景をみつつ、ゴンザレスに次の行動について相談をしていた。少しでも多くの、辛い目にあっている奴隷達を助けてあげたいと。

 ゴンザレスも奴隷制度については反対派らしく、奴隷達を助ける事に関しては賛成してくれたものの……奴隷を助けると言う事は、数多くの貴族や国を敵に回す事になると。

 それでもやるのか?と聞かれるのだが、おれはなんの迷いもなくやると答えた!

 正直どんな奴が敵に回ろうが知ったこっちゃない!どーせもう既に空賊と言う名のお尋ね者だしね!

 空賊が人助けしちゃいけないなんて事もない筈だし。

 おれの答えを聞いていた空賊団メンバーは、ニヤリと笑みを見せていた。


 「ウィルは本当空賊には向かないね。」


 キルルの一言により、みんな笑いながら頷いていた。そもそも空賊になりたい訳じゃないからそれでいいんですよ!?

 共に笑い合える仲間が増えて嬉しく思いつつも、守るべき仲間が増えたので余計にしっかりしなくてはいけないと思うのだった。


 ーー獣人達が引っ越して来てかれこれ2週間の時が経ちーー


 ゴンザレスが調べてくれた情報を元に、メビウスと言う国の奴隷達を助ける事に決まった。

 メビウスと言う国の奴隷達は、他の国よりも扱いが酷く虐待等も日常的に行われているようだ。

 この国の奴隷は色々な種族が入り交じっており、人間、獣人、エルフ、巨人等様々な種族が酷い扱いを受けているとの事。

 この2週間の内にメビウス国に潜入して、奴隷となっている人達の状況等を把握したりしていた。そして様々な場所にいる奴隷達を、どうやって助け出すかを話し合ってきた。


 基本的に奴隷を連れているのは王族か貴族のようで、3日後にお城にて王が貴族達を集めてパーティーを行うらしい。

 パーティーが行われている間、奴隷達は家に閉じ込められているだろう。その時を狙って、少しでも多くの奴隷達を助ける手筈だ!

 貴族達に気付かれぬようおれとキルルが変装をしてパーティーに潜り込み、少しでも時間稼ぎをする。あわよくば王族の奴隷達も救い出そうと思っている。


 ベティーと三獣士達で貴族の家から奴隷達を連れ出し、予め用意しておいたゲートを使ってクラウドへと来てもらう予定だ。

 全ての奴隷を助ける事は出来ないかもしれないけど、1人でも多くの奴隷を救い出そうとみんなが意気込む。

 街の地図も用意し入念に話し合いながら、各々の行動を確認する。ゲートも数ヶ所に用意しており、各々のが頭に叩き込んだ。

 そしておれはスキルを使い、いつでも連絡が取り合えるよう小型マイクとイヤホンも用意した。何かあればこれを使って直ぐに助けを呼ぶようみんなには言ってある。

 助け出す前に仲間に何かあっては話にならないので、無理はするなと念を押しておいた。

 

 「ドラも参加したかったなぁ・・・」


 つまらなそうに呟くドラ。この2週間で見た目はキルルと同じ歳位に成長し、読み書きや生活に必要な事は大概覚えてしまった!

 キルルと並ぶとまるで姉妹に見え、将来は2人共美人になるだろう。

 ドラにはまだ戦闘は教えていない為、今回の救出作戦には参加させなかった。ドラ自身もつまらなそうにはしているものの、今の自分では足手まといになる事がわかっているようでそれ以上の文句等は言わない。

 ただ次は白銀の空賊団メンバーとして必ず参加すると1人で意気込んでおり、早く修行をしてほしいとせがまれていた。

 物覚えが良過ぎるので、一瞬で強くなるだろうとみんなが口を揃えて話す。

 頼もしい仲間が増える事を楽しみにしつつも、今回の作戦に抜かりが無いかを再度入念に確認するのだった。

 


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