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真夜に星座を飾るとき  作者: KAKO4231
プロローグ
1/8

プロローグ零話 ほんのちょっとだけ前の話


今から話すのは、ほんのちょっとだけ前の話。まだ私が何も知らず、何者でもあらず、平凡に暮らしていた、その頃の話だ。


「はっ! 何だ、今の……?」


訳あって後から聞いた話だから、そこに私はいないけれど、その時にはもう、始まっていたらしい。


「きゅ、急に何ですか! おどかさないで下さいよ、先生」

「わ、悪い。だが今、そこで何かが……」

「何かってなんですか? どうせシカとかキツネとかじゃないんですか?」


その時間帯の私といえば、たしか自室のベッドに寝転がりながら、呑気にスマホを眺めていたはずだ。


「あ、ああ、そうだよな。でもなんか、黒かった気も……」

「白いチョークを投げつけられたって、振り返った瞬間なら、色なんてわかりませんよ」

「……まぁ。そうだよな」


その翌日に起こることなんて、一切知ることもないままに。


「以上がお二人の、最後の記録となります」


ホログラムの停止ボタンを押して、その人は振り返った。


「最後?」

「はい。その後、一切の音も拾えませんでした。悲鳴や残響はおろか、獣の鳴き声や服の掠れる音、そして足音さえも」


ビデオ通話の相手は冷静に一呼吸おいてから、端的に口を動かした。


「……場所は?」

「隣町です、デバイスに位置情報をマークしたマップデータをお送りしますね」

「わかった、行ってみる」

「———副統轄長様」


通話画面を消そうと伸びていた手が、止められた。


「その前にお一つよろしいでしょうか?」

「うん」

「つい1時間ほど前にお送りさせていただいた報告書の方には、お目を通されておりますか?」

「うん、読んだ」

「やはり、先週同様、すべての項目において増加傾向を維持しておりました」

「みたいだね」

「濃度は依然20%台を維持しておりますが、面積としましては約1%ほど増加。一、二ヶ月……とは言いませんが、さほど遠くない未来、副統轄長様がいらっしゃる辺りでも、異変が起こり始めるかもしれません」


声や表情の端々から、心配が窺える様子だった。


「……本部からの指示は?」

「現状維持です。変わらず、有事の際は副統轄長様のご判断に委ねられるそうです」

「わかった」

「それと、これから現場へ行かれるのであれば、くれぐれも防寒対策を失念なされませんよう、お願いします」

「向こう、寒いの?」

「降雪が確認されております」


タブレット端末に視線を落としながら、「観測史上最速だそうです」と付け加えてから、因んだ。


「まだ、八月ですから」


私がこれを知るのはまだ少し先の話なんだけど、全てを知った今だって、後悔なんてない。それでも今に至るまで、色々あって結構大変な思いもしたんだ。時間にすれば、たかだか十日。されどその十日が、当時の私の、何もかもを変えてしまった。

ほんとにもう、変わってしまったんだ。


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