027 旅立ち
「なんだか私……あの王様と宰相の人、信用できません。」
レイたちが王城を去って歩いていると、リリーが突然口を開いた。
全員がリリーに視線を向ける。
「だってそうじゃないですかっ!王国に尽くしていたハラルト様にあんな言い方……自分たちが思ってないと、あんな言葉出てきませんよ!」
「ハラルトが目障りだった」という王の発言を言っているのだろう。
リリーは、自国の領土を失ったというのに飄々としている王や宰相を見て、今回の一連の騒動を裏で操っていたのは彼らではないのかと疑っているのだ。
「リリー、積もる話もあるだろうけど、まずは宿に向かおう。これからのことも話さなきゃいけないからね。」
レイは振り返ってそれだけ言うと、スタスタと無言で歩き始めた。
普段は明るいレイの無言の迫力に気圧され、リリーもアルもふたごも、一言も発せずただついていくことしかできなかった。
レイは宿につくなり、みんなを集め話し合いの場を設けた。
「…………さて、何から話すべきかな。」
「「「「…………」」」」
レイがこぼした言葉は、全員の心の声を代弁していた。
全員、話したいことはたくさんあった。
みんなを代表して、レイが話を整理していく。
「じゃあ、まずはさっきのリリーの想いについて、みんなの意見を聞こうか。ベルとリルはどうかな?」
「あやしい」
「悪い人のにおいがする」
ベルとリルは少し顔をしかめながら、そう評した。
「アルはどう思う?」
「……確証はありませんが、私も王と宰相が絡んでいると考えています。」
アルもふたごと同じく良い印象を抱いていないようだ。
「そっか。僕を含め、全員の意見が一致しているようだね。王と宰相が他国に手を回して、ハラルト様を殺した。アルの言う通り確証はないけど……これは十中八九間違いないだろう。そして、あんな態度を取るからには、証拠は既に抹消されているんだろうね。」
レイもみんなと同じことを考えており、、王や宰相の態度からしてほぼ間違いないという考えに至っていた。
「そんなことをして、王国に何のメリットがあるのでしょうか。」
「……考えられるとするなら、示威行為ってところかな。今回、王が他国を使って辺境伯を害した。確かに証拠はないけど、僕たちがそう思うくらいだから貴族であれば尚更王の仕業だと思うだろう。つまり、王に従わなければ次は自分が辺境伯の二の舞になるかもしれない、という意識を他の貴族たちに植え付けられる。」
「そんなことのために、ハラルト様ほどの御方を手に掛けるなど……狂っています。」
アルは王と宰相の狂気に、顔を青ざめさせていた。
「今のはどちらかというと副次的なメリットで、本当のところは力を持ちすぎたハラルト様への嫉妬と恐怖だと、僕は思っているけどね……」
「そんな器の小さい人が国のトップに立っているなんて……」
リリーは鎮痛な表情を浮かべ、顔を俯かせる。
「さて、王と宰相の疑惑についてはここまでにしようか。次は僕たちの今後について話をしよう。」
レイが次に話題としたのは、全員がなんとなく避けていたものであった。
「改めて言うまでもないとは思うけど……みんなをスカウトしたのは、辺境伯軍の客将である僕の部隊の隊員になってもらうためだ。」
「「「「…………」」」」
全員顔をうつむけて、黙ってレイの言葉に耳を傾ける。
「さっき宰相が言っていたけど、ハラルト様が亡くなったことで客将の契約は解消された。これは、僕と君たちが一緒に行動する理由がなくなったことを意味している。だからここから先、君たちには自由にしてもらって構わない。」
「っ!……」
レイの突き放したような言い方に、リリーは驚き、悲しい表情を浮かべる。
「……僕のこれからの行動目標について、少し話をさせてもらっても良いかな?」
レイは全員の顔を見渡していく。
全員が聞く姿勢になっていることを確認して、その先を続けた。
「僕は、これからハラルト様の死に関わった奴ら全員に、地獄をみせようと思ってる。」
普段は温厚なレイから、殺気のようなものが漂う。
全員が緊張感に包まれる中、アルが口を開いた。
「復讐……ですか。」
レイがやろうとしていることを、アルは一言で要約する。
「……そうだね。復讐だ。ハラルト様は僕の命の恩人だった。これから少しずつ受けた恩を返していくつもりだった。」
レイの言葉に後悔の念が滲む。
命を助けてもらった挙句、正体も定かではない自分を迎え入れてくれたことに、レイは深く感謝していた。
「僕は、受けた恩は必ず返さないと気が済まないんだ。……でも、薄汚いドブネズミ共のせいでその機会が永遠に失われてしまった。」
ふつふつと沸き上がる怒りの感情に、思わず拳を握りしめるレイ。
「だからせめて、そいつらに地獄をみせてやることで、ハラルト様への鎮魂の祈りに代えようと思うんだ。」
その目には復讐の未来を描いているのか、口元からはわずかに笑みがこぼれていた。
「だが僕にはその力が足りない。……人手はあればあるほどいい。それが優秀な人材なら尚更ね……」
「「「「…………」」」」
「……これは僕の私怨だ。何のメリットもないし、むしろ死期を早めるだけだろう。」
レイはいったん言葉を区切り、みんなの顔を見渡す。
「ただ、それでも、恥を忍んで言わせて欲しい……」
レイは一度言葉を区切り、頭を下げた。
「僕に、みんなの力を貸してくれないか。」
――数瞬の間が空く。
やはりと言うべきか、最初に応えたのはアルだった。
「どこまでもお供いたしますよ。」
「アル……」
笑顔で応えてくれたアルに、レイはつられて笑みをこぼした。
「私も、ハラルト様の仇を討ちたいです!」
「リリー」
リリーの目は確固たる決意を宿していた。
「みんなと一緒にいたい」
「みんなと一緒に戦う」
「ベル、リルも……」
ふたごは復讐というよりも、もっとレイたちと一緒の時を過ごしたいという願望が強かった。
レイは再度全員の顔を見渡し、笑顔で感謝の言葉を述べた。
「みんな……ありがとう。これからも、よろしくお願いします!」
「「はい!」」
「「おー!」」
アルとリリー、ふたごが各々返事を返す。
しかし、レイは一度笑顔をおさめ、申し訳なさそうな顔で告げる。
「……ただ、さっきも言ったけど僕たちには力が足りていない。それは武力という意味でも、影響力という意味でもね。だから、まずは力をつけるべきなんだけど、どうするべきか考えきれてなくてさ……」
「……その2つを得られる場所に心当たりがございます。」
「えっ……」
レイはまさに今からその話し合いを行おうとしていたため、アルがいきなり答えを持っているというので少し意表を突かれた。
「その場所とは、冒険者たちが集う都市。その名もダンジョン都市、ガルディアです。」
「あ、私そこ行ったことあります!」
ダンジョン都市という言葉にリリーが反応する。
「どんなところなの?」
レイは行ったことがあると言うリリーに質問した。
「名前の通りダンジョンがある都市なんですけど、その数がすごいんです!たしか100以上あったと思います!」
リリーは興奮気味にダンジョン都市の説明をしてくれる。
「そんなに?」
「はい!ダンジョンにはEからSSまでの等級が割り振られていて、冒険者たちは自分の冒険者ランクの一つ上の等級のダンジョンまでなら挑戦できるようになっているんです!」
「なるほどね。たしかに、それならレベル上げには良いかもしれないけど、影響力という意味ではどうなのかな?」
このレイの質問に答えたのはアルだった。
「他国も、ダンジョン都市の踏破状況は常に監視している状態です。それだけ、未踏破のダンジョンから得られる素材は莫大な利益を生み出すのです。持ち帰った素材は当然冒険者のものですので、経済的な影響力を得るには良い手段ではないかと。」
「経済的な優位性は確かに必要だね。ちなみに未踏破のダンジョンはあといくつくらいあるのかな?」
「たしか、Aランクが1つ、Sランクが3つ、SSランクが1つの計5つが未踏破だったかと。」
「5つか……まだ可能性はありそうだね。」
指を顎に当て、少し考え込む素振りを見せたレイ。
「よしっ!それじゃあ、これからの方針を発表します!」
考えがまとまったのか、大きな声で全員の注目を集め、右手を天に突き出しながら叫んだ。
「ダンジョン都市に行ってパワーアップするぞー!」
「「「「おーー!!」」」」
こうして、一行の次の舞台はダンジョン都市へ移ることとなった。
第一章完結です!
少し急展開過ぎたでしょうか……
もっとハラルトの登場シーン書くつもりだったのですが、次の章書きたくて巻いてしまいましたm(_ _)m
次章はダンジョンでの話がメインになります!
個人的にダンジョン系のストーリーが大好きなので、次章は分厚めに書きたいと思っています。
これからも隔日更新していくつもりですが、毎回ストック0の状態なので、いつか破綻するかもしれませんm(_ _)m
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