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014 ふたごの入隊

 一行は武器屋に来ていた。


「すみませーん。」


 レイは武器屋に入るなり受付の男性に声をかけた。


「らっしゃい!」


 男性は立ち上がって元気な挨拶をしてくる。

 筋肉隆々な大男だった。


「この子たちに合った剣が欲しいんですけど……」


 レイは余計なやりとりなしに用件を告げた。


「ずいぶんちっちぇえなあ!剣を使った経験はあるか?」


 男は親しみのある接客態度でふたごに質問してくる。



ふるふる



 ふたごは揃って首を振った。


「経験がないなら素人向けのナイフくらいから始めた方が良いかもな。」


「その点に関しては大丈夫です。」


 レイが男性の言葉に横槍をいれる。


「……大丈夫って、何が大丈夫なんだ?」


「素人向けじゃなくても大丈夫、という意味です。この子たち剣の才能があるので。」


「はあ?なんでそんなことがわかるんだよ。」


「勘ですよ。8歳児の勘です。」


「全然当てにならねえじゃねえか……」


 男性は呆れたような目でレイを見た。


「まあまあ、騙されたと思って……」


「客がそこまで言うならこっちが折れるがよー、じゃあこの子らに合った剣ってのはどう紹介すりゃ良いんだ?」


「この子たちの背丈で振れる剣ってありますか?」


「おお!それならあるぜ、待ってな。」


 しばらくすると男性がいろいろな武器の入った箱をレイたちの前に持ってきた。


「このサイズの武器ならこの子らでも扱えると思うぜ。」


 そこにはふたごに配慮したのか様々な剣が2セットずつ並べられていた。


「手に取って振ってみな。」


 男性の勧める声に、ふたごは同じ武器を手に取った。


「それはナイフだな。さっきも言ったが素人でも扱いやすい武器だ。」



ブンッブンッ



「「…………」」


「なんか違うみてえだな。次っ!」


 男性はこの短時間でふたごの微細な感情の変化に気付けるようになったらしい。

 次にふたごが手にした武器は細長い剣だった。


「それはレイピアだ。相手を突くことに特化していて軽いのが特徴的だな。」



シュッシュッ



「「…………」」


「これも違うか……次っ!」


 次にふたごが手にしたのは2つで1セットの剣だった。


「それは双剣だ。両手でそれぞれの剣を持つんだが、如何せんリーチが短い。体術の延長線上に切るっていう概念を乗せたようなイメージだな。これは完全に玄人向けだ。」



シャシャシャシャシャシャ



「「…………!!」」


「……すげえ楽しそうだな。まさかこれが良いのか?」



こくこくっ



 ふたごは男性に向かって勢いよく頭をふった。


「うーん。これは扱いが難しいんだがなあ。……ま、これも経験ってやつだ。」


「決まったみたいだね。これおいくらですか?」


「2セットで金貨2枚なんだが、おたくら気に入ったから金貨1枚にまけとくよ。その代わり今後もうちを贔屓に頼むぜ!」


「ははっ、是非そうさせていただきます。」


 うまい手だ。

 レイは金貨を1枚渡しながら男性の値引きをそう評した。

 金貨1枚は短期的に見たら中々の損失だが、客が気分を良くして今後もこの店を使い続けるようなら長期的に見てプラスになるだろう。


「毎度ありー!」


 武器屋の男性は最後まで元気に見送ってくれた。


「よし、武器も買えたことだし早速訓練に――」


 レイが武器屋を出てすぐに訓練を提案しようとするも……


「レイ様。ふたりの服を買うのが先決です。」


 リリーが静かな圧力をレイに加えてきた。


「あー……」


 改めてふたごの姿をみると、奴隷館で着ていた白装束のままだった。

 おかしいとまでは言わないが、一行の中では明らかに浮いているのも確かだった。


「じゃ、じゃあふたりの服を買いに行こうか。リリー案内してくれる?」


「はい!お任せください。」


 リリーはふたごの手を取って歩き出した。


「ふー。リリーは怒らせると怖そうだね。」


「同意です。」


 レイの意見にアルも同意してきた。


「…………」


 レイが突然静かになったためアルは不思議に思い声をかける。


「レイ様、如何なさいましたか?」


「うーん、やっぱり気になるなあ。」


「レイ様?」


「ううん。こっちの話。少し寄り道するからアルはリリーたちのそばにいてくれる?」


「寄り道ですか……わかりました。私はリリーたちと一緒に行動いたします。」


「頼むよ。すぐ戻るからー。」


 そう言ってリリーたちがいる方向とは反対方向に走って行ったレイを、アルは心配そうに見送った。




 ――――――――――――――――




 「ねえ、僕たちに何か用?」


 奴隷館からずっとレイたちを追っていた2人組の後ろから、レイは声をかけた。

 大通りから少し外れた路地裏だ。


「っっ!!?」


 男たちはあまりの衝撃に声を出せずにいた。


「僕たちが奴隷館を出てからずっとついて来てたよね?」


「俺たちは怪しいもんじゃ……」


 男の片割れが口を開き始めるが……


「怪しくないっていうのは無理があるよ。それともこの街ではストーカーは罪にならないの?」


 レイによって機先を制された男は口ごもる。


「そ、それは……」


「まあ良いや。敵意はなさそうだから今回だけ目を瞑るよ。その代わりあなたたちを雇っている人間に伝えて欲しいんだ。」


「な、なにが……」


 レイはそこで一度区切り、笑みを消して告げた。


「次があったら、敵とみなす。」


「「…………」」


 男たちはレイの放つ殺気に押し黙ることしかできなかった。


「それじゃあ、ちゃんと伝えておいてね。」


 そう言い残してレイは悠然と男たちの間を通って、大通りに歩いて行った。

 残された男たちはレイの姿が見えなくなると、徐々に平静を取り戻し始めた。


「なんなんだよあのプレッシャーは。」


「どう考えてもただの子どもじゃないな。……とにかく調査は一旦中止して報告に行こう。」


「そ、そうだな。」


 男たちは急いでその場から走り去って行った。




 ――――――――――――――――




「お待たせ。服は決まった?」


 レイはアルたちがいる服飾店に合流していた。


「おかえりなさいませ。ご無事で何よりです。」


「ははっ、アルは大げさだな。それで?リリーたちは?」


「あちらでふたりの試着の手伝いをしております。」


 アルの示す方を見ると、そこにはお揃いの服を着たふたごがいた。


「あ、レイ様。ベルくんとリルちゃんの服はこれにしようかと思うのですがいかがでしょう?」


「良いんじゃない?ふたりとも似合ってるよ。」


 ふたごは顔を見合わせ、少しはにかんで見せた。



 服の会計を済ませたレイたちは服飾店の外に出た。


「それじゃあ今度こそ訓練にしようか。」


「レ、レイ様。どうか最初は軽い訓練にしてあげてください……」


「アル、ふたりは既に魔物の討伐経験があってレベルも9だ。アルやリリーの時ほど大変ではないと思うよ。」


「で、ですが……」


 アルは自分の時のような思いをふたごにさせまいとなんとか食い下がる。


「今日は双剣の扱いに慣れることが最優先だから大丈夫。アルが心配しているようなことにはならないよ。」


「……わかりました。」


 アルはレイの言葉を信じこの場は引き下がることにした。


「よし。先にハラルト様の所に寄ってふたりを紹介したら森に行こう。」




 ――――――――――――――――




 ハラルトへふたごの紹介を終えたレイたちは森へ来ていた。


「ハラルト様、ふたごが奴隷だってわかったらびっくりしてましたね。」


 リリーはふたごが部隊員になると告げられた際の、ハラルトの様子についてアルと話していた。


「そうですね。戦時下でもない限り奴隷を部隊員にするのは外聞が悪いので、部隊員になる契約は奴隷身分から解放してからではないと難しいようでした。」


「元々奴隷身分からは解放するつもりだったから別に問題ないんだけどね。……そろそろ気を引き締めて行こうか。」


「「はい!」」


こくこく


 レイの言葉にアルとリリーが返事をし、ふたごは首肯する。

 こうしてレイはいつも通り部隊員のレベルアップに勤しむのだった。




 ――――――――――――――――




「いやー、レイの行動には驚かされたね。」


「奴隷を部隊員にするとは予想外でした。」


 ハラルトの執務室でハラルトとゲルトが話していた。

 内容はレイが購入してきた奴隷についてだ。


「売主はヨーゼフかな?」


「そのようです。ヨーゼフ様の手のものがレイ様の身辺調査をしておりましたが、本人にバレてしまい釘を刺されたようです。」


「ははっ。それはヨーゼフにとっては災難だったね。彼の用心深さが裏目に出たようだ。」


「いかがいたしますか?」


「彼は信頼できる男だ。契約に抵触しない範囲で、それとなく事情を伝えておいてくれるかい?」


「承知致しました。重要な部分は伏せてお伝えしておきます。」


「頼むよ。」


 ハラルトはヨーゼフのフォローをゲルトに頼むのであった。

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