第一話 どちゅはおやまにかえりたいのじぇ
こちらの作品はAIを使用して製作しています。ご了承の上お読み下さい。
夏の太陽が容赦なく照りつける都会のど真ん中。
アスファルトの地面は熱を帯び、ゆらゆらと陽炎が立ち上っていた。排気ガスと熱い道路の臭いが鼻を突き、遠くから車のクラクションや人のざわめきが絶え間なく聞こえてくる。
その熱い地面の片隅に、一匹の縦長の成大よりやや大きい体をしたゆっくりが横たわっていた。
「……ゆ……?」
どちゅまりさはゆっくりと目を開けた。体が重く、ぼんやりとして視界が揺れる。黒い三角帽子が少しずれ、黄色いおさげが地面に触れていた。体全体が汗で少し湿り、夏の熱気が饅頭を包んでいる。
最後に覚えているのは、山の中で突然現れた見知らぬ人間さんが、霧のようなものを顔に向けて吹きかけたところまでだった。あの爽やか甘い匂いのする霧を吸い込んだ瞬間、意識が遠のいた。
「ここ……どこなのじぇ……?」
どちゅまりさは体を起こそうとして、よろよろと跳ねた。いつも見慣れた森の木々や柔らかい土、涼しい風はどこにもない。高くそびえるビル群が空を覆い尽くし、地面は固く熱い舗装道路ばかりだった。
「ゆ……ゆゆ……? おやまは……?おとーしゃん、みんなは?」
どちゅまりさは辺りを見回しながら、大きな体をぴょんぴょんと跳ねさせた。
そこは大通りの真ん中近くだった。ゆっくりではなく無数の人間が行き交っている。
スーツを着たサラリーマンが、携帯電話を耳に当てながら早足で歩いている。
「はい、了解です。明日の資料は……ええ、そうです……」
彼は足元に何かいることに気づいたが、眉を少し寄せただけで大きくステップを踏んで避け、電話の話を続けながら去っていった。
近くでは学生らしい若者たちが二人、笑いながら歩いていた。
「今日の講義、マジやばかったよな」「あの教授また同じ話してて草」
彼らはどちゅまりさの存在に気づくと、ちらりと視線を落としたが、すぐに興味を失って会話を続けながら通り過ぎる。
少し離れた場所では、母親が小さな子供の手を引いて歩いていた。子供は「ママ、早くアイス食べよー!」と騒いでいる。母親は優しく笑いながらも周囲に注意を払い、どちゅまりさの近くを通るときは自然に距離を取って避けた。
中にはゆっくりしていない目をした人間もいて、どちゅまりさはその視線にびくりと体を縮こませた。
「にんげんさん……!ここはどこなのじぇ!? どちゅはおやまにかえりたいのじぇ!どしゅのおとーしゃんのところにかえりたいのぜ!」
どちゅまりさは大きな体を必死に跳ねさせ、声を張り上げた。しかし人々はただ無視するだけだった。石ころや落ちているゴミを避けるのと同じように、淡々と道を空けて通り過ぎていく。
少し離れた路地裏の陰から、その様子をカメラで撮影していた鬼威惨は、苛立たしげに舌打ちをした。
「ちっ……全然面白くねえな。誰も踏みつけねえし、罵りもしねえ。ただ避けるだけかよ」
彼はカメラの電源を切りながら、独り言を吐いた。
「やっぱ、れいまり一家を虐待するのが一番の撮れ高だな。山に帰すのも面倒くさいしこのまま放置でいいか。どうせこの都会じゃ野垂れ死ぬだろうしな」
鬼威惨はそう言い残すと、興味を完全に失った様子でその場を去っていった。
どちゅまりさは夏の猛烈な日差しと人間の波を避けるように、必死に跳ねながら移動した。暑さと空腹で体力がどんどん奪われていく。
一番怖かったのは車や自転車、電動スクーターに轢かれそうになった時だ。大きな音を立てて迫ってくる車を間一髪で飛び退き、自転車の車輪が体をかすめ、電動スクーターの集団に囲まれそうになった。住人からは「邪魔だ! どけ!」と怒鳴られ、信号の赤信号で止まっている親子連れを見てようやく「あかのときはとまるのじぇ……」と人間のルールを必死に理解した。全てが未知の恐怖だった。
ようやく見つけたのはビルの合間の狭い路地裏だった。わずかな日陰があるだけで地面はまだ熱く、蒸し暑い熱気がこもっている。そこに身を寄せても熱気が体を包み息苦しさが募るばかりだった。
どちゅまりさは熱い地面に体を小さく丸め、月を見て震える声で呟いた。
「……おとーしゃん……どちゅ、こわいのじぇ……」
路地裏の薄暗い日陰で休んでいたどちゅまりさだったが、激しい空腹がどちゅを再び外へ押し出した。
「う……おなか、ぺーきょぺーきょなのじぇ……」
縦長の大きな体をぴょんぴょんと弱々しく跳ねさせながら、路地から大通りへと出る。夏の陽射しはまだ強く、地面の熱が体全体をじりじりと焼くようだった。
近くの植え込みに生えている草を見つけた。森では普通に食べていたものと似ていたが、都会の草は排気ガスを浴びて黒ずんでいる。
どちゅまりさは恐る恐る一部を口に含んだが、すぐに顔をしかめて吐き出した。
「うえ……どく、はいってりゅ……。たべられないのじぇ……」
次に落ちている枯れ葉や壁にへばりついたわずかな苔を見つけたが、それらも土埃と排気ガスの臭いが染みついていて、とても口にできなかった。噛むと苦くて舌が痺れるような感覚すらあった。
道端に落ちているゴミ袋から少しだけ食べ物の汁が染み出しているのを見つけた。甘い匂いが漂ってくる。
どちゅまりさは思わず近づいたが、ふと、ドスまりさの言葉を思い出した。
『人間さんの食べ物は、安易に食べたらダメなのぜ。舌が肥えるし、中にはゆっくりできないものが入ってるかもしれないから、絶対に食べちゃダメなのぜ』
「……だめ、なのじぇ……」
どちゅまりさは震える声で呟き、必死にその誘惑を振り払った。体は空腹で震えていたが、父の教えを守ることだけがどちゅの唯一の支えであり教訓だった。
その時、近くのコンビニから冷たい空気が流れ出しているのに気づいた。
「すずしい……少しだけ、すずみたいのぜ……」
どちゅまりさが近づいていると、ちょうど一人の人間の女性が、ありす種のゆっくりを連れて店内に入っていくのが見えた。自動ドアが開いて中へ消えていく。
吸い寄せられるようにどちゅは自動ドアへ近づいた。しかし、店内に入ろうとした瞬間、ゆっくりできないブザー音が鳴り響き、店員が慌てて出てきてほうきで追い立ててきた。
「出ていけ! 野良のゆっくりは店に入るんじゃねえ!」
「ゆぴいっ!」
どちゅまりさは慌てて跳ねて逃げた。走りながら中枢餡の中で疑問が渦巻く。
「……どうしてありすはいれて、もらえたのじぇ……? どちゅは、だめなのじぇ……?」
同じように近くのファミレスやスーパー、公共施設の入り口に近づいてもブザーが鳴り、人間たちに阻まれ追い出されてしまう。
暫くして歩くと小さな公園を見つけた。フェンスの外から中を覗くと、人間とゆっくりたちが一緒に遊んでいる姿が見えた。楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
さらに奥を見ると水道の蛇口で水を飲んでいるゆっくりたちの姿があった。
水を飲もうと意を決して公園の中へ入ろうとした瞬間、草や砂利に体が触れた途端、妙な痛みが全身を走った。饅頭の柔らかい体に染みるような激しい刺激だった。
「いたっ……! なにこれ、いたいのじぇ……!」
どちゅまりさは悲鳴を上げて飛び退いた。他のゆっくりたちは平気で砂の上を跳ね回っているのに、自分だけがこんなに痛い。どうして自分だけ入れないのかと。
近くにいたれいむに助けを求めようと声をかけたが、相手は冷たい目で一瞥しただけで完全に無視された。
仕方なくどちゅまりさはその場を離れ、再び路地裏方面へと引き返した。
その途中、ゴミ捨て場を見つけたが誘惑に負けないように慌てて目を逸らし、ドスまりさの忠告を中枢餡に急いでその場を横切ろうとした。
しかし、体の中のあんこがぐあんぐあんと揺れるような不快な感覚に襲われ、吐き気が込み上げてきた。
「うう……あんこさん、へんなのじぇ……」
どちゅまりさは急いでその場から離れた。ゴミを漁るつもりなどなかったが、ただ通りかかっただけで何故か体調を崩してしまった。
結局その日、どちゅまりさは何一つ満足に口にすることができなかった。
夏の長い日がようやく沈み、夜が訪れる。
再び路地裏の熱を帯びたコンクリートの上に体を丸め、どちゅまりさは小さな声で呟いた。
「……おとーしゃん……どちゅ、おやまにかえりたいのじぇ……もう、つかれたのぜ……」
腹は減り、喉は渇き、饅頭の体は埃と汗で汚れ、黒い帽子も少し歪んでいた。左側のおさげが力なく地面に垂れている。
都会の夜の喧騒はまだ続いていたが、どちゅまりさの周囲だけはひどく静かで冷たかった。
都会に来てから三日が経っていた。
どちゅまりさの長い図体はすっかり痩せこけ薄黒くなっていた。元々成体よりも一回り大きいはずの体は今や力なく縮こまり、黒い三角帽子は埃と泥でくすんでいた。おさげも元気を失い、地面に擦れるように垂れ下がっている。激しい空腹と渇き、夏の猛烈な暑さ、そして何より孤独がどちゅの体と心を限界まで追い詰めていた。
「もう……だめ、なのじぇ……あんよさん、動かないのじぇ……」
それでもどちゅまりさは弱々しく跳ねながら進み、ようやく次の少し大きめの公園を見つけた。
外から中を覗くと、れいむやまりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、みょんたちがのんびりと暮らしている姿が見えた。木陰で遊び水道の水を飲んでいる。人間さんの姿は見当たらず、みんな自由にゆっくりしている。
どちゅまりさは恐る恐る出入り口の近くの草に、ほんの少しだけ体を触れさせてみた。
「……いたくない……のじぇ?」
どの公園も草や砂に触れただけで激しい痛みが走ったのに、不思議と何も感じなかった。どちゅまりさは目を丸くした。
「……ここ、へいき……なのじぇ?」
少し勇気を出して草の上をゆっくりと進んでみる。痛みは全くない。ほっとしたどちゅまりさは意を決して公園の中へ入り水飲み場へと向かう。
しかし、そこに一匹の野良まりさが立ち塞がった。
「なんだかゆっくりしていないゆっくりが来たのぜ」
一匹のまりさが冷たく言い放つ。
すると公園にいたゆっくり達がぞろぞろと集まって来た。子ゆっくりたちがぷくーっと頬を大きく膨らませてどちゅまりさに威嚇してきた。
「ぷくー! でっかいのによわそうなんじゃよ!」
そこに長らしき長髪のありすが髪を靡かせ優雅に前へ出てきた。
「ふん。都会派じゃないわね。田舎の臭いがするわ」
どちゅまりさは必死に頭を地面に擦りつけて懇願した。
「おねがい……なのじぇ……おみずさんを……のませてほしいのじぇ……どちゅ、もうずっとおくちさんになにもいれてないのじぇ……」
しかし長のありすは冷たく言い放った。
「ゆぷぷ、田舎臭いわね!都会派じゃないから飲ませないわ!都会派じゃないゲスなゆっくりは死になさい!」
「そうだよ!ゆっくりしてないゲスなゆっくりは死ぬべきなんだよ!」
次の瞬間、れいむとまりさの成体たちが一斉に襲いかかってきた。
普段なら成大相手に負けず劣らずの自慢の体格も、今は痩せこけ力が入らず、体当たりを喰らい、体を転がされ、嘲笑の声が降り注ぐ。
「いたいのじぇ……やめてね……!」
ちぇんに噛みつかれたり、みょんに鋭い枝を突き刺されそうになる。慌てて身をよじった拍子に転んでしまい、地面に刺さった鋭い石で饅頭の皮が少し破れてしまう。じんわりとあんこが飛び出した。
どちゅまりさは傷口をおさげで押さえながら必死に逃げ出した。公園のゆっくりたちに笑われながら、情けない跳ね方で開けた出入り口から追い出された。
その日の夜。
住宅街の狭い路地裏に逃げ込んだどちゅまりさは、とうとう力尽きて倒れ込んだ。激しい痛みとともに、饅頭の皮が先程より大きく破れ、あんこが零れ落ちる。瀕死の状態でコンクリートの上で小さく丸くなる。
「……おとー……しゃん……むらのみんな……もっと……ゆっくち……」
言い切る前に意識が薄れる。
その時だった。
「おい、大丈夫か?」
少し低くて穏やかな、若い男性の声が路地裏に響いた。
どちゅまりさはかすかに目を開け、ぼんやりとその人物を見上げた。
そこに立っていたのは、二十代後半のスーツ姿のサラリーマンの男性だった。ネクタイを緩め、タバコを片手に疲れた表情でこちらを見下ろしている。




