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マチ

 叩き付けられた鉄人形(アイアンゴーレム)の腰部は、大きく窪み、一部はひび割れた。どうやらコイツの中は一部空洞なようだ。

 そりゃそうだよな。中までみっちり金属なら重すぎて燃費が悪い。


 ともかく、人間で言えば骨盤の形が大きく変形したのだ。鉄人形は何度も立とうとしては、バランスを崩して転んだ。二足歩行ってのは繊細なんだよ。

 オレは念の為、落ちているヤツの長剣を、手の届かない所まで蹴っ飛ばしてから先に進むことにした。


 その剣は、かなり丈夫なのは間違いないので持って行くことも考えたが、ここの住人には見慣れた物かもしれない。だとすると、明らかな盗品を持ち歩くのはリスクでしかないので断念した。

 

 洞穴の先を見ると、やはり完全な闇ではない。晴れた満月の夜ぐらいの明るさはあった。これがヒカリゴケのようなものなのか、ランプのような仕掛けがあるのかは、まだ分からない。

 それも調査しようと踏み出すと、後ろでカチャリと音がした。


 振り返ると、鉄人形(アイアンゴーレム)の長剣を抱えたゴブリンがいる。


「キシ、捨てたから、これ、オレのもの」

 ゴブリンが言った。

「いや、元々オレの物じゃない。コレのものだろ?」

 オレは転がっている鉄人形(アイアンゴーレム)を指して言った。

「ゴーレム、キシ、壊した。だからもうゴミ。回収される」

 ゴブリンが言った。

 そう言えばゴーレムはもうピクリとも動かなくなっていた。行動不可能レベルに損傷した場合は魔力供給が止まる仕掛でもあるのだろうか?


「好きにしろ。しかし、そんなの持ってて大丈夫か?ゴーレムを破壊した侵入者と思われるぞ」

 オレは自分が剣を放置した理由を思い出して聞いた。 

「侵入?違う。マチはみんなのもの」

 ゴブリンは不思議な顔をして言った。


 ゴブリンは終始このような言葉なので、実際には意志疎通にはかなり時間がかかったが、要約すると、ゴブリンはこの先の地下要塞(と王国が呼ぶ場所)のことを『マチ』と呼んでいた。その『マチ』は人間(おそらくジャウード教徒)と亜人がおり、基本的には共存しているとのこと。


 鉄人形(アイアンゴーレム)は人間が作ったものなので、壊そうが何しようが知ったこっちゃないと言っていた。そしてゴーレムは亜人は襲わないらしい。人間は選別するようだが、その選別方法は『知らない』と言っていた。

 他にも『マチ』の中には、こういう警備用に人間が配置した魔物は少なからずいるとのこと。


「なるほどな・・・ところで、お前は関所にいたヤツか?」

 オレにはゴブリンの見分けは付きにくいのだが、ヤツは要所要所でオレのことを『キシ(騎士)』と呼ぶので、そんな気がした。

「そうだ。通行料取ってこいとボスに言われた。オレのせいじゃない。ボスの命令」

 ゴブリンはギクリとしたように言った。

「通行料だと?!」

 オレは少し威圧してみる。

「イヤダ!ゴーレム壊すヤツとケンカしない・・・コレ、通行料でいい、だからコレ、オレのもの」

 ゴブリンは慌てたように抱えた長剣を示して言った。


「ならいい。好きにしろ」

 オレがそう言うと、ゴブリンは逃げるように去って行った。

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