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16/39

滝★

 その音とは金属音。それもかなりの重量を感じさせる音。そんな音を発する物は一つしかない。

 オレはその場を飛び退いて振り返る。

 その飛び退いた地面に、鉄人形(アイアンゴーレム)が振った長剣が叩きつけられ、砂利と小石が弾け跳んだ。


 窪んだだけの無表情な眼がこちらを見据える。オレは小剣(ショートソード)を抜いて低く身構えた。

 逃げるには、この洞穴の中も相手の力量も情報が少なすぎる。

 まぁ、こういう理屈は後から言語化した話なんだけどな。当時のオレは、そこまで細かく考えていたわけでは無いが、直感的に下手に逃げるのは危険だと判断した。


 実際、熟考するヒマを与えず鉄人形は剣を繰り出して来た。

 それを小剣で受ける。とんでもなく重い斬撃だ。力はもちろん、扱っている長剣もかなり重量がある物のようだが、それを軽々振り回している。


 スピードは互角といった所だ。

 なんとか懐に入りたい所だが、なかなかそれをさせてくれない。


 何度となく攻撃を裁いたが、次第に劣勢になってくるのを感じずにはいられなかった。

 そもそもこちらの攻撃が通らないのだ。斬撃も突きもヤツは避けようともしない。当たるに任せているのだが、それで一切傷を負わせることが出来なかった。

 受けつつ、躱しつつ弱点はないかと探るのだがそれが見当たらない。しいて言えば関節部分はさすがに金属ではなさそうだが、動きながらそんな細い隙間を剣で狙うのは至難の業だ。


 そして、その関節を傷つけた所で、この人形の動きが止まるとは限らない。ゴーレムというのは動力源は魔法だという。ならば完全に手足を斬り落とすぐらいじゃないと動きは止まらないのではないか?

 少なくともオレには、多少の傷をつけたぐらいでは、これが止まる気がしなった。根本的に全身を破壊するぐらいでなければ。


 何十回目かのヤツの攻撃を受け止めた時、ミシッという嫌な感触があった。

 小剣(ショートソード)のどこかにヒビが入ったのだろう。もういくらも持たない!

 そしてこの剣撃は、先の王国騎士の時にやった手甲で受ける戦法は出来ない。鉄板ごと骨折してしまいそうだ。


 ヤツもそれを察したのかもしれない。

 十分な勝算を持ったような上段の一撃が繰り出された。


 他にどうすることも出来ず、オレは小剣でその一撃を受け止めた。

 甲高い音を立てて小剣が折れる。

 瞬時の判断でオレは小剣を手放して、体を横に躱した。

 ヤツの長剣が眼前を通って行った。

 眼前にヤツの右肩がある。その肩でタックルに来ることが重心移動を見て分かった。


 ここしかない!


 オレはヤツの右肩と首に手を添えて、地震(アースクエイク)の魔法をかけた。オレのこれは黒魔法じゃなく、身体強化魔法の応用だ。相手の重心に干渉して地震が起きたように不安定にして転ばせる術だ。

 だから相手に触れなければかけられない。

 ずっと懐に入れず出来なかったのだが、剣が折れたことで、計らずもそのチャンスが訪れたんだ。


 構造が単純な分、ヤツの重心は分かりやすく、術は見事に決まる。ヤツは右肩から落ちるように転んだ。

 しかし、肩を強打する刹那に体を捻り、ヤツは背中で受け身を取る。ダメージは不十分のようで、すぐに起き上がって来た。


 それでいい!


 受け身を取るということは、投げ技は効くということだ。

 転んだ拍子に長剣を手放しているので、これで恐れずに接触できる。

 オレはヤツの立ち上がり際に懐に入り、密着して再度地震(アースクエイク)をかける。

 ヤツの重心を崩しつつ、呼吸を腹に落とし、腹と背中と脚に意識を集中し、一気に担ぎ挙げた。


 右肩にヤツの腹を乗せ、オレの右手でヤツの腰を抑え、左手でヤツの後頭部を抑える。

 金属だけあって重い!体重は100kgは軽く超えているだろう。

 一瞬でも気を弛めたら、オレの腰がイカれてしまう。

 しかし、この重さそのものが武器になるんだ!


 オレはそのまま前に倒れこむようにヤツを地面に叩きつけようとする。

 対人ならば頭から落とすところだが、コイツに脳みそが詰まっているとは思えない。根本的に運動機能を破壊しなければダメだ。

 だから落としつつ、更に半回転させて勢いを付け、人間で言う骨盤の部分を地面の岩場を狙って叩きつけた!


 ちなみに、この叩きつけるまでの一連の流れは、滝落とし(フロウジョン)と言う技名がついている。


 元々は独特の身体強化魔法が盛んな異世界の技術らしい。

 オレの師匠の師匠の、そのまた師匠が異世界転生者とのことだ。

 ホントかウソから分からないけどな。


挿絵(By みてみん)



■備考?

もちろん、その異世界のグランドマスターが使う技は別格で、彼が使う場合はパーソナルカラーにちなんてエメラルドフロウジョンと呼ばれています(:-p)


◼️追記

一番最初に書いたイラスト。他は紙にボールペンで描いてるのですが、これだけタブレットにタッチペンで描いてます。

微妙に画風が違うので、そのうち書き直すかもしれません。

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