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アラサー魔法少女、派遣します!  作者: ふたぐちぴょん
第5案件『ライブカフェバー』
18/21

あいつしか、頼れる人が……

  確か、サンプリングディレクターやってた時、あいつから電話がかかってきて、敵同士とはいえ何かあった時のために、電話帳登録してあったはずなのだが……お、お、大柴……ない。それでは、下の名前ならどうだ? さ……ら! あった! もう遅い時間だけど、出てくれるかな?

「もしもしサラ? 夜遅くにゴメンネ!」

「う~ん、寝てた~」

「ちょっと相談なんだけど……」

「いい加減なことだったら、殺すよ~まあ、あんたのいいブリからすると、いい加減ではないことくらいはわかるんだけど」

 そこで、タカナシ社長と共に『カフェバーのコンサルティング』に行ってきた話、タカナシ社長が、ここの店には『華』がないと分析した話。私が一曲歌ったらマスターにお褒めいただき、ここで働かないかと言われた話。最後の方はしどろもどろだったものの、伝えることは伝えた。

「それで是非、あんたにも一緒に働いて欲しいと、そういうわけよ。頼み、聞いてもらえるかしら?」

「よっこらしょっと。ちょっと、顔洗ってくる」

 顔を洗うというのは、こちらからのお願いが切実であるので、話を聞く準備をしてくれるということなのだろう。あいつもなかなか、義理堅いというか。

「で、要するに、アンタと私の二人で、店の看板娘として、通常のホールスタッフをやりながら、ライブタイムも設けたいと、そういうことよね」

 まあ、要約するとそうなるけど

「でも、まだちょっとそれだけじゃ、面白くないわね」

 何がだ?

「せっかくだから、もっと大勢のアーティストを集めて、1日ライブカフェバーをやったほうが、人も集まるし面白くなって、店のプラスになるんじゃないの?」

 なぬ? コイツもタカナシのおっさんに続き、コンサル脳とやらのあるイキモノなのか?

「もちろん、私もやるからには、全力で取り組むわよ。聞いたところ、カラオケ程度しか機材ないとのことじゃない。実は私、ライブハウスで働いていたこともあるのよね。そっちのつてから、ちゃんとした音響機材を用意して、オペレーターなどのスタッフの手配もする。あと、過去の大物ミュージシャンにつてがあるから、その人に出てもらえないか打診をしてみるつもり」

 彼女が協力的なのは、実にありがたい。しかし、気になることが。

「サラ……アンタってさあ、うちの魔法少女スーツを盗み出した会社にいる、

つまり、よその会社の人間である上、言ってみれば『敵』なわけじゃん。なんで私たちに、そんなに協力してくれるの?」

「私は、いろんな会社を渡り歩いているわ。それもあって、まあ、金を払ってくれる会社なら、どこでもいいと」

 案外、さっぱりした考えなんだなぁ~私がタカナシ社長のもとにいるのは、魔法少女スーツの件もあるが、第一に、社長が良くしてくれるから、というところであって。それが、現代っ子と。あまり認めたくはないが昔びとである私の違いなのだろうか。

「それに、確かに事務の仕事は、短期で終わったけど、タカナシさんのところの登録は消したわけじゃないわよ。つまり、仕事を待っている時のアンタと同じ状態。違うのは、私は仕事を待ってるあいだも、ほかで仕事していたりするという点。それでいろいろ……ね」

 サラもだんだん、心を開いてきている。すると、自分が『産業スパイ』という立場にいることに対し、嫌気がさしているのではないだろうか。

「ただ、やるからには、それなりの報酬はもらうわよ。当然だけど」

「それは、もちろん……ね、サラ。絶対、成功させましょう!」

「当然! 成功させるために、私はこの仕事を受けたんだから。それに、可愛い女の子が二人……成功しないわけがないでしょう?」

 自分でいいますかそういうこと。

「あ、一人は女の『子』じゃなかった」

 あいかわらず、一言多い子だ。


 タカナシ社長に電話して、昨晩のサラとの話の流れを伝える。

「そうか~1日ライブカフェバーか~それは面白そうだな。それにしても、サラちゃんがそこまで協力的だとはね~スパイ云々の話はあるが、それはそれ、これはこれと割り切れるのが対したもんだな。で、ライブの開催なんだけど、君たち個人で開催するよりも、うちの会社の主催ということにしておいたほうが、いろいろ泊がつくんじゃないかな。で、イベント名は考えたのかな?」

「昨日、サラとの電話のあと、寝ないでいろいろ考えて、お店の名前がTWENTYつまり『20』ならば、ひと組持ち時間20分の、『トゥエンティタイム』でどうかなって」

「そうか。それじゃ、うちの社名、『ことりキャスティング』う~ん、なんか違う。ここは、芸能事務所風に、『ことりプロモーション プレゼンツ トゥエンティタイムショー』と行こうか」

「あ、それいいですね」

「ところで、機材の手配や、大物さんへの声がけは、サラちゃんがやってくれるとのことだが、それ以外の出演者の手配は、真希ちゃんがやるわけだろ? 何かつてはあるのか?」

「一応、SNSサイトで募集かけようと思います」

「まあ、うまくいくかどうかはまだわかりませんけど、やると決めた以上、精一杯やってみます」

「おっとと。肝心の、日時がまだだったじゃないか。危ないところだったなぁ~今ちょっと、瀬尾さんに確認してみるよ。昼か夜だったら、どっちがいい?」

「う~ん、夜! できたら、土曜夜! バンドやってる友人が言ってたけど、土曜夜が一番人が集まりやすいって」

「で、時期はいつごろにする? あんまり早すぎても、準備が間に合わなかったらまずいし」

「大体、1ヶ月くらいですかねぇ。」

「それじゃ、瀬尾さんに、この日程でいいか確認して、折り返しメールでもいいかな?」

 電話を置いて、しばらくメールを待つ。10分後くらい経って、着信があった。

『1ヶ月後の土曜日夜、OKとのことです』

 早速、サラにも電話しないと。いい加減、彼女ともメールアドレス交換、しておかないとな~

「あ、もしもしサラ? 日程決まった! 1ヶ月後の土曜日夜だって!」

「日程の件を話していなかったことくらい、昨日のうちに気づきなさいよ。1ヶ月か……きついといえばきついけど、まあ頑張ってみるわ」

 やっぱり、1ヶ月じゃきつかったのかなぁ。私のやる気だけが、空回りしているのかなぁ……

 悩んでいても仕方がない。私は、SNSサイトで募集をかけるべく、文面を考えてみた。

================== 

ライブ出演者募集!

このたび、カフェバーを盛り上げるべく、

1日限りの、ライブカフェバーを開催することになりました。

そこで、一緒に盛り上げてくださる出演者様を募集しております。

参加費なしで、ひと組あたり持ち時間20分です。

パフォーマンスは、歌(カラオケ設備があります)弾き語り、

ダンス・朗読など、どんなジャンルでも構いません。

日時・時間などの詳細は、以下をご参照ください――

=================

 文面は、このようなもので大丈夫だろう。さっそく、SNS中の、アーティスト活動をしていそうな人に声をかけてみよう。

……なかなかいい返事が来ない。返事が来ても、お断りの文面ばかり『すみません、その日予定が入ってて』はまだいいほう。『実績のないライブイベントには、出ないことにしているんです』などという、腹が立つ文面を送ってくる輩もいる。もっとほかの人からの連絡ないか?と探っていたら、『カフェを盛り上げたいとの素晴らしい趣旨に惹かれました。ぜひ出演させてください』やった~! これは、頑張っていけば、何組か集まるかも!

 携帯電話を見ると、メールが1通。差出人に心当たりはないが、一応開けてみることにする。

『サラです。電話で話した大物さん、具体的に言うと、ずいぶん昔、『CNB』というバンドでギターボーカルやってた、関谷雅人さん。出演了承してくれました。なんか、すごいたのしみにしているみたい。ただ、実物見ても、驚かないでね』

 非常に嬉しいお知らせなのだが、私、サラにメールアドレス教えた覚えはない。一体、どこで知ったんだろう? それに、実物見ても、驚かないでねとは、一体、どういうことだろうか?

 サラのメールアドレスがわかった以上、今後もやり取りすることが多くなると思うので、さっそく登録しておき、お礼の返信をしておかないと。

『ありがとう!たすかるよ~!ただ、実物見ても驚かないでねというのは少々気になるけど。ところでだけど、私、あなたにメールアドレス教えた覚えないけど、一体、どこで知った?』

 すぐに返信が帰ってきた。

『アンタんところで事務やってた時に、登録スタッフ名簿から見てしまったの』

 薄々そうだとは思っていたのだが……あの産業スパイめ!


 しばらくSNSサイトによる出演者募集活動を続けているうちに、だいぶ出演者がまとまってきた。この人数なら、なんとかライブ回せるかな、くらいに。そこで、今度は、お客さんとなる人に対する告知活動、そう、私の得意な、ネット生放送で。


『みなさんお久しぶり~みんなのアイドル、ニート姫だよ~! あっと、今はもう働いているので、みんなより先に、ニート卒業しちゃったね』

(うるせー余計なおせわだ、というコメント)

『実は今度、とあるカフェバーで、ライブカフェバーをやることになりました!話の発端は、お店のマスターが、お店をもっと盛り上げたいというところから始まって、だったら、ライブカフェバーをやるのが一番手っ取り早いと、私が提案したんですよ!』

(嘘だろ~絶対!)

『で、このイベント、歌ったり、楽器弾いたり、朗読したり、いろんなことができるイベントなんですよ~本当は、ダンサーも入れたいところなんだけどね』

(私、実際、『踊ってみた』動画も上げていて、興味あるんですけど、今からまだ出れますか?)

『おお!素晴らしい!募集は、まだかけているので、このサイトに私のメールアドレスが貼ってあるので、ここまでメールくださいね!』

『あと、なんと、ずいぶん前に有名だったバンド『CNB』のメンバー・『関谷雅人』さんの出演も決定しています!』

(おお~すごい!)(誰その人知らない)

『若い方は知らないかもしれないけど、私が子供の頃、すごい人気だったんですよ!そんなすごい人も見れちゃうライブなんですよ!絶対、来て損はなし!日程や料金は……』


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