第02話:殺人事件発生! 現場は桜田門駅!
桜田門駅のホームへやって来た京子と滝川。
待ち合わせ用の椅子に遺体が腰をかけている。
鑑識の報告によると、死亡推定時刻は午前八時半前後で、死因は心臓マヒである。
遺体の足下には缶が置いてある。
「鑑識さん、これ調べた?」
「その缶の中に残ってるジュースからヘレブリンが検出されました」
ヘレブリンとは、服用すると心臓マヒを起こす毒薬だ。
「ヘレブリン、ですか?」
「キンポウゲ科のクリスマスローズから採取出来ます」
「そうですか。缶から指紋は?」
「三種類の指紋が検出されました。一つは業者の。もう一つは被害者、もう一つは犯人のものかと。現在、データベースで照合中です」
「身元は?」
「加山 守男、三十歳。職業は事件記者です」
「……………………」
「山上さん、あれに何か映ってるんじゃないですか?」
滝川がそう言ってホームに取り付けてあるカメラを指差す。
「行ってみましょう」
京子と滝川は駅員室へ移動し、カメラの映像を確認した。
映像には、缶を加山に渡す何者かの姿が映っている。
「顔、映らないかしら」
二人は暫し眺めるが、映像に不審者の顔が映ることはなかった。
「どうもありがとう」
京子はそう言って、滝川と共に駅員室を出た。
「収穫なかったですね」
「そうね。交友関係でも洗ってみようかしら?」
京子と滝川は加山の交友関係の洗い出しを始めた。
加山の勤める会社で話を伺う。
「か、加山が死んだ!?」
驚き戸惑うのは、加山の上司で、名を上松 洋一。
「どうやら毒殺のようです」
「毒殺!?」
「それでお訊ねしたいのですが、最近彼に何か変わった様子はございませんでしたか?」
「あいつは人柄もいいし、人を恨んだり恨まれたりはしませんでしたからね……。特に変わったところはありませんでしたよ」
「そうですか。では、貴方は今朝八時半ごろ、どこにいましたか?」
「俺を疑ってるんですか? 俺は車で出勤中でしたよ」
「それを証明出来る方はいますか?」
「……………………」
答えられない。
「そうですか」
滝川くん、お暇しましょう──そう言って京子は滝川とその場を後にする刹那、わざとボールペンを落とした。
「落としましたよ」
上松がボールペンを拾い、追い掛けて来て京子に渡した。
「ああ、どうも」
会社を出る京子と滝川。
「山上さん、あいつ怪しいですよ?」
「疑わしきものは罰せずよ」
(確かに滝川の言う通りだ。だが証拠がない)
二人は警視庁に戻る。
「あ、私、鑑識寄って行くわ」
京子は滝川と別れ、鑑識を訪れた。
「猫田さん」
鑑識の猫田 十三に声をかける京子。
猫田は晴男の親友である。
「ああ、山上警部」
「俺だよ、猫田」
「はい?」
「如月 晴男」
「え!?」
驚く猫田。
「俺、どうやら死んじまったらしい。で、今この子の体を借りて喋ってる」
「本当に晴男なのか?」
「そうだよ」
「そんなことある訳ないだろ」
「俺も否定してたけど、どうやら霊は存在するみたいだぜ」
「じゃあ訊くが、俺の別れた女房の名は?」
「篠崎 絵里子。あだ名はえりちゃん」
「そ、そんなことって……!」
「それより、これ調べてくれよ」
京子はボールペーンを取り出した。
「缶についてた指紋が採取出来るかどうか」
「分かった。直ぐに取りかかるよ。何か分かったら連絡する」
京子は鑑識を出ると、捜査一課に戻った。