第6話 エロまんが家にヒロインは難しい③
〝烏帽子変色蜥蜴〟先生。
愛称『レオンちゃん』。
自分で改造したであろうサブカルチックな学生制服(緑色のラインが入っており、チェーンや布紐が付いている)。
緑色のポニーテールがなんだか幼馴染キャラのような印象を受ける<分かりづらい表現になってしまうが親しみやすいというか、こんな幼馴染が欲しかったというか。
「それで君の属性は?」
「次はボクが攻略対象かな。主人公クン」
「どうしてそうなる」
「だって順調にふたりの好感度を上げているように見えたからさ。ボクも攻略されちゃうのかなって」
好感度上げ? なにを言っているんだこいつは。
さんぽ先生にはNTRに引き込もうとしてくるし、あ。先生に限っては刑務所に入れてやる宣言まであった。
「まあ、この中で攻略するなら君だろうな」
「んきゅっ?」
予想外の回答だったのか、目玉が飛び出るくらい驚いているレオン先生。
だってそうだろ。この3人であるのなら普通の女の子そうな彼女が一番話しやすい。
普通そうな普通の女の子がエロまんが家なわけがないがないのだけれど。
「……ちょっとプレイボーイすぎないかな? ボクにそういうの期待されても、答えられないよ」
「答える必要はない。思ったことをただ口にしただけだ」
「本当のボクのことを知ってもそんなこと言えるかなー?」
ぐいっと近づいてきていたずらっ子のように微笑む。
頬に置かれた人差し指があざとく、不覚にも可愛らしく思う。
「それにしても〝属性〟なんて表現。早くもさんぽ先生の影響受けてない? ボク、嫉妬しちゃうよ」
ウソつけ。
顔は笑っているくせに目が笑っていない。
俺の測っているような、そんな瞳をしていた。
「もともと少年漫画が好きなもんで」
「そっか。うんうん、ボクも好き。いいよね地上最強の父親との対立とか、地下地下格闘場とか、「斬られてねェ「侠客立ち」なんざ……「侠客立ち」じゃねェ……」とかね」
「ずっとグ●ップラー刃●の話してる?」
「キミとは良い友達になれそうな気がするんだ。よろしくね、ばなな☆ちっぷす先生。略して〝ばなち〟とか良くない? 可愛いよね、ばなち」
「呼びやすいならなんでもいいぞ。レオン」
確かにあだ名で呼び合うなんて普通の友達のようだ。
しかし握手を求めてくる手が、さっきのグ●ップラー刃●のせいで取れないでいる。
スペックとか渋川剛気みたいにされない?
俺が迷っているとぐいっと引かれ握手する。
「ボクの属性は〝男の娘〟だよ」
彼女は俺の瞳をのぞき込む。
なにを探っているのかわからないが、きょとんと首をかしげられてしまう。
「あれ?」と声まで漏らす。
「なるほど。だから合った時「メインで展開してるエロまんが雑誌」なんて言ったのか。男の娘やBLは別雑誌だからな。週刊で出してたエロまんがは打ち切られて14号で終わったが単行本でアンソロジーとして出版してるよな」
「……気持ち悪くないの?」
「なんで」
「いや、だって。男性ってそういうのキライでしょ?」
「どこ調べだ。一般的な考えは知らないが、異性だろうが、同性だろうが、異種同士だろうが結局はエロまんがだ。推す推さないはあったとしても、気持ち悪いなんて思うわけない。作者の血と肉と精力の賜物じゃないか」
「なにそれ。変な考え方してるね」
「そもそも男の娘属性のエロまんが家なのになんだその態度は。さんぽ先生を見習えとまでは言わないが、胸を張れ。お前は間違ってない」
この握手は嘘発見器のような役割をしているのだろうか。
それとも俺の瞳に嘘はないと理解したのか、安心したように微笑みを見せる。
「うん。ボクはなにも間違ってない。好きなものを好きって言える人生。それ以外いらないよね」
エロまんが家はみんなそうだ。
胸を張って仕事をしているが外に出れば決して理解されることはない。
それでも俺は自分の仕事に誇りを持っている。正直、胸熱展開の少年漫画にだって負けちゃいない。
真剣にエロを作っているんだ。
ポエムじみてしまった。
表情も会話に合わず熱のこもったものだと思う。
それを見て、彼女は満足したようにうなずく。
「——————な。」
抱擁された。
愛情というよりも親愛に近しいものなのだと思う。
いい香りがした。
それから耳元で。
「えへへ、一緒に無人島に来た同性がキミみたいなひとで良かった」
「お?」
陽キャサブカル学生制服系ヒロイン(?)
…………♂?




