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プロローグ:最終決戦

 土壌的に耕作に適さない土地である故なのか、平らであるにも関わらず手付かずのまま荒れ果てている土地。そんな荒地で俺は膝をついていた。


 足のつま先から手の指先まで、まさしく全身に経験したこともない痛みが走っており、思わず苦悶の表情を浮かべてしまう。


「いくら貴方が『全ての刃物を鍛える者』だからといって、何も主に刃向かうことはなかったでしょうに……。ねぇ、トバル・カイン?」


 目の前に立つ男――ノア――が可哀想なものを見る目でこちらを見遣りながら、呆れたように言葉を投げかけてくる。


「俺に、膝を、つ、かせたのは、お前じゃ、ねぇだろ……!」


 余りの痛みから、息も絶え絶えに言葉を返す。

 そう、俺に膝をつかせたのはコイツではなく、その横にいる神――YHVH――であって、決してノアではない。


「別に私がやった、と誇っている訳ではないですよ。私が主の手柄をとるような真似をするわけがないじゃないですか。」


 さも当然、といった様子でノアは俺の言葉を切り捨てる。


「トバル・カインよ。儂は非常に悲しいぞ。まさか我が子より刃を向けられるとは、な。儂の計画に気が付いたのなら、大人しく協力すれば良かったものを、まさか妨害に走るとは。」


 男とも女とも言えない容姿のYHVHが全く悲しそうではない表情と声色で語りかけてくる。


「う、るせぇ、俺の、親は、あ、んたじゃ、ねぇ……!」

「トバル・カインよ。儂は“誰か”を創ったのではない。“人間”を創ったのだ。そうである以上、汝が誰から生まれ落ちようとも、我が子には変わらんのだ。」


 それもそうか、と、妙に納得してしまう言葉を返される。力でも言葉でも負かされたようで、気分が悪い。


「トバル・カインよ。儂にはあまり時間がないのでな、話はここまでとする。次は一撃で葬り去り、その痛みから解放してやる故、許せ。」


 そう言うとYHVHは、右手を天に掲げ、攻撃に移る。

 次の瞬間、空が白み、雷が迫ってきた――――








「やれやれ。我の大切な息子を虐めるのは止めて貰いたいものだな。たとえそれが、我らが父であっても。」








 ――――が、それが俺に落ちることはなかった。


 突如として俺の前に現れた父上――レメク――がその雷を払ったからである。


「な、何故、何故貴方がここに居るのです……!?」


 ノアが驚きの表情と共に疑問の声を漏らす。


「ククッ、大層驚いているようだな、ノアよ。何せあそこまでして我を封じ込めようとしたのだ、その我がここに現れてはたまらんものよな?」


 父上は愉快そうに笑いながら言葉を返すが、その内容からは疑問に答えるつもりがないことが伺える。


「レメクよ。一応、聞いておく。汝も儂と事を構えるつもりか?」

「事を構えるか、だと?そりゃぁ、そうだろう。わざわざ我らが父が降りて来たというのに、我が戦わぬ訳がなかろう。なにせ、我の名はレメク。“神に敵対することに強き者”なのだからな。」


 然もありなん、といった様子で言葉を返す父上。

 YHVHと向かい合う父上を見て、俺は思わず笑みを溢す。とてつもなく遠い遥か未来から生まれ戻って来てからというもの、俺はこの状況を作り出すために粉骨砕身、遮二無二頑張ってきたのであり、その努力が漸く実を結んだのだから。


 これから始まる物語は、この状況に到るまでの俺の頑張りと、この状況から先はどうなっていくのかを記した、俺の回顧録だ。

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