80 友だち
彼がちょくちょく昼間のギルドに顔を出すようになって、私の毎日はなんだかずいぶん充実している。
やってることと言えば、変わり映えのないワンワンのところとクッキー作り、そして内職なんだけど、居心地の良いギルド内のマイルームでする内職はとても捗る。
あつし君がまるに慣れてくれたので、まるもたびたびギルドにお邪魔している。
夕方の散歩の回数も増えて、まるも益々ごきげんで元気。お散歩にはたまにあつし君が一緒することもあって、二人(一人と一匹)もずいぶん仲良くなったように見えた。
「友だちができただけで、こんなに活力が湧くなんて知らなかった」
と、ちょう子さんに言ったら、
「ななさん、最近ウキウキと楽しそうですもんねぇ」
なんて、呆れた顔をされてしまった。浮かれすぎなのかな?
だって不登校以来、初めての友だちだから仕方ないと思うの。
そう考えると、ちょう子さんも友だちって言ってもいいのかな。恩人だからもっと特別な枠になるのかな。もしかして、これが親友ってやつなのかなぁ。
「ななさん、心の声がダダ漏れですよ」
ちょう子さんがニヨニヨしていた。
ちょっぴり恥ずかしいけど、本心だから聞かれてもいいもんね。
私の仕事がたいして変わり映えしないのは、異世界が今、真冬だからという理由によるものだ。
街の外が雪に閉ざされているので、討伐(は、元々受ける気ないけど)、採取系を筆頭に外に出る仕事が大幅に減っている。
除雪される街中での仕事は様々あるみたいだけど、基本人ごみが苦手で他の人のいる職種も避けている私には、あまり新しい仕事は回ってこない。今のところ内職を受けるだけでも十分ギルドに貢献できているようなので、しばらくはこのままでもいいみたい。
春になれば、また孤児院にも通わせてもらうし、その頃には新しい仕事を見つけてもらってもいいかもしれない。
もしかしたら登録者が増えてるかもしれないし、状況に応じて考えていこう。無理はしないで、私は私のペースで進めばいい。
その反面、あつし君は少ない仕事の中で精力的に頑張っている。倉庫の片付けの仕事もやりつつ、新しい仕事にも積極的だった。
とはいえ、彼も「人がコワイ」を克服した訳ではないので仕事は偏ったりするけど、私よりえらいのは、彼はおじさんたちの中になら入れるってところだった。
若い人、特に女性のいる職場は、まだ避けているみたいだけど、気のいいおじさんの職人さん連中となら、多少腰が引けつつもなんとかやっていけるらしい。
彼が受ける仕事は、力仕事が多かった。
「ナマっているからね。体を鍛えるためにも頑張っているんだ」
って言ってた。でも、異世界の力自慢の人は格が違うんだって。何しろ魔力で体を強化したりできる人もいるらしくて、あつし君がいくら体を鍛えたとしても、比べものになるようなレベルでは到底ないらしい。
それでも、「穴を掘るお仕事」や「壁を壊すお仕事」、逆に「壁を作るお仕事」と短期間でいろいろなお仕事に挑戦していてすごいと思う。壁職人のおじさんたちには気に入られてるみたい。
「言っても雑用が多いからね。俺でもできる簡単なことしかやってないよ」
なんて言ってるけど、謙遜も甚だしいと思う。
「穴を掘るお仕事」では、鉱石掘りのお手伝いで、掘り出された鉱石を猫車で外へ運び出すという、確かに重労働だけど雑用と呼ばれる仕事をしていた。
でも、「壁を壊すお仕事」の時には、丘の中腹にあった壁を壊した先の地層の中に鉱石を見つけていた。未発見の鉱脈を発見したということで、すごく喜ばれていたけど、割とありふれた石英の鉱脈だったので、
「たいした発見じゃないよ。たまたま直前の仕事で目にしてたから気付いただけ」
なんて言っていた。
ところが、後日そこから少量とはいえ金が出たとかで、職人のおじさんたちからラッキーボーイとか呼ばれるようになった。本人はあだ名には辟易してたけど、臨時収入が増えて喜んでいた。
まあ、それで壁職人の親方に「お前は運がある」なんて気に入られちゃったんだけど。
次の現場、親方から指名依頼で受けた「壁を作るお仕事」では、子供の遊び場となる空き地の仕切り壁を作ったらしい。壁作りに関しては雑用だったけど、
「運が付くかもしれないから、お前が何か絵でも描いてくれ」
って、追加依頼で子供が見ても楽しめそうな絵を仕上げに描かされたって、照れたような困ったような顔をしてた。
後日、ちょう子さんに連れられて、現場をこっそり見学しに行ったんだけど、青を基調とした幻想的な天馬の絵や、赤や黄色に咲き誇る花畑の絵など、思わずみんなが足を止めて見惚れるような絵でびっくりしたよ。
これだけのことをして、雑用しかしてないなんて。そんなことないよねぇ?
お読みいただきありがとうございます。
とうとう最終章に突入しました。
完結まで駆け抜けますので、最後までお付き合いいただけましたら嬉しいです。
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