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犬をなでるだけの簡単なお仕事です  作者: maochoko
第七章 新たな訪問者
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72 私の部屋?




 翌日、ギルドに面談ブースが増えていた。


 いや、これは面談()()()なんだろうか?

 そこはすでにちょっとした小部屋と呼べる様相になっていて、クリーム色の壁紙と若草色の柔らかいカーペットが敷かれている。


 奥のスペースには棚と長机が設置され、そこには以前に事務所で使われていた魔道具の卓上コンロがのせられている。ご丁寧に水の魔道具まで用意されており、棚にはカップやティーポット、各種お茶の葉が並んでいる。ほぼ給湯室と言えるだろう。


 手前の小部屋部分には中央に大きめのテーブルが鎮座していて、そこに二脚の一人掛けソファのような立派な椅子があるのだが、対面に置かれた椅子は正面に向かい合っているのではなく、それぞれが右向きと左向きに設置されていた。


 さらには、その小部屋をちょうどテーブルの真ん中を横断して、手前と向こうで仕切れるようにカーテンがつけられている。


「ななさんは、その奥の椅子に座ってみて下さい」


 ちょう子さんに言われるがまま小部屋の中へ進み、カーテンを避けて奥の椅子に腰掛けてみる。

 肘掛けの付いた大きめの椅子はフカフカで包まれるようだ。


 ちょうど座った時に顔の向く壁には、なんとまるの写真が飾られていた。前にギルドでちょう子さんと一緒に撮ったものを私があげた写真。そのまるの部分を拡大して額に入れたようだ。


 私が腰掛けたのを確認したちょう子さんは、手前の椅子に座って、シャッとカーテンを閉める。


 二人の間は、薄手のオーガンジーのような柔らかなパステルグリーンの布で仕切られた。

 うっすらと向こう側にちょう子さんの姿形は見えるので動きはわかるけど、その表情まではわからない。もちろん目が合うこともない。


「どうですか? これなら少しは話しやすくないですか?」


 人見知り専用面談ブースってこと?

 お互いが違う方向を向くことで、一対一で顔を突き合わせる状況を回避して、さらにカーテンを引くことで存在感を薄くする。視線の先のまるの写真もリラックスできるようにとの心配りらしい。


 また、お茶やお菓子を用意しておけば、のんびりと寛ぎながら話せるのではないかと、後ろの簡易キッチンのようなものも設えてくれたようだ。


「お菓子はななさんにお願いしたいんですけどぉ……」


 いつもの上目遣い攻撃で、もじもじとおねだりしている。可愛いけど、驚きがまさってそれどころじゃない。


「これって……?」


「テーブルも大きいのを用意したので距離もいい感じに空きますし、それぞれのスペースも取れますから手仕事しながらでも話せるでしょ? さあ話しましょうっていう雰囲気じゃなくて、お茶を飲みながら、何か作業しながら、緩ーく話せるかなって考えたんです。

 ななさんが落ち着いて過ごせるように、このスペースは好きに飾ったりして構いませんよ。そのまるちゃんの写真可愛いでしょ? もっと増やしてもらっても、そうだ、お花とか飾ったり、音楽を流したりしてもいいかも。ななさん好みのお部屋にして下さい」


 ちょう子さんはニコニコと嬉しそうにはしゃぎながら、


「カーテンだと心許ないなら壁とかガラスで仕切っちゃってもいいんですけど、それだと懺悔室や刑務所の面会室みたいであまりにも仰々しいかな、とか思っちゃって。衝立の方がいいですかね?」


 なんて興奮気味に話し続ける。


 「結構いい感じのお部屋ができたと思いませんか? ななさんのお部屋だと思って自由に使って下さい」


 どや顔でまくし立てられても、戸惑いしかない。


「あの、確かにすごく良いお部屋だと思いますけど。私は寛げる感じですけど。……ギルドの一角をこんな私物みたいに、……いいんですか?」


「いいも何も、こちらからお願いしてるんですよ。職員である私ではなく、先にギルドを経験しているななさんにこそ話を聞きたい人って、これからもいると思うんですよ。そういう時に話を聞きやすいように、このスペースを使って欲しいんです。

 カウンセリングってほど大袈裟なものではなくて、経験者、先輩として、相談にのったり、愚痴を聞いたりしてくれる人って必要だと思うんですけど。あの彼の様子を見ても、それって話す方もつらそうだし、聞くななさんにも負担が大きいと感じて。

 だから、真剣な感じじゃなくて、ゆったりと、話したいことあったら聞くよって感じでやってみてもらえませんか? そのためにも、ななさんにこそ寛げる空間にしてもらいたいんです」


「っえええ…………!?」


 私には荷が重いというか。

 一番苦手なジャンルだし。

 全く自信ない……。

 すっごく心が拒否してる……。


「今度、彼が来た時、もし話を聞いて欲しそうだったら。その時だけでもここを使ってみてくれませんか?」


 先のことはともかく、彼の話は聞いてみたい。

 普通に話すよりは、ここの方が話しやすそうなのは否めない。


「ううう…………。と、とりあえず一回だけ。一回だけなら……やってみます」




 はい、また流されました。





お読みいただきありがとうございます。


明日は土曜日だけど2話更新できるかな。ちょっと疲れが出てますが、できるだけ頑張るつもりです。


感想、ブクマ、評価など、目に見える応援をいただけると、やる気向上につながります。よろしければポチッと応援よろしくお願いします。


読んで下さるかたがいるだけでも、大変ありがたいことなんですけどね。


いやいや、これではいかん!

弱気に負けずに頑張りますので、引き続きお楽しみいただけましたら嬉しいです。





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