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第33話 幕開け

ごめんなさい。

ストック切れっちゃった。

次週一回飛びます。

ワザとじゃないから本当に。

 ユナちゃんが誕生の儀をしている間、暇なのでアーディさんが俺達と遊んでくれている。


「そ~れ~」


 後ろを向いたアーディさんが尻尾で俺を持ち上げる。


「みぎ、みぎ、あ~、ひだり」


 今の俺はUFOキャッチャーのアームだ。


「ティア様が動かれると遊びになりませんよ」


 母さんはエイドさんに注意されるとしぶしぶ元の位置に戻った。


「した!」


 俺の掛け声と共に、ゆっくりと母さんへ下降していく。


ポスン


 足も使いがっしり抱きついた。


「うえ!」


 うおぉーー!(ふも~~!)母さんの軽い体をしっかり固定して、上昇していく。


「イラおばさん!!!」


 俺の掛け声と共に、ふたたびゆっくり動きだす。


 持っている母さんの重みが徐々に消えていく。どうやら、座っているイラ叔母さんの膝上に無事に置けたようだ。


「次は、ば~ちゃを持ち上げてください」


「おもいから、できない」


 婆ちゃんがショックを受けている(がんばれば、お婆ちゃんを持ち上げられるけど)俺1歳だから、しんどい。


「体重は、ふ、ふえていな、いな……いな――」


 お腹を摘まんで自分の世界に入ってしまったようだ。しばらく停止すると、爺ちゃんを相手に無心でスパーリングし始めた。自身の周囲に負荷をかけているみたいで、光が屈折して、音が届くのが遅くなっている(お爺ちゃんがこちらを向いて助けを求めているよ)


 俺も随分と爺ちゃんのことがわかるようになったものだ。知らない人が見たら野盗が獲物を求めているようにしか見えないはず(野盗って!? せめて肉食動物が獲物を求めているぐらいにしないと)『どっちもかなりヒドイよ~』


 爺ちゃんの表情がさらに壊れる。自分が蒔いた種は自分で刈らないとな。


「ば~ちゃは、かるいよ。メア、がんばるからじーっとして」


 しかし、俺の声はまるで届いていない。婆ちゃんは乙女の涙(大量の汗)を流している(日頃の鬱憤(うっぷん)が溜まっているのかな)爺ちゃんが婆ちゃんをしばらく睨んでいると、何かを察して怒りだした。すると、オホホと笑いながら婆ちゃんはそれでも続行している。


 もう、俺は関係ないな(関係ないない~)『お婆ちゃんの顔に一発入ったわよ~』メア♪し~らないっと♪


「いつまで乗っているのです? はやくどきなさい」


「イラっていいにおいがするね」


「な、まぁ! と、とうぜんですわ。あなたと違って、王家として恥ずかしくないように振る舞っていますもの」


 イラ叔母さんは、母さんより甘ったるい匂いがするかな(お母さんの匂いの方がスキ)それはきっと本能だ『赤ちゃんとして~、それとも~、ロリコンとして~』もちろん、どっちもだ(とうぜんね)『お、おう~』


 アーディさんが尻尾を(ほど)いてくれたので、母さんに抱きつくのをやめて床に足を着ける。イラ叔母さんは扇子で顔を隠して、俺の顔をチラ見した。


「親子というより、姉妹ですわね」


 俺もそう思う(わたしもそう思う)『わたしもそう思う~』ん?(認めたわね)ノーカン、ノーカン!


「おやこだよ。ねぇメアちゃん~」


 イラ叔母さんから降りた母さんが、同意を求めてきた。後ろではラス叔父さんがハッスルを止めようとしている。


「ママは、メアのママ~」


 チノがヘッドダイビングで母さんに抱き着くと、太陽のようにまぶしく笑ってくれる。そして少し悪い笑みに変わり、イラ叔母さんの方に勝ち誇った態度で向きなおった。イラ叔母さんは呆れて、扇子でコツンと母さんの額を小突く。


 が、そんなものをムシして俺に殺人ハグをしてきた(体が勝手に神技を使ってしまう)『無意識に発動している~、なんて恐ろしい子~』


「きゃあああぁぁーー!!」


 アーディさんの尻尾が巻き添えになったみたいで、涙目になって力なく崩れてしまった。


「どうしたアーディ!」


 ジエンさんがユナちゃんを守りながら走ってくる。が、みんなを見て頭を掻き、ため息を吐いた。


 母さんはごめんなさいして、お詫びの品にアーディさんから貰ったグミを鼠印の袋から取り出して食べさせる。アーディさんは喜ぶとお返しとばかりに、母さんとは別の鼠印の袋からグミを口に移した。


「あ!」「あ!」


 エイドさんがにこやかに2人に近寄る。その姿は魔神、人はなんと、か弱いものか。


 説教寸前の2人はユナちゃんを見つけると、大急ぎで移動しだした。


「誕生の儀はおわったのですね。早く見たいです。ね? ティア様」

「ユナちゃんはどれだけすごいのかな? みせて、みせて」


「見て驚きなさい。わたくしの娘はティアの娘には負けませんことよ」


「あなた、ラス、何へばっているのですか。ユナちゃんのステータスですよ」

「ぜぇ~はぁ~、ぜぇ~はぁ~」「す~は~、す~は~」


 ユナちゃんの周りにみんな集まっている。


「行きましょうか?」


「あい!」


 エイドさんに手を繋がれ歩いていった。




……




「これがあたしのステータス!」


 ユナちゃんが紙を広げた。




ステータス

ユナ ラブピース

ラブピース王国暦4771年1月1日生

年齢 1歳  性別 女

種族 王族  職業 なし


HP 122

MP 3830

TP 150


攻撃力 212

防御力 185

魔法力 64<封印中>

抵抗力 45

器用さ 47

素早さ 113




 あれ? 文字がわからない(自分のステータスしか読めないのかな)『そうだよ~』


 しかし俺のステータスより、書かれている量がずいぶんと少ないな。


「ユナちゃん? スキルが書かれていませんよ」


 イラ叔母さんが不思議そうな顔をして、ユナちゃんに聞いている。


「それが、スキルを書かれる前に、ユナ様が祭壇から紙をお取りになりまして」


 ジエンさんが代わりに答えた。


「そんなことをしてはいけない。なぜ、取ってしまったか言いなさい!!」


 ラス叔父さんが少し声を(あら)らげている。


「おかあ、さまが、かなしむと、おもっ、たから」


 (うつむ)いて肩を震わせながら、ユナちゃんは返答した。


「よかれと思っての行動ですわ。そのくらいで許してあげてください」


「しかし――」


「あ~ら~、わたくしのユナちゃんは、ティアの娘より強いですわ」


 イラ叔母さんは上機嫌で、母さんの周りを歩きながら扇子をあおいでいる。


「ムッキー! メアちゃんの方が、MP高いし! 器用さも高いし! かわいい!!」


 母さんが猿のようにキーキー言っている。文字が読めないのでエイドさんに頼んで読んでもらった。




……




 つよい(すごい)


 これは典型的な物理アタッカーのステータス、そして性別は女の子ではないのか(かわいいのに、なんでかな?)


「メア様の方が、かわいいからです」


 顔に文字でも表示されているのか?(わたしはイスナーちゃんだった!?)『そんな加護が欲しいの~? 1年後なら授けられるよ~』いらん!


 エイドさんは、俺の表情を見て誇らしげだ。アーディさんが俺の心を読もうとじっと見ている。そうそう読まれてたまるか。ポーカーフェイス、ポーカーフェイス。


 職業はなしだっけ? なし、ナシ、懐かしいな(ナシちゃん♪)『ナシちゃん~♪』ん~? 今はメアの方が落ち着くな(わたしの名前、チノからナシに変えようかな。な~んちゃって)ナシ……やっぱりチノの方が女の子らしいからチノでお願いします。


 どこまで考えたっけ?(だいたい終わりじゃない。スキルもないし)どんなスキルを習得しているのか気になるな。


「メア様もスキルが気になりますか?」


 アーディさんが俺の心を見透かしている。やっぱり俺の顔には文字が書いてあるのでは?


「文字は書かれていませんよ」


「なんでわかるの?」


「それは――」


 エイドさんがアーディさんの口を塞いでいる(なにか秘密があるのね)教えてくれそうにはなさそうだけどな『口も鼻も塞がれて~、あたふたしてるよ~』俺はエイドさんにダメダメした。




バァン!


 誕生の間の扉が勢いよく開けられる。


「あら? もう見つかりました? 力を弱くし過ぎてしまいました」


「陛下方!? なぜこのような場所に!」

「違いましたか?」


 今まで見たことがない兵士さんだ。歴戦の勇なのか鎧には勲章が並んでいる。


「団長!! 報告がございます」


 兵士さんがラス叔父さんに耳打ちしている。すると表情が段々険しくなった。


「対処は済ませているな?」


「ハッ!! 聖騎士30が村に向かっております」


 聖騎士は、確か騎士団の精鋭だっけ?(女神ラヴィの加護を受けたエリートらしいわね)


「≪神々の黄昏(ラグナロク)≫が現れたようです」


「なんと!」「そんな!」「嘘!」


 ≪神々の黄昏(ラグナロク)≫って、確か異界の魔王の軍勢だよな『そんな、ありえない! 後5年は攻めてこれないはず。そんなことをしたら、ただでは済まないのに――』(イスナーちゃん、口調が今までと違う)


「私は現場に向かいます。それと、これを――」


 ラス叔父さんが俺にピンク色の宝石が付いた腕輪をはめてくれる。そして、ユナちゃんに赤い宝石の付いた腕輪をはめて、頭を撫でた『ミャワの奴、なにを考えて――』


「その腕輪は、ユナ達を守る結界が込められて、離れていても居場所がわかる魔導具。外さないようにしなさい」


 ラス叔父さんは父親そのものの優しい表情でユナちゃんを抱きしめ、イラ叔母さんの手の甲に口づけをした(イラ叔母さんが恋する乙女になっているね)『ラヴィ、ラヴィ!! どうなっているの――』


「父上、母上どうか、娘達をお願いします」


「ユナちゃん達は、儂等にまかせよ」

「私達が≪神々の黄昏(ラグナロク)()()に遅れはとりません」


「アーディ。君は≪神々の黄昏(ラグナロク)≫に対抗できない、この短剣があればきっと力になるはず」


 アーディさんは女神ラヴィを模った短剣を受け取り、メイド服にそれを忍ばせた『わたしに言われても知らない――』


「その短剣は、すべての障害を取り除くことができる。きっと君を導いてくれるだろう」


 マントを(ひるがえ)して俺の所に走ってきた。


「メア姫、どうかお体を大切に」


 そう言って跪いて、俺の手を持ち上げると、手の甲に口づけをした(まるで儀式みたい)


「あっ、はい?」


 立ち上がると一礼して、母さんに歩み寄ると頭をわしゃわしゃして、誕生の間を後にしようとする。母さんが露骨に不機嫌そうだ『え? まさか本気で?――』


「ラス、待って」


「女神の祝福たる勝利の光よ。汝に宿りて全てを覚ませ」


「≪女神の抱擁(フィールオブニケ)≫」


 赤き光が集まり、人の形となってラス叔父さんに触れる。どうやらイラ叔母さんが魔法をかけたみたいだ。


「おまけですわ」


 2人は熱いキスを交わしている(リア充行為は死亡フラグ。やめさせよう)そうだな、これは嫉妬ではない!!!『でも、その通りなら――』


「オ、オッホン!!!」


 爺ちゃんがあからさまな咳払いをして、さっさと行くように促す。チッ!(チッ!)俺は矛を収める事にした。


 兵士さんと共に廊下の窓から飛び降りて≪神々の黄昏(ラグナロク)≫を倒しにいったみたいだ(ここって結構高いよね?)ここは異世界だ。きっと宇宙から飛来しても無傷でピンピンしている人が居ても不思議ではない(それはさすがに……ありえるわ)


 そういえばイスナーさっきからだんまりだな(口調が変わって精神年齢が上がっちゃたから、下げてるんじゃない?)律儀だな『え? 何言っているの?』


「メア!」


 ユナちゃんが俺の手を握る。


「あたしがメアをまもるから、いいこにするのよ!」


 手を握ってくれるなんて、これはデレ期? 俺の時代が来たーー!(わたしの百合百合生活ーー!)うひょーー!(ふぉーー!)『メアちゃん、聞いて――』


「――きいてる?」


「え? うんうん!」


「はぁ~、ダメだ。こいつ」


 ユナちゃんと手を握ると、ものすごく強くなった気がする(気のせいではないわ。ロリコンならば当然、ロリのために強くなれる)そうだな『(第二位神ミャムが――)』


「イラは、私が守って上げる。今はお荷物だもんねー」


「お義父様達だけで、ティアは必要ありませんわ」


「む! べぇー!!!」


「皆様、はやく謁見の間に向かいましょう」


「あそこには防衛装置が何重にも設置してある。メアちゃん達も怖がる必要はない」


 俺達は謁見の間に急いで帰ることにした。でも『(え? なんで声が――)』


「あなた、もしかして?」


「……イレ」


 俺がさっきからずっともじもじしているのがバレてしまった。そんな目で見るな! 俺1歳だぞ。漏らさないだけスゴイんだぞ! みんな顔を(ほころ)ばせるな!『(なんで! メアちゃん! チノちゃん! おねがい!!)』


 『(聞こえてぇーー!!!)』




……




 この服、トイレしにくい。女って、馬鹿じゃないか? もっと機能性を上げるべきだ(すっぽんぽんにはなりやすいからいいじゃない。ほら、あそこに、はやく服をかけて、ここまできて漏らすなんてありえないからね)


 しかし、無駄に広いトイレだ。俺達専用に新しく作ったなんて孫に甘々だな(使って無い部屋がいっぱいある、って言っていたから。紙はあそこにあるよ)おう。まあ、どうせ一日もかからずに作れるんだ(ちゃんと優しく拭いてよね)チノが代わりにやれば?


 (もう、女の子はデリケートなのです。ちゃんとお拭きになられないといけませんよ?)エイドさんのマネ? 全然似てない。とっとと済ませて合流しよう。アーディさんが待ってる。ああ、そのレバーで水が流れるはず(これ?)


 (ちゃんと手を洗って~、服を着て――)


「ふふふ~♪」


 リボンが右にズレてる(こう?)あと、フリルに折れ目がついている(ここね。よし、スマイル~)うむ、かわいい! 鏡に写る俺は、実にあどけない笑顔だ……。笑顔の練習でもしようかな(年相応だからいいじゃない)何歳?(もちろん1歳!)絶対に練習してやる!


「ごめんなさい。おわった」


 トイレから出ると、アーディさん1人が待ってくれている。俺に気づいていないのか後ろを向いたままだ。


「アーディ? おわったよ!」


「メ……ア……さ」


 声が震えている。


「ま……に……げて」


 こちらを向いたアーディさんは目に涙を浮かべている。


「にげて!!!」


 アーディさんが抱きついてきた(手に持っていたのって)


 片手でがっちり捕まえられて――(ウソ!!)




 え? 胸のあたりが生暖かい(短剣!!!)




 アーディさんは……、俺を、突き飛ば、して……、後ろ、歩き……してる?(力が……はいらな……)




 なん、だか、あーでぃさ……、かお、よご……れ? ふく、も、よ……ごれ、て……るよ?(め……が……かす……んで)




「アーッハッハッハァ!!!」




 わら……、って、……る?(な……ん……で……)




「ァ――! ガァ!! ァ――!」




 こ…………え…………で――(ど…………うし…………て――)




 自分の胸を見ると、綺麗な赤色に染まっていく、ドレスが目にはいった。


 ああ、そうか。俺は刺されたのか――。




 ねむい――。




イベントクリア報しゅう

げっとすき

【――

次話が1章の最後にします。

できるかな?

期待しないでね。

創作日記:あへ~

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