第29話 誕生日プレゼント
「ライースです」
少年の声が部屋に届いてくる。婆ちゃんが目配せをすると、エイドさんが扉を開けにいった。
「失礼します。これは、これはレーヌ様いつもたいへん美しゅうございます」
ショタが深々とお辞儀をして、歩幅を目一杯大きくして歩いてきた。ターバンから白髪がちょっと漏れ出て、大人用のアラビア風の衣装を着ている(ぶかぶかで足がもつれたりしないのかな)
そして、大量の鞄を装備して息苦しそうだ。お辞儀の時だけは品のある仕草だったな(でもお辞儀したら中身ががちゃがちゃ鳴ってうるさかったけどね)
「まあ、お世辞でも嬉しいですわ――」
婆ちゃんはカーテシーをしてライースと談笑している。ライースは婆ちゃんより小さく母さんより少し大きいぐらいの背なので小人だろう。耳もちょっと尖っているし頬が赤いしな(体に比べてターバンに靴も大きすぎない)
「ライース、こんにちは!」
「ティア様、これは、また一段と可愛くなられましたな――」
カーテシーをした母さんと、お辞儀をしたライースさんが楽しく話している。ターバンのサイズが合ってないから、よくズレを直しているけど、こだわりでもあるのかな。
会話を終えると大きなショルダーバッグからアメを10粒ぐらいだして、母さんが受け取った(すぐに全部食べちゃったね)むにゃむにゃ言って、ライースさんが困惑してる。
エイドさんが一瞬手を緑色に光らせると、袋を母さんに渡した(お母さんは1粒だけ口に入れて、残りを袋に入れた後エイドさんに渡さ――ないで手に持ってうれしそう)エイドさんが溜息をついた。
「本日の主役のメア様は、ベビーベッドで寝ているのですか」
ライースさんは歩きながら俺を探しているようだ。
「メア様なら、そこに居ますよ」
エイドさんがしゃがむと、俺と目が合う(お母さんがこっちに向かって走ってきてる)
「ライースは何もしないですよ。そんな怖がらなくても、ば~ちゃを信じて」
婆ちゃんがドレスのスカ-トを上げると、母さんが見つけた!とさらに大きく上げた。中で腹ばいしながら隠れていた俺をライースが見てくる。
違うんだ。母さん別にかくれんぼしていたわけではないんだ。自分の身長の何倍もある人を見て、平気な大人はいないと思うんだ。だから俺はかくれんぼしていたわけではない。
みんなしてそんな目で見ないでくれ(赤ちゃんからしたら、みんな巨人だから知らない人は本当に怖いんだから)
「うんしょ。こ、こにゃちは」
俺は立ち上がってカーテシーをした(完璧よメアちゃん。お婆ちゃんとの特訓とわたしの指導の賜物ね)俺なにしているんだろう。
「…………」
ライースさんが固まっているスキに母さんへ逃げた。
「さすがは、ラブピース王家の血筋ですネ。もう喋れるし走れるなんて凄いですネ」
ちょっと片言になって、俺を品定めするように見ている。エイドさんがライースさんをリラックスさせるためにハーブティーを入れて渡した。俺もその匂いで少し落ち着く(お母さんに抱き着くのが、一番落ち着くけどね)うん。
ライースさんがハ-ブティーを飲み終え喋り出した。
「私にもメア様と同じ日に生まれた娘がいまして、先日歩けるようになって、まだ喋る――」
ふぁあ!? ちょっと待て! 俺と同じ日に生まれた、その子って白髪小人の【運命の子】か?(わたしより小さい子よね)
「ちょのこ、じょんにゃこ? にぇえ、じょんにゃこ!」
チノが母さんから飛び出て、ライースさんの前でぴょんぴょんとジャンプを繰り返している。ライースさんと顔の位置が同じになる度に驚かれた。
「めにょいろは、きゃみは、ちゅぞくは、かわい、うっ!」
うしろからエイドさんに抱き着かれてジャンプを中断させられた。はしたないですよと言われて母さんに向けられる(お母さんはこそっとアメを全部口に入れていたみたい)
「むにゃむにゃ、むにゃむにゃ、むにゃ!」
何を言っているかわかんないが、めっ!のポーズをしている(お母さんは注意しているつもりかな)エイドさんの手が緑色に光っているので、お尻ペンペンの刑になるんだろう、母さんが(スカートで口元を拭き、口をすぼめて食べてないアピールしいる)
(お母さんの下着見えたよね)不可抗力です。ごめんなさい。
「淡藤色の、……うすく淡い青紫色――えっとですね。うすくて白い青っぽい紫。丁度このような色の目です」
ライースさんが俺達のやり取りをなかったことにしてくれて、色のついた布を見せてくれた。鞄の中にはなんでも入っているのかな。
エイドさんが俺を降ろすと、むにゃむにゃ嫌がる母さんを連れて部屋を出ていった(お婆ちゃんがイスに座って笑顔で見送っている。合掌)
「私と同じ白色の髪なのですよ~。もう! かわいくって、かわいくって~♪」
「……コホン!」
この人図太いな。またなかったことにしている。それに先程の顔と態度は親バカだ。小人の頬が赤い特徴も相まって真っ赤かになっている。
「誕生の儀の時に正式にわかると思いますが、種族は妻も小人ですから、小人でしょう」
誕生の儀ってなんだ『説明しよう~、前の世界での~、身体測定みたいなものよ~。誕生日に~、国に置いてある~、アーティファクトで~、測るの~』
ふ~ん。イスナー今日も忙しいのか?(わたし達にかまって欲しいな~)『ごめんね~。今立て込んでいるから~。また魔力と神気~、もらっていくね~』バイバイ~(がんばってね~)『うん~!』
「あいちゃい!」
チノが体をくねくねさせておねだりしている。
「そうですねぇ。う~む。ミクがもう少し大きくなったら、お会いいたしましょう」
「やっちゃあ!!!」
ミクちゃんという名前か。これで2人目の【運命の子】と会う約束をしたな(どんな子かな)
ガチャ
ハンカチで涙を拭いている母さんが帰ってきた。アメは全部食べたままみたいだけど。
「……そちらのテーブルの上に、商品をお出しするので少しお待ちください」
俺は暇なので、遊び場に行こうと――
母さんが急に抱き着いてきて、エイドさんへの愚痴を言ってくる。チノが口に指を当てしー、と言って怒れる(違うは、無表情よ)エイドさんを指さした。ありがとう、と言って俺の手を握って上下に激しく動かした後に、殺人ハグをしてきたので神技≪無敵≫を――
あぁ~~! イスナーに神気を渡したんだ(メアちゃん~)あ、ごめんねチノお姉ちゃん。メア感覚の共有切っちゃった。てへ☆!(メアちゃんーー!)
……
…………
テーブルの上にはぬいぐるみや宝石、可愛らしい小物の類など、多種多様な商品や俺が置かれている。俺は男だからどれも欲しくない。なので、チノに選んでもらっている。
「どれがいいですか? これなんてチ、――メアちゃんに似合うと思いますよ」
婆ちゃんが宝石の付いたネックレスを俺の首にかけた。エイドさんが姿見を出して全体を見せてくれる。そこには、金髪碧眼のワンピースを着た赤ちゃんがゆうゆうとポーズを決めている。誰だお前……俺だった。
「大変可愛い~で~す~♪。これはどうですか、これも、あれも――」
エイドさんが2人いるように見えるけど幻覚だな。姿見もっているのと、プレゼントを選んでいるのがいるなんて幻だ。成金みたいに宝石でじゃらじゃらになってチノがげんなりしている。
「もういいにょ」
「そう、ですか?」
エイドさんがちょっと口を尖らせながら、宝石を元に戻している。そのそばでイスに座っている母さんがずっと1つのぬいぐるみを見ている。
「ママ、これ、ほちいの?」
「うん」
「にゃあ、これにちゅる」
チノが子豚のぬいぐるみを持って母さんに渡した。
「ダメですよ。ちゃんとメアちゃんが欲しい物にしないと」
そう言いながら婆ちゃんはライースさんからぬいぐるみを1つ購入したみたいだ。母さんは喜んでベッドのぬいぐるみ達に新しい家族を紹介している(また変な名前なのかな?)ぶ王とかそんな名前だろう。
けっきょくどれがいいんだ?(う~ん、わたし達0歳だから宝石って、似合わないと思うの)身も蓋もないことを。なあチノ? 俺ずっと気になっているものがあるんだけど(どれ?)
俺は小さな透明の原石を手に取った。
「ほほ~う、これは、これはメア様は実用的な物をご所望のようですね」
ライースは背中の鞄から、大きな透明の原石を取り出し、見せてくれた。
「この石は魔法石と言って、使わなかった魔力を貯めておけるもので、ただ身に着けているだけで効果を発揮します」
外付けの魔力タンクみたいなものか、魔法はまだ教えてくれないから、あまり意味がないかな。
「それと、持ち主の魔力によって特殊な性質を持ちます。例えば形が変わったり、大きくなったり、増えたり、などですかね」
「この世界に生きている人は、1つは身に着けていますよ。メイドの私達はここに身に着けています」
エイドさんがエプロンのポケットから緑色の魔法石を見せてくれた。婆ちゃんは頭のティアラに金色、母さんは頭のデカリボンに青色、ライースさんはターバンの中から茶色とそれぞれ見せてくれた(みんな形もバラバラね。)
「メアこれがいいにゃ」
「これでよろしいですか?」
ライースさんが婆ちゃんを見て、承諾を待っている。婆ちゃんは肩を落としていいですよと言うと、妙に見覚えのあるパジャマをついでに購入したようだ(現実にもあったんだ)
エイドさんがお金のやり取りをしている間に俺は母さんのところに向かった。
「ママ、にゃにしちぇるにょ」
母さんがバルコニーに移動しようとしている。
「ママね。お仕事しようかなって、そうだメアちゃん。私がお仕事するところ見る?」
母さんって仕事してたのか!?(マスコットじゃなかったのね)
俺がうなずくと、得意げに両腕をぐるぐる回している(儀式?)ガッツポーズをすると、両目をつむったウインクもどきをした。
「ちょっとまって」
スキップで部屋に戻る母さんと入れ違いに、エイドさん達がバルコニーに来た。
「メア様、私はこれにて失礼させてもらいます。次に来るときにはミクとも仲良くお願いいたします」
「あい! ちゃのしみにまっちぇる」
ライースさんがお辞儀するのと同時に、俺もカーテシーをした。ライースさんと婆ちゃんが一緒に部屋の外にでていくと。
「エイド~! エイド~!」
部屋の中をひっくり返している母さんが叫んでいる。エイドさんが急いで部屋に戻っていった。
……
「じゃーん!」
母さんが自分と同じくらいの高さの杖を持っている。木の杖で先端に宝石があり、いかにも魔法使いが使いますって感じだ。母さんにはちょっと似合っていない、見習いが背伸びしているようにしか見えない。
「いいですかティア。絶対にやり過ぎないでくださいね! わかりましたか? わ・か・り・ま・し・た・か!!」
「だいじょぶ、だいじょぶ~。メアちゃんあそこみていてね」
母さんが指さしたところには、小さな湖がぽつんとあるだけだ。
「ふぅ~」
小さな湖に杖の先端を向けると、青色の光が集まりだした。
「我に水の恩恵を与えたまえ」
(あれ? 魔法使うのに詠唱なんて初めてじゃない)そうだなぁ!!! やっぱり詠唱がない魔法なんて、魔法じゃないっっ!!! 詠唱は男のロマンだああ!!! 母さんカッコイイ♪!!!(テンションおかしいよ)
母さんからも青色の光が溢れ出て圧縮された光が太陽のように輝いている。
「水魔法≪生活用水≫」
杖を掲げると圧縮された光がポーンと小さい湖に飛んで行った。
母は「水よあれ」と言われた。すると水があった。母はその水を見て、良しとされた。
――ラブピース王国暦4771年11月23日
――メア ラブピース
(メアちゃん何が起きたの?)海ができました(う、み?)はい、海です(大空の下の水?)
「ふっふ~ん。どう、メアちゃん私すごいでしょう」
母さんはドヤっている。
「ティ~ア~ア゛~!」
エイドさんが高速で母さんのお尻を叩いている。母さんは大きな悲鳴をあげながら泣いた。
「う゛わ゛~ん゛! ごうげぎま゛ぼうじゃない゛も゛~ん゛」
へ~え~。あれで攻撃魔法じゃないのか~。そ~か~(ラブピース王国、数個分の水ができたのに、あれで手加減したのね~)
「それぐらいで、勘弁してあげてください」
「おがあ゛ざま」
母さんが婆ちゃんによしよしされて、泣き止んだ。
「ティア様は、この国の水の供給を、1人で担っているのです」
エイドさんが俺に説明してくれる。そうか、あの海を見れば納得してしまう。
「そして、ああ見えても、この世界で一番の魔法使いなのです」
(これが普通だったら、どうしようかと思ったけど)母さんてそんなに凄い人だったんだ。婆ちゃんからアメをもらって嬉しそうにしている人がね~。
「すごい?」
母さんが頭をなでやすいようにヘッドスライディングして、俺を見つめている。
「ちゅご~い」
望みどうりにしてあげると、エイドさんがあきれている。
「にひひ~」
母さんがスキップして部屋に杖を返しにいったみたいだ。でもあれ完全に環境破壊だよな(……そうね)
「メア様、そんな悲しい顔をされないでください。生き物は殺していませんよ」
「……ん?」
「女神のブローチの効果で生き物は殺せませんから」
どこからか双眼鏡みたいな物をだして、渡されたので海を見てみた。陸地の方には動物が集まりお互いに助け合って避難している。鳥達が空を飛んで、逃げ遅れを陸に放り投げていって、植物も海を漂っている魚が陸地に運んでいる。なんだろう物凄く慣れている気がする。
(ノアの大洪水ダー)ソウダネ
婆ちゃんが母さんを肩車して楽しそうにはしゃいでいる。母さんもきゃっきゃ、きゃっきゃとはしゃいでいる。
…………(…………)
エイドさんが遠い目で、俺を真顔で見つめる(ちょっとこわい)しゃがんで両肩を掴まれた。
「ティア様は別名、無垢なる拷問者と呼ばれています。気をつけてくださいね」
物騒すぎる別名だ。
そういえば、エイドさんが水の玉で、苦しみもがいていたのを思いだした。
俺は母さんを本気で怒らせてはいけないと、
心に固く誓った。
イベントクリア報酬
ゲットスキル
【怖がり+】 ⇒ 【怖がり++】
メアの身長の2倍くらいがライース 自分の身長の2倍……こわい
補正 回避率+1%UP <new>素早さ+5 抵抗力+1
【ハイハイ・幼EX】
お婆ちゃんの移動に合わせて付かず離れず 下着は見てないから
補正 なし
【歩行・幼SP】
走れる(この世界基準)
補正 なし
ティア
【甘党+】 ⇒ 【甘党++】
あまいものが、だ~いスキ!!!
補正 HP+3 <new>魔法力+5
【無垢なる拷問者++】 ⇒ 【無垢なる拷問者SP】
苦しいけど死ねない 死ねないから苦しい? 恐ろしい
補正 クリティカル時ダメージ50%UP <new>クリティカル時、相手の防御力抵抗力30%無視
ゲットアイテム
≪形見の女神のブローチ≫ ⇒ ≪形見の女神ラヴィのブローチ≫
女神ラヴィの加護で生き物を殺せない わたしも加護を付加したのに
効果 神気+5 <new>HPを0にできない
創作日記:2人目の情報だしたぞ~。
もっと前からだしていたけど。
この世界での種族についてももっと小出しにしとけばよかった。
姫様っぽい(敬語)
メイドっぽい(敬語)
商人っぽい(敬語)
敬語~、敬語~、敬語キャラは次に出しても、ですますにとどめておこう。