表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第六章 新たな仲間
73/201

想い人、再び…

 一体相手は何人いるのか。少なくとも三人の気配は感じ取れる。

 残る敵は激しく降り注ぐ雨を諸共せず俊敏さを増していきアリシアを混乱させた。

 襲い掛かる一人を交わそうと大きく足を踏み出した時だった。泥濘に足を取られて体勢を崩した。

 その隙を見逃さず木の上から剣を振り上げて落下してくる男がいた。

 これまでか……と、身動きできないアリシアの目の前を白い物体が駆け抜ける。

「お前は……!?」

 その正体はアリシアの白馬だった。器用に体をくねらせて後ろ足で敵を蹴り上げる姿にアリシアの瞳から涙が溢れて視界が歪んだ。

 更に後方から蹄の音がこちらへ近づいてくる。敵か味方かは不明だが背格好からどうやら男のようだ。


 突進してくるシオンの馬を跳躍で回避しようとする敵の足をすれ違いざまに捕えて地面に叩きつけた。鈍い音と共に頭部が原形を留めない程に潰れる荒技は彼の怪力と常人離れた瞬発力が成せるものだ。

 この先で戦っている剣士の性別すら判別出来ないが、白馬が片時も傍を離れない相手といったらこの世に独りしかいない。

 

 息が荒いアリシアは前方に立っている人物を凝視した。その者の周囲には敵の死体が転がっている。

「あなたは一体……?」

 恋焦がれていた想い人の声にシオンは口を開いた。

「……アリシアか」

 稲光で浮き上がった互いの姿に二人は愕然とする。

 漆黒の瞳は大きく見開き、ブランデー色の瞳は優しくそれに応える。

「シオン?」

「アリシア!!」

 どちらともなく駆け寄り二人は強く抱き合った。

 雨で濡れた服を通して感じるアリシアの体温で生きていることを確信して更に力強く抱き締める。

「無事でよかった」

 彼の厚い胸に顔を埋めて嗚咽するアリシアの髪を優しく撫でながら囁いた。

 彼女は何度も頷いて溢れる感情に身を任せて泣き続けた。


 アリシアの無事を祈っていたフィリカだが、辺りに静寂が戻ると幌から降りて戦いがあったであろう場所に泥濘と水溜りに足を取られながら慎重に歩いて行く。

 しばらくして会話らしき声の方へ行ってみると、長身の剣士と抱き合っているアリシアを見つけた。

 フィリカはその光景に彼がアリシアが最も再会を欲っしていた『シオン』だと直感で知った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ