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剣と愛の果てに  作者: 芳賀さこ
第六章 新たな仲間
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炎に消された追憶

 あの事件からアリシアは片時もフィリカの傍から離れない。

 この日もフィリカが街へ買い物へ行きたいと言うので一緒に市場へ向かい暫くしてからだった。

「火事だ!! 村外れの森が燃えているぞ!!」

 人々の声にアリシアははっとした。

「まさか!?」

 煙が見える方向から確信した彼女は馬に跨りフィリカに腕を差し延べる。

「乗って!!」

「どうしたの?」

 いつもの穏やかな表情ではなく血相を変えたアリシアにたじろいた。

「いいから!!」

 強引にフィリカの細い腕を掴み引き揚げて自身の後ろへ乗せると一目散に森へ向かった。


 風の如く駆け抜ける愛馬の速度も今のアリシアにはもどかしく感じる。そのくらい自身が導き出した考えに不安が募り、やがて辿り着いき二人が目の当たりにした光景に絶句した。

「……家が燃えている」

 フィリカが立ち退きに応じないのなら住む家を失くせばいい。そうすれば、土地も彼女の一挙に手に入るとブラウニ父子の暴挙にアリシアは拳を固く握る。

「おじいちゃんの家が!!」

 燃え盛る炎に身を投げ出したフィリカを追ってアリシアも飛び込んだ。

 煙が充満して視界が悪いなか、フィリカは必死に貴重な薬草や資料、そしてシダとの思い出をかき集める。

 だが、いつ崩れ落ちるか分からない状況に彼女に残された時間はあまりにも少な過ぎた。

「フィリカ、早く逃げて!!」

 なるべく煙を吸わないように口を手で押さえたアリシアが叫ぶ。

「だって、だって……」

 尚も奥へ進もうとするフィリカの腕を掴んで外へと連れて行ったが、途中でアリシアは机の上に物を素早く手に取った。

 間一髪、二人が飛び出した直後に家が崩れ落ちた。

 その様子になす術もないアリシアは悔しかった。それ以上にフィリカは絶望感に苛まれているに違いない。

「私に力があれば……」

 フィリカの悲痛な呟きにアリシアは目を見開いて振り向いた。母イルセの死を目の前で見ているだけだったあのラルーンでの想いがフィリカの想いと重なる。

 また救えなかったわ、シオン……。

 アリシアは唇を噛み締めて自責を怒りに変える。

「大人しくセイジロさんに従っておけばよかったものを」 

 傷心の二人に感情を逆撫でする男の声にアリシアは鋭く険しい視線を向ける。

「あんた達の仕業ね!! よくも!!」

 男達に呪術を使おうとするフィリカをアリシアは手で制した。

「だったらどうする……」

 男の言葉は最後まで続かなかった。

 アリシアの剣が縦一文字に振り下ろされると男は血しぶきを上げて絶命したのだ。

「彼等のアジトは何処?」

 振り向いたアリシアの姿にフィリカは愕然とした。

 白い肌を返り血で染めて鋭いブランデー色の眼光で見据える彼女はまさしく剣士アリシアだ。

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