誕生日プレゼント
全身打撲の傷も癒えて回復したアリシアはフィリカと市場へ来ていた。
その姿は、二人の関係を知らない者が見たら血の繋がった姉妹と勘違いするほど微笑ましいものだ。
フィリカが雑貨屋で買い物をしている間に店内を見渡したアリシアはある物を見つけると早速買った。
やがて、買い物袋を胸に抱えたフィリカが店を出たところを呼び止める。
「ささやかだけど、助けてくれたお礼よ」
先程購入した緑のリボンを彼女のツインテールに結んでやると蜂蜜色の髪によく映えた。
思い掛けない贈り物に菫色の大きな瞳が潤む。
「ありがとう……」
「もっと気の利いた物を贈りたかったんだけど」
そんな泣くような大した物ではないのに、といきなり涙を浮かべた少女にアリシアは恐縮した。
「今日、私の誕生日なの」
偶然だった。
出会って間もないフィリカの誕生日をアリシアが知る由もなく、かといってフィリカが告げた訳でもない。
シダが亡くなって三年、フィリカは独りで過ごしてきたと思うと胸が痛くなる。
「とっても嬉しい!! 大事にするね!!」
フィリカはとても気に入った様子で、帰り道の途中何度もリボンを触ってはアリシアに微笑み掛けていた。
アリシアがこの村へ来て三週間が過ぎた。
シオンと連絡を取る手段を探しに中心部まで出掛けたので、フィリカはいつものように包帯を洗ったり薬を調合したりと忙しくしていると診療所のドアをノックする者がいた。
「お姉様?」
何の疑いもなくドアを開けると二十歳くらいの若者が立っていた。その姿を見るや否や慌ててドアを閉めようとしたが、若者が素早く体を割り込ませてそれを阻止する。
「何の用よ!!」
「わざわざ来てやったのに随分な御挨拶だな」
彼が厭らしく笑うとフィリカは顔をしかめた。
この痩せ形の若者はセイジロといって隣町の地主の一人息子だ。親の権力を振りかざし、彼のばら撒く金欲しさに集まってくる無法達と数々の悪行を働いてきた。
この親子とフィリカには因縁がある。診療所がある森を狙っていたセイジロの父親は、シダが存命の頃から再三立ち退きを要求していた。
さすがに名の知れた術師に手荒な真似は出来ず手をこまねいていた。だが、そのシダが三年前に亡くなったと知り、兼ねてからフィリカに好意を持っていたセイジロが手下を連れてやってくるようになったのだ。
「こんなぼろ家なんか捨てて俺の所へ来な。一生面倒を看てやるぜ」
「冗談じゃないわ!! あんたの世話になるくらいなら死んだ方がましよ!!」
「相変わらず威勢がいいな」
セイジロは彼女の小さな顎を掴んで無理矢理こちらを向かせた。




