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EVOLVE〜エヴォルブ〜 Season6 ― 氷の輪郭 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season6 ― 氷の輪郭 ―
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第2章 沈黙の会議室 ― 完璧という鎧 ―

完璧であることは、

人を守る盾になる。

けれど同時に、人を孤独にする鎧にもなる。


AM 8:10。

ブルームトラベル本社、ガラス張りの会議室。

朝の光がカーテン越しに差し込み、床に淡い影を落とす。

だがその空気は、夜の冷気をまだ残していた。


長い会議テーブルの端に、青葉澪あおばみおが座っている。

手には白いカップ。コーヒーの香りの奥に、

カルバンクライン〈エタニティ〉の香りがわずかに混じっている。


――静寂。


成田理沙なりたりさはその正面に立っていた。

肩をすぼめ、資料を胸に抱え、視線を落とす。

青葉がゆっくりと口を開く。


「報告を。」


わずか三文字。その響きに、

理沙の喉が小さく鳴った。


「……昨夜、システムに不正アクセスがありました。

 外部からではなく、内部操作の痕跡が見つかっています。」


「内部?」

青葉の眉が動く。

冷たい眼差しが理沙の瞳を射抜く。


「はい。……原因はまだ特定できていませんが、

 一部の権限ログが書き換えられていました。」


「つまり、“完璧なセキュリティ”が崩れたということね。」


青葉は立ち上がる。

ヒールの音が硬質な床に響く。


「理沙。あなたはこのプロジェクトの中心にいたわね。」

「……はい。」

「“完璧”に仕上がっていたはずの設計に、

 どんな“例外”を許したの?」


理沙は、手のひらが汗で濡れていくのを感じた。

喉の奥から出た声は、震えていた。


「例外……というか……小さな修正です。

 スケジュールを間に合わせるために、

 いくつかのチェック工程を省きました……。」


「省いた?」

青葉の声は低く、静かに落ちた。

「――それが“完璧”だと、あなたは思ったの?」


理沙の目から、わずかに涙がこぼれた。


「……青葉さんに、認めてほしかったんです。」


その瞬間、青葉の表情がわずかに揺れた。

けれどすぐに、鋭く目を細める。


「感情で動く者に、システムは守れない。」


その言葉が、会議室の空気をさらに凍らせた。


青葉は資料を閉じ、

背筋を伸ばして外を見た。


「……アークシステムズを呼びなさい。

 この案件、外部の目で洗う必要があるわ。」


成田は顔を上げた。

その目には、恐れと同時に、安堵のような光がわずかに宿っていた。


――外の風が、

閉ざされた世界に、吹き込もうとしていた。

「感情で動く者に、システムは守れない」

その言葉は、誰のための正しさだったのだろう。


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