第13章 やさしい記録 ― ぽかぽかノート ―
記録とは、
心が動いた証。
夕暮れのアークシステムズ。
オフィスの窓から射し込むオレンジの光が、
キーボードの上でゆらゆらと揺れていた。
凪がモニターをのぞき込みながら言った。
「今日の青葉さん、なんか違いましたね。
声もやわらかくて、空気がぽかぽかしてました。」
柊が椅子を少し傾け、コーヒーを一口飲む。
「うん。
“人”って、ほんの少し光を受けるだけで変わるんだ。
それを俺たちは“設計”って形で届けてる。」
その言葉に凪は照れたように笑い、
「柊先輩って、やっぱりカッコいいですよね〜!」
「柊はいつでもカッコイイですからね〜」
「……だろ?」
「あ~また始まった〜」
小さな笑い声がオフィスに溶けたころ、
リモート画面の中で灯と永峰が映る。
「青葉さん、少しずつ変わってるね。」灯が言った。
「うん。きっと“完璧”の鎧を少し脱げたんだと思う。」永峰が頷く。
柊はその言葉を聞いて、
「人が変わるって、きっと“欠けた部分を受け入れる”ことなんだな。」
そう呟いた。
環は、静かにモニターを見つめながら微笑んだ。
「欠けたままでも、ちゃんと光は入ってきますから。」
その一言に、オフィスの空気がやさしく沈んだ。
会議が終わり、夜の街が静かに色を変えはじめる。
環は自分のデスクに戻り、
引き出しから一冊のノートを取り出した。
淡い桜色の表紙。
“ぽかぽかノート”と手書きで書かれている。
ページを開き、
今日の出来事を静かに綴る。
◇◇◇
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> 青葉澪さん――
> 強くて美しい人。
> だけど本当は、やさしさを胸にしまい込んでいた人。
> 今日、少しだけそれがこぼれた。
> きっと新しい光のはじまり。
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ペンを置いた環は、そっと笑みを浮かべた。
窓の外には、夜の灯りがやさしく瞬いている。
それはまるで、
今日生まれた“ぽかぽか”の光が街を照らしているかのようだった。
欠けたままでも、光は入る。
ぽかぽかは、今日も誰かに引き継がれていく。
――EVOLVEは、まだ続く。




