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第11章 朝の光 ― 変わりはじめる心 ―
変化は、
劇的なものではない。
翌朝。
まだ人の少ないオフィス街。
ビルの谷間に差し込む朝日が、
窓の向こうのガラスをゆっくりと染めていく。
青葉澪は、いつもと同じ時間に出社していた。
でも、今日の足取りはどこか軽い。
「……不思議ね。」
エントランスのドアをくぐりながら、
自分でも気づかぬほど穏やかな声が漏れた。
エレベーターの鏡に映る自分の表情――
目元がほんの少しやわらかい。
それだけで、世界の色が変わったように感じる。
オフィスに入ると、
香ばしいコーヒーの香りがふわりと広がった。
昨日と同じ豆、同じカップ。
けれど味は、なぜか少しやさしい。
澪は小さく笑った。
「……私、変わりはじめてるのかもね。」
外のガラス越しに、
朝日がまっすぐ差し込む。
その光は、
まるで澪の中の“境界”をそっと照らしていた。
ほんの少し、
世界の色が変わるだけでいい。




