第34話 手紙
キラービーの大発生が終わって数日が過ぎた。
「はい今日の分だよ! ソフィアちゃん!」
「ふぇ! いつもありがとうございます!」
詰め所に来た郵便屋からソフィアが手紙を受け取っている。彼女は郵便屋が来ると、宛名をみながら、それぞれの机に配って回る。配ると言ってもほとんどが部隊宛か隊長宛なので、手紙のほとんどはカルロスの手元にしかいかない。ソフィアは真っ先にカルロスの席に行き、宛名を確認して机の上に手紙を置いていく。
カルロスは机に置かれた手紙の封を切って、中身を確かめていく。
「うん!? これは……」
一枚の手紙を読むとカルロスは、手を止め顔を引きつらせ、リックの方に顔を向け口を開く。
「リック! お前さん、剣の発注が百本ってどういうこだ!?」
「はい。最初に予備を五十本エドガーに作ってもらって、全部キラービー大発生で壊したんで五十本追加しました。ダメでした?」
「えっ!? 予備の追加をもう発注しちゃったのか?! もう…… お前さんねぇ! 追加の分は二十五本とか半分にして月を分けるとかしてよ! 請求金額が……」
カルロスは首を大きく横に振る。全員の視線はカルロスに向くが、みな興味がないのかすぐに自分の仕事に戻る。
「ただでさえ今月はお前さんが飛び込んだ教会の屋根の修理に…… キラービー大発生でメリッサが勝手に連れて行った兵士の補償に…… イーノフの魔法による城門破壊の修理費用もださないといけないのに! これじゃあ予算がなくなっちゃうよ」
「はぁ。そんなこと言われても……」
「何を言ってんだい。それくらいあんたがしっかりやればいいんだよ。だいたいさ。オーガ駆逐をしたのはあたしらなんだから報奨金をもらってもいいくらいだ」
「メッメリッサ! しっかりって言っても限度があるの! それに任務で駆逐した魔物に報奨金なんてでないよ!」
頭を抱えるカルロスだった。リックは申し訳ないと思いつつも、教会から苦情を受けた際に思いっきりやれと言われているので、気にしないことにするのだった。
「うん!?」
ソフィアが二通の封筒を窓にかざしてじっと見つめてる。どうやら光にかざしてすかそうとしているようだ。リックは気になって彼女に声をかける。
「何してるの? ソフィア?」
「ふぇ!? こっこれ。リック宛のお手紙ですよ」
「えっ!? おっ俺宛? あっありがとう……」
慌ててソフィアが光にかざしていた手紙をリックにわたした。リック宛の手紙は二通あった。
「えっと…… 一通はシーリカか。なになに……」
シーリカの手紙の内容は、この間のキラービー大発生で、リックへの思いが大きくなっていつもより、強くお祈りしてたと書いてあった。本来ならリックにとって嬉しい言葉だが、シーリカからの言葉だと、オーガとクイーンキラービーが現れた原因なので恐怖でしかない。
全滅聖女デスシーリカの怖さをキラービーの大発生後にも体感するリックだった。手紙は続き、シーリカはココからの紹介で、ミャンミャンとも友達になったとのことだった。今度、三人で遊びに行くのでリックもぜひと誘う一言が添えてある。
「(いかないよ! 女子三人の集まり…… まぁ一人はババアだけどさその中に入るのはいやだよ)」
リックは手紙を読みながら複雑な表情をしていた。手紙の最後には、また守護者になってほしいと書いてあった。リックは断るって一言だけ書いて返事だそうかなと考えていたが、それも面倒なので返事を書かないことにするのだった。
「もう一通は…… なんだこれ…… 妙に丸々とした字だな……」
二通目の手紙を開いたリックはまた複雑な表情になる。手紙には色んな所にいった報告と最後に手紙には ”もうすぐ帰るからね。待っててね! 私のリック” と書かれていた。
「帰るって…… だれ!? えっ?! 表にも裏にも…… 差出人の名前書いてないじゃないか」
ぶつぶつと不満げにつぶやいている、リックの肩の付近から急に声があがる。
「なっなんですか!? その手紙は! 私のリックってリックは私のですよ!」
「うわぁ ノッソフィア! 後ろにいて盗み見なんてひどいよ!」
「ちっ違います! 偶然見えたんです!」
「偶然なわけないでしょ。かがんで俺の肩越しに顔を偶然だす理由を知りたいよ」
しょんぼりとするソフィア、リックは彼女に優しく微笑む。
「もう…… 手紙がみたいなら言えば見せるよ。だから盗み見しないでね」
「うぅ…… ごめんなさい。お手紙が羨ましくて! つい…… 私にお手紙を書いてくれる人いないんです。前は両親がお仕事に行ってる時にくれたんですけど…… もういないから……」
「えっ!?」
泣きそうな顔で目に涙をためるソフィアだった。リックは泣きそうなソフィアの頭を撫でる。彼女は嬉しそうに笑い、撫でられながら何かを思いついた顔をした。
「そうだ! リック! 私とお手紙を交換しましょう」
「いやいや、俺達は仕事も住んでるところも一緒だよね? なんの手紙を出すの?」
「今日あったこととか……」
「だから! いつも一緒だから書くこともほとんど同じだよね?」
「ぶぅ……」
手紙の交換をリックが断ると、ソフィアは不満そうに口を尖らせていた。子供っぽいソフィアの行動にあきれて笑うリックだった。
「ふふ。手紙か……」
寂しそうにつぶやくリックだった。ソフィアの両親への気持ちに感化されたのか、彼は田舎のマッケ村の母親に手紙を出そうと考えていた。騎士になるのを反対され、振り切って家出してきた自分のことをきっと心配しているだろう。騎士にはなれなかったが優しい人に囲まれ王都で元気にやっていると……
「うーん。やーめた。やっぱり恥ずかしいや」
「何がやめたんですか? もしかして私とのお手紙交換をしないのをやめるんですか?」
「なんでもない。内緒」
「ぶぅ……」
「ほらほら、むくれてないで今日の任務を教えて?」
リックは席を立って相棒のソフィアに声をかける。騎士を目指す彼の王都での生活は始まったばかりだ。




