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ロリババア神様の力で異世界転移  作者:
第2章 激動
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55話 指名依頼




「ん‥‥‥ 」


俺は気がつくと見覚えのある場所に寝そべっていた。


そこは見渡す限り畳が敷かれ、空には白い靄がかかっている。

何故ここに居るのか記憶が曖昧だが、この神秘的な場所は‥‥‥


「おぉ、目が覚めたかえ?」

「咲耶姫?」


まだ意識がハッキリとせず、頭痛に歯を噛み締めていると、後ろから聞き覚えのある特徴的な声が聞こえた。


振り返り、その声の主を見る。


その声の持ち主は、俺を【元居た世界:日本】から、【こちらの世界:ラルキア王国】に転生させた神器 【七豫咫鏡】の付喪神で、生意気な貧乳ロリ神様、卯華乃咲耶姫(うかのさくやひめ)だった。


このロリ神様は偉そうに腕を組んで、俺を見下ろしていた。


「相変わらず胸が寂しいな」

「久しぶりの再会なのに随分な挨拶じゃな帝?」


俺の軽口に、咲耶姫の切り揃えられた黒髪から覗く赤と黄色のオッドアイが俺を捉える。


うん、このやり取り、懐かしい。


でも何故俺はこの空間に戻ってきてしまったんだ?


前に咲耶姫が【俺がこの空間に長く居るとこの空間の維持が困難になり、最悪この空間が崩壊するか、俺がこの空間に取り殺される】と言っていたから、元の世界に通じる道が出来るまでは俺がこの空間に戻って来る事は無かったはずだが。


「俺はなんでここに居るんだ?」

「ふぅ、その疑問は最もじゃな。じゃが正直な所、妾もなぜお主がこの空間に戻って来てしまったのかハッキリとは分からぬ。お主がいきなりこの空間に飛ばされ、気を失っているのを見て妾も驚いたぞ」

「なんだよ、なんでここに俺が来たのか分かんないのか。もしかして向こうで俺の身に何かあったのか?」

「なんじゃ覚えておらんのか? 安心せい、まだ死んではおらんようじゃ。

憶測じゃが、お主は向こうの世界で爆風に吹き飛ばされ頭を強打して気を失い、心だけがお主の持っていた馗護袋を通じてこの空間に戻って来てしまったのやもしれん。

多分あちらの世界で意識が戻れば、直ぐに心もあちらの世界に戻るはずじゃ」

「爆風‥‥‥そうだ、俺はノースラント村のギルドで爆発に巻き込まれて」


思い出してきた。

俺はノースラント村のギルドで、アルトンと呼ばれた男の子が引き起こした爆発に巻き込まれたんだ。


「思い出した様じゃな。何やら大変な事に巻き込まれている様じゃが、帝なら無事に乗り越えられるはずじゃ。

ん? ほれ、守るべき存在が呼んでおるぞ」


咲耶姫にそう言われ、俺は促される様にゆっくりと目を閉じた。


遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。


帰らなければ‥‥‥俺が守ると誓ったあの子の元に‥‥‥あの子達の元に‥‥‥


「‥‥‥ ! み‥‥‥ ど! ミカド!」

「うっ」

「良かった! 気がついたんだね!」

「セシルっ! 大丈夫か!」

「うん、爆発の直前にミカドが守ってくれたから、爆風の直撃は受けなかったよ」

「そうか、良かった。 痛っ‥‥‥俺はどれ位気を失ってた?」


気が付くと、俺はギルド支部の中にある普段は談話スペースとして使われている場所で、椅子で作られた簡易ベットに寝かされていた。


俺の顔を心配そうに覗き込むセシルは、着ている服が所々破け、灰などで汚れていたが目立った傷跡は見当たらない。

少なくとも命に別条はないみたいで安心だ。


一方俺の方は体の節々が痛む。この痛みで俺は爆発に巻き込まれたんだと改めて認識した。


だが、不思議な事に節々が痛むだけで出血等の大きな怪我は見当たらない。

咲耶姫がくれたお守り、馗護袋が俺を護ってくれたのかも知れない。


これをくれた本人も、このお守りはご利益があるとか言っていたからな。


「大体2、3時間くらい気を失ってたよ。ミカドは爆発で吹き飛ばされて、頭をぶつけてそのまま意識を失ってたの。本当は回復魔法で早く目を覚まさせてあげたかったけど、ミカドは気を失ってただけで命に別条は無かったし、他に大怪我の人が沢山いたから後回しになっちゃって‥‥‥ごめんね」

「いや、セシルの所為じゃないさ。気にしないでくれ。っ‥‥‥ 」


やはり俺は頭を強打したみたいだな。

それが原因で意識を失って、一時的に心だけが咲耶姫の居るあの空間に飛んでしまった訳か......


俺は痛む体を起こしながら周囲を見渡した。


ノースラント村ギルド支部は、地獄の様な有様だった。


ギルドの入り口付近は完全に吹き飛ばされ、巨大な穴が空き、それ以上崩れない様につっかえ棒や木の板で補強されている。


爆破で吹き飛ばされたと思しき植木や、椅子などが爆発の悲惨さを物語っている。


俺の周りには、先程までの俺と同じ様な意識不明のギルド職員や組員が簡易ベットで寝かされていた。

その他にも、怪我を負った人達が血を流しながら壁に寄りかかったり寝そべっている。


その人達の間を、黒字に白の十字が書かれた腕章を付けた人が走り回っていた。

十字腕章を付けた人は怪我人の前で座り込み、薬や回復魔法と思しき魔法で怪我人を治療している。


あの白十字腕章を付けている人は医者‥‥… もしくは、医療に携わってる人達の様だ。


数え切れない怪我人と、治療に走り回る人達が居るノースラント村ギルド支部は、まるで戦争映画の野戦病院を連想させた。


「ミカドさん!気がついたんですね!」

「ドラル! 怪我はないか!?」


痛む体を起こし、悲惨な周囲の状況を確認していると、怪我人達の中からドラルが駆け寄ってきた。

ドラルはセシルと同様、所々爆風で服が破けていたり汚れてたりしたが、目立った外傷は見当たらない。


ふとドラルの右腕を見ると、ドラルは右腕に先程見た白い十字が書かれた腕章を付けていた。


「ドラル、その腕章は」

「あ、これは回復魔法が扱える人が付けられる腕章です。 ここには回復魔法を扱える人が少なかったので、志願して怪我人の治療を手伝わせてもらってるんです。それよりミカドさん! どこか痛む所はありますか?」

「あ、あぁ全身が痛い。多分爆風で飛ばされた時にぶつけたみたいだ」

「分かりました、直ぐに治します!」


ドラルはそう言うと俺に両手を翳し目を閉じた。


そして


「月龍の御霊よ、我の思いに応え、かの者に癒しの恩恵を授けたまえ‥‥‥回復(ヒール)!」


ドラルが詠唱を唱えると俺の体を白く、暖かな光が包み込んだ。


心地いい。 まるで暖かな陽だまりの中に居るみたいだ。


暫く白い光に包まれていると腕に付いた痣がスウッ と消えていくのがハッキリと見えた。

体全体から感じた痛みも徐々に無くなっていく。


凄いな、これが回復魔法か。

俺が居た世界の治療とは根本から違っている。


「もう大丈夫だ。ありがとうドラル」


白い光に包まれてからものの数分で、先程まで全体から感じた痛みが嘘の様に引いていた。

着ている服はボロボロのままだが、動くのに支障は無い位には回復した。


「所でセシル。ミラやマリア、レーヴェは?」

「ミラさんは、奥の応接室で話し合いをしてるよ。マリアちゃんやレーヴェちゃんも一緒に行ったみたいだけど」

「マリア達がミラと一緒に? 分かった。ちょっとミラの所に行ってくる」

「はい! 私は怪我をした人の治療に戻りますね」

「私もドラルちゃん達の手伝いをしてるよ」

「分かった。セシル、ドラル無理はするなよ」

「うん!」

「はい!」


他の人の治療の為ドラル、セシルと別れた俺は、朧気な記憶を頼りに、以前通された事のある応接室に向かって歩みを進めた。


「ミラ居るか? 俺だ。帝だ」

「目を覚ましたのか。入ってくれ」


ちょっと迷いながら何とか応接室に着き、応接室のドアを軽くノックすると部屋の中からミラの声が聞こえた。


一呼吸置いてドアを開け室内に入ると、応接室には緊張した面持ちのミラとアンナ、そしてマリアとレーヴェが居た。

なぜ、マリアとレーヴェがここに居るのか大体察しは付くけどな。


「ミカド、無事で良かった‥‥‥」

「あぁ、心配したんだぜ?」

「ん、ドラルに治してもらったからもう大丈夫だ。心配してくれてありがとな」


応接室に入るとマリアとレーヴェが笑顔を見せながら声をかけてくれた。

マリアやレーヴェ、ミラ達も例によって服はボロボロだが怪我は無さそうだ。


「丁度いいミカド、意識が戻ったばかりで悪いが、お前にも少々聞きたい事がある」

「聞きたい事 ? なんだ?」

「お前はなぜ、あの少年‥‥‥アルトンと呼ばれた少年が持っていた物が爆発すると分かった?」

「あぁ、あの男の子が持っていた丸い物が、俺の知っている武器に似ていたから、もしかしてと思ってな」


俺はアルトンと呼ばれた男の子が持っていた物と形がソックリな物を知っていた。


それは俺が元居た世界で、手榴弾や手投げ弾と呼ばれる手のひらサイズの爆弾だ。


あの男の子が持っていた物は、破片手榴弾と呼ばれ、表面の凹凸が爆発時に周囲に飛び散り、対象を攻撃する手榴弾に酷似していた。


まぁ、ミラ達に手榴弾と言っても意味が伝わらないだろうから、言葉は濁しておくけど。


「武器に?」

「あぁ。アルトンって呼ばれた男の子が持っていたアレは、どう言った仕組みで爆発するか知らないけど、爆発した時に表面の凹凸が周囲に弾け飛び、その破片と爆風で攻撃する武器の可能性が高い」

「何故そんな事が分かるんですか?」

「さっきも言った様に、俺が知っている武器と形が似ていたからもしかしてと思っただけだ。 結果は見ての通りだったが。それより、なんでここにマリアとレーヴェが居るんだ?」

「ん、お前も聞いただろう? あの爆発した物を持った少年を見て、この子達がアルトンと呼んだのを。だからこの2人に事情を聞こうと思ってな」


なるほど、ドラルは怪我人の治療を手伝っているから、回復系の魔法が使えないマリアとレーヴェがミラに呼ばれた訳か。


「なるほどな。それは俺も気になっていたんだ。マリア達はあの男の子とは知り合いなのか?」

「ん‥‥‥前一緒に住んでた」

「前って事は、アルトンはマリア達と同じ幸福の鐘グリュック・グロッケンで暮らしてたのか?」

「あぁ。と言っても、幸福の鐘グリュック・グロッケンが閉園になった時、アルトンは僕達とは別の孤児院で暮らす事になって、直ぐに新しい孤児院に移ったから、別れた後の事は知らねぇけどな」


そうか、これでマリア達が何故、あの男の子の名前を知っていたか分かった。

同じ孤児院で育った子が目の前で自爆したなんて‥‥‥


マリア達の事を考えると居た堪れない気持ちで胸が一杯になってしまった。

マリア、レーヴェはアルトンの死を思い出してしまったのか、目は微かに涙を浮かべている。


「ミカド。私アルトンが持っていた物が爆破したか、理由分かる‥‥‥かも 」


涙が零れない様に目をゴシゴシと乱暴に拭ったマリアが、俺の服をチョンチョンと引っ張りながら、自信なさげに呟いた。


「なに!?」

「本当か?」

「ん、爆破する直前にアルトンの持っていた丸い物に、アルトンの魔力が注ぎ込まれた‥‥‥多分、あの丸い物に注ぎ込まれた魔力が暴走して爆破反応を引き起こした‥‥‥と思う」

「つまり、あの爆発は魔力が関係してるかもって訳か?」

「ん‥‥‥たぶん。アルトンの魔力の気が、丸い物に流ていくのが見えたから‥‥‥間違いないと思う」


淡々と語るマリアの目は、徐々に頼りなさげな色から確信を持った色に変わっていた。


マリアみたいなエルフは、人や動物が発する気配を感じ取れると言っていたが、まさか魔力の気配まで感じ取れるとは。


マリアの言った事が真実なら、あの丸い物は火薬で爆発するのではなく、魔力で爆発する代物‥‥‥この世界ならではの【魔法式爆弾】って事になるな。


これは魔術研究機関に所属しているティナなら、さらに詳しく分析してくれるかもしれない。


「エルフは人の発する気配を感じ取れるとは聞いていたが、魔力の流れまで感じ取れるのか! むぅ、私達よりミカドやマリア達の方がこの件の捜査に向いているかもしれないな」

「はい。先程の少年との繋がり等を鑑みても、働き次第では我々が調査するよりも早く黒幕に辿り着けるかも知れません」

「決まりだな。よし! ミカド。実はお前達に頼みたい事がある」

「頼みたい事?」


アンナと何やら小声で話していたミラが、何か決心した様に俺や、後ろで控えるマリアとレーヴェを見据えた。


「ミカド達に、今回の自爆事件の調査をギルドに籍を置く者として指名で依頼したい」

「え!」

「お前達は、先程の少年との繋がりもあるし、爆発した物の事も憶測が含まれているが見極める事が出来た。

それにこの事を伝えた職員の話を聞けば、各地のギルドも此処と似た様な状況だ。

ギルドがこの件の調査をしたくても早くて1週間‥‥‥遅ければ1ヶ月間、ギルドは満足な行動が出来ない可能性が高い。

だから自由に動けないギルドの代わりに、ミカド達で出来るだけこの事件の詳細を調べて欲しい!」

「いや、それは良いんだが。良いのか? 勝手にギルドとして指名で依頼なんかして 」

「私はここのナンバー2だ。誰にも文句は言わせないさ。 それにこれはギルドとラルキア王国の為でもあるからな。何だったら私個人として指名するさ」

「‥‥‥ 」

「ミカド」


どうしたものかと悩んでいると、マリアとレーヴェが不安そうに俺を見上げていた。


そうだよな。悩む事なんて無い。


小さな子供の命を使って、俺達の住む国を滅茶苦茶にした奴の面を拝んで、思いっきりぶん殴ってやらなきゃ気がすまねぇ!


「分かった。その依頼、確かに引き受けた」


うだうだしてても始まらない。

俺は俺に出来る事をやって、この国をこんな目に合わせた奴らに落とし前を付けさせる!



▼▼▼▼▼▼▼▼



「閣下、例の計画が第2段階に移行しました」

「うむ。その後の詳細は?」


外には太陽が昇り、暖かな陽を大地に注いでいるが、男達の居る部屋はカーテンが降ろされ中はまるで真夜中の如き闇に包まれていた。


「はい。現在確認出来るだけで、当初の目標をほぼ達成致しました。

詳細は、ラルキア王国内に点在するギルド支部の標的19箇所のうち、爆破成功が18。【魔伝式爆弾】の不発で爆破失敗が1。

並びにラルキア王国軍関連施設の爆破成功が24。こちらは爆破失敗は確認されておりません。標的とした軍施設への爆破は100パーセント完了しました」

「ふむ‥‥‥ギルド支部への爆破失敗が1か。何故失敗したか理由は分かるか?」

「はい、魔伝式爆弾が何らかの理由により起爆せず、そこをギルド職員に見つかり実行者が捉えられたと、監視していた者が報告しております」

「そうか、魔伝式爆弾がラルキア王国の手に渡るが、仕組みが分かる頃には計画は最終段階に移行している頃だろう。

さて、 我々の計画も次の段階に移行した。ここまで来て失敗する訳にはいかない」

「重々承知しております」

「もう直ぐ、もう直ぐラルキア王国は我の手に! ふふふ‥‥‥ ふはははは!!!」


暗い部屋の中に、目を爛々と光らせる男の欲望に満ちた笑い声が暫く響き渡っていた。





ここまでご覧頂きありがとうございます。



どうでもいい事なのですが、昨日夜の9時半頃に地震がありましたね。

僕は気持ち良く寝ていた所に、棚に飾っておいたフィギュアが揺れで落下し、鼻に直撃しました。


凄く痛かったです。


地震は嫌いです。



誤字脱字、ご意見ご感想何でも大歓迎です。


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