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「はぁ~・・・。あの片瀬って刑事、いきなりやって来て凄い気迫で切り裂き魔について問い詰めて来て・・・本当吃驚した。何か、すっげぇ疲れた・・・。」
ぐったりと机に倒れ込む騰蛇。強烈な台風を思わせるほどの片瀬刑事のエネルギッシュさに、葛の葉庵の面々は疲れ切った様子で一斉にふぅ~っと重い溜め息を吐く。鎌鼬の事件に関する聞き込みで張り詰めていた緊張が一気に緩み、どっと疲れが重くのしかかる。
「犯人逮捕にかなり意気込んでいたけど・・・片瀬さん達、大丈夫かな?無茶しないと良いけど・・・。」
様々な凶悪犯を捕まえてきた刑事達でも、相手が妖怪となると闘うのは難しいだろう。大怪我をするかもしれないし、最悪の場合命を落とす事になるかもしれない。
「・・・特にあの片瀬って刑事からは、“どんな手を使ってでも逮捕してやる”っていう執念を感じたねぇ。」
眉尻を下げ苦笑する太陰の言葉に、一同は「ハハ・・・。」と口許を引き攣らせる。
「でもああいう頑固で堅物なタイプは、幾ら説明や警告をしたって聞く耳持ちませんヨ。実際に鎌鼬に遭遇しない限り、きっと晴支の話を信じないでショウ。」
壁に凭れ掛かりながら、白虎が気怠そうに語る。白虎は「それにしても、2人を現場でちらっと見かけただけで事件について知っていると気付くなんテ・・・刑事の勘っていうのも恐ろしいですネ。」と喋りながら傍の机でまだ突っ伏している騰蛇のピンとはねた髪をツンツンと突く。騰蛇は顔を埋めたまま、「ツンツン止めろ~・・・。」と弱弱しい声でぼそりと呟く。
凄く真剣な眼差しで尋ねられたから、本当の事を言ってしまったけど・・・2人共、かなり困惑させてしまった様で申し訳無かったな。やっぱり、妖怪の話をしたのは不味かったかな。
僕は2人が去った後の扉を見つめながら、もう少し上手く誤魔化せたら良かったのに・・・と反省していた。
「晴支、鎌鼬が出没しそうな地点の目星はつけられませんか?」
六合の問い掛けに、僕は眉尻を下げふるふると首を横に振る。
「犯行の場所も被害者の特徴も法則性が無くてバラバラで・・・特定は難しいんだ。」
犯行現場に赴いて調査したり、情報を集めたりしながら鎌鼬の行動を分析してみてはいるのだが、次の犯行の予測地点を絞り込めずにいるのだ。
「鎌鼬が姿を現すのを待つしかないか・・・。」
顎に手を当てむむ・・・と考え込む貴人。彼の言葉に、葛の葉庵の面々の表情も重々しいものになる。僕は懐から紙人形の式神を1枚取り出し、顔の前に掲げる。
「片瀬刑事達の行動を見張ってくれるかな?もし彼等が捜査中危険な目に遭いそうになったら、直ぐに知らせて欲しい。」
僕がお願いすると、式神はこくりと頷き扉の僅かな隙間からするりと外に飛び出し、片瀬刑事達を追い駆けて行った。
・・・これ以上犠牲者を出さない為に、一刻も早く鎌鼬を祓わないと!
僕は一度目を瞑り、邪悪な妖の気配が居ないか神経を研ぎ澄ませる。しかし付近に特に気になる様な怪しい気配は感じられない。
・・・まだ鎌鼬は動き始めていないみたいだ。
僕はふぅ、と1つ深く深呼吸すると、いつでも動ける様に気を引き締め直し、警戒を強めたのだった。




