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葛の葉奇譚  作者: 椿
第9章:山中の物の怪
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 「よし。ではこれからオリエンテーリングを開始する。各チェックポイントで俺達教員が待機しているから、何かあれば知らせる様に。では、グループで力を合わせて取り組んでくれ。以上だ。」

 先生の説明を受けた僕達は、頂上の展望台を目指して山道を歩き始めたのだった。

 「ぴぃ。山の中のお散歩!気持ち良い!!」

 「変な茸とか、生えてるかな?」

 家鳴やハクがぼそぼそと楽しそうに呟く。彼等がどうしてもついて行きたい、と言うの で一緒に山を歩く事にしたのだ。(ハクは見られると不味いので、僕のリュックの中からこっそり外の景色を見ている。)

 「あっ。あそこの木、ちょっと変わった鳥が留まっているね。」

 「本当だ!ちょっと目付き鋭い鳥だな。・・・っていうか、何か凄い睨まれている気が・・・気のせいか?」

 少し遠くの木に留まって此方の方をじぃ~っと見つめてくる鳥と暫く睨めっこしながら進み続けていると、最初のチェックポイントが見えてきた。チェックポイントでは信楽先生が紙と鉛筆を用意して待っていた。

 「最初の課題は“絵”だ。“埴輪”の絵を描いて貰おう。」

 信楽先生は紙と鉛筆を僕達4人に配りながら説明した。僕達は黙々と絵を描き始める。

 「出来ました。」

 僕はピッと片手を上げ一言述べると、サッと完成した絵を見せた。

 「ほう。描写が細かい・・・。特徴をよく掴んで描けているな。」

 まじまじと見ながら、信楽先生が僕の絵を褒めてくれた。絵を描くのは昔から得意なので、最初の課題が絵だったのは少しほっとした。壮吾と仁も直ぐ後に描き終え、合格を貰う。

 「う”・・・俺が最後か・・・。」

 直人が顔を紅くしながら、おずおずと絵を見せる。にょろっと細長い物体が小さく真ん中に描かれている。

 「・・・うん。よく頑張ったな。」

 全員合格を貰えた僕達は、スタンプを押してもらい、次のチェックポイントへと向かい始める。信楽先生が「気を付けてな。」と僕達に言葉を掛けながら見送ってくれた。

 「あ゛~・・・何で課題が“絵”なんだよ。俺・・・絵苦手なのに・・・。」

 恥ずかしそうに顔を両手で覆いながら歩く直人。そんな彼を慰めようと、僕達3人は彼の肩や背中をポンと優しく叩いた。

 気を取り直して向かった次のチェックポイントで待っていたのは、八束先生だった。

 「次の課題は“歌”だよ。皆で童謡の『故郷』の1番を歌ってね。」

 「い゛っ・・・歌・・・ですか?」

 にこりと柔らかな微笑みを浮かべる八束先生から告げられた次の課題に、壮吾が不安そうに僕の方をちらりと見る。そんな彼の視線に、僕は不思議そうに首を傾げる。 

 「じゃあ、1・2・3で歌い始めようぜ。」 

 仁の言葉に僕達は頷き、1・2・3の合図の後に歌い始めた僕達だったのだが―

 「うぅ゛~、さぁ゛~ぎぃ~、お~い゛し~・・・」

 「!?」

 音程滅茶苦茶で、まるで恐ろしい呪いの様な僕の歌声に、仁や直人、八束先生が衝撃の余り目を大きく見開いて呆然としてしまう。僕の肩に乗っていた家鳴は、耳を塞ぎながらずるっと肩から落ちてしまった・・・。

 「あれっ?皆、どうして歌うの止めたの?」

 ?を浮かべ問い掛ける僕に、仁達は困惑した表情で固まっている。そんな僕達の様子を、壮吾は眉尻を下げ苦笑しながら見守っていた。

 「晴支、俺の後に続いて真似して歌ってみようか・・・。兎~追~いし♪」

 壮吾が美しい歌声で歌い出す。直人達も「おお!」と感嘆の声を上げる。僕も彼に続いて歌おうと口を開く。皆がそれを息を呑んで見守る。

 「うぅ゛~、さぁ゛~ぎぃ~、お~い゛し~・・・」

 やっぱり酷い僕の歌声に、皆ガクッと体勢を崩す。

 「よ・・・よし・・・。取り敢えず、4人で歌うか・・・。」

 直人の言葉に僕達はこくりと頷くと、僕達4人は何とか『故郷』の1番を歌い切った。

 「皆、頂上まで頑張ってね。」

 手を振りながら笑顔で見送ってくれた八束先生に、僕達も手を振り返しながら頂上へ向かって再び歩き始めた。

 「まさか・・・晴支があそこまで音痴だったとはな・・・。」

 仁が僕の方をちらりと見ながら呟く。

 「そんなに酷かった、僕の歌?」

 僕が首を傾げ問い掛けると、「正直、かなりやばい。」と3人に声を揃えて返された。

 その後、幾つかのチェックポイントを通過し、山道を歩き続けていた僕達。すると、半分以上進んだ所で後ろから「お~い!」と元気な声に呼び止められた。振り返ると、神崎さんを含む女子グループが僕達の所へ駆け寄って来ていた。

 「前を歩いているのが見えて。家鳴ちゃん達も一緒なんですね。ハク君も傍に居るんですか?」

 こっそりと問い掛ける神崎さんに、「リュックの中に居るよ。」と僕は答えた。リュックの中からちょっとだけちらりと手を見せるハクに、神崎さんは優しく微笑み掛ける。

 「頂上まで、もう一頑張りするか。」

 壮吾の声に皆で一緒に歩き始めたのだが―

 僕は視界の端に黒い蛇がちらりと見え、つい歩を止めてしまう。

 ・・・あの蛇、確か旧校舎の時に見かけたのと同じ蛇だ。

 「晴支?どうした?」

 蛇の姿を見て警戒を強める僕を心配し、壮吾が声を掛けてきたその直後―

 「!?」

 突然大きな獣が2匹僕と壮吾に向かって飛び掛かって来た。いきなり襲い掛かられた僕達は体勢を崩し、そのまま山の斜面を落下していく。

 「晴支っ!?壮吾っ!?」

 仁達が僕達を心配し、落ちて行った方向を覗いてみるが、僕達の姿を見つける事は出来なかった。

 「取り敢えず、俺達は下に下りて晴支達を捜してみる。先生を呼んで来て貰えるか?」

 直人が女子達に指示を出すと、彼女達はこくりと頷き1番近くのチェックポイントへと走り出そうとする。

 「あっ、あの・・・私も一緒に捜します!」

 僕達を捜しに行こうとした直人達に、神崎さんが急いでついて行こうとする。戸惑う2人に「お願いします!」と必死にお願いする。

 「分かった。一緒に行こう。」

 「はい!」

 神崎さんは同じグループの女子達に「先生への連絡、お願いします。」と伝えてから、仁達と一緒に山を下りて行った。



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