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葛の葉奇譚  作者: 椿
第4章:旧校舎の怪
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6

 教室に入ると、家鳴達は机や椅子、ロッカー等にピシッと座って待機していた。

 「家鳴に答えられることだったら、何でも答える!どんと来い!!」

 1番前に居た家鳴が顔を上げてフンッと力強く腕を組む。他の家鳴達も、それを真似て気合の入った面持ちで腕を組む。軽く自己紹介をした後、僕は早速本題に入った。

 「じゃあ質問なんだけど、此処に来た人達を驚かせていたのは君達かな?怒らないから、正直に答えて。」

 僕が問い掛けると、家鳴達はちらりと顔を見合わせ、こくりと頷く。

 「理由を教えて貰っても良いかな?」

 僕の質問に、家鳴は少し黙って考えた後、意を決して語り始める。

 「家鳴達は、この旧校舎ができて間もない頃からずっと此処に住んでた。」

 「だけどある日、突然男達がやって来て、此処を取り壊すって言い出した。」

 「だから家鳴達は奴らを追い払う為に脅かした。」

 家鳴はパタパタと手を大きく振りながら、取り壊しを計画した人達に対する怒りを口々に語り出す。

 「そっか。居場所を守る為に、一生懸命頑張ったんだね。」

 僕は彼らの頑張りを労う様に、近くに居た家鳴の頭をそっと撫でた。家鳴は気持ち良さそうに目を瞑り「ぴぃ。」と鳴いた。それを羨ましく思った他の家鳴達は、我も我もと僕に撫でて欲しいとねだった来た。僕が家鳴達に囲まれながら順番に撫でていくと、彼らはとても喜んだ。

 「でも可哀想だが・・・ずっと此処に住むのは無理かもしれん。先日、工事の責任者が近々取り壊しに踏み切ると言っていたのを聞いた。」

 信楽先生は眉を顰め、深刻な面持ちでトンと黒板にもたれ掛かる。

 「そんな・・・じゃあ家鳴達は此処に居られなくなっちまうのか?」

 ギュッと拳を握り、心配そうに家鳴を見つめる壮吾。

 「どうしよう・・・。」

 「もう此処には居られないのかな?」

 家鳴達も、住処が壊されるかもしれないという危機に動揺し、ぴぃぴぃと不安そうに泣き出す。

 このままじゃ、家鳴達の居場所が無くなってしまう・・・。

 何とか出来ないか、と頭の中で必死に考える。

 せめて、新しい居場所を作ってあげられたら・・・。

 そこで、僕はある決断をする。

 「ねぇ、家鳴。」

 「ぴぃ?」

 僕がゆっくり話し掛けると、家鳴達はキョトンと首を傾げた。

 「もし良かったら・・・うちに引っ越して来る?」

 僕が提案すると、家鳴達は大きな丸い目を見開いた。

 「晴支の家って・・・どんな所?」

 家鳴達がフッと僕の周りに寄って来て、興味津々な様子で尋ねてくる。

 「僕と壮吾は“葛の葉庵”っていうお菓子屋さんに住んでるんだ。うちで作るお菓子はとても美味しいんだよ。それに大家族だからいつも賑やかで凄く楽しいよ。」

 「うちは元気過ぎる奴ばっかだから、かなり騒がしいぜ。」

 自由気ままにわいわい騒ぐ皆の様子を思い浮かべ、僕と壮吾は顔を見合わせ笑い合う。

 「美味しいお菓子・・・」

 「賑やかで楽しい所・・・」


 挿絵(By みてみん)


 目をキラキラ輝かせながら呟く家鳴達。彼らは集まって相談し合う。そして少し話し合ってから、此方の方へと向き直る。

 「本当に、家鳴達が行っても良いの?」

 家鳴の1人が、遠慮がちにおずおずと尋ねる。

 「もちろん。」

 僕と壮吾が大きく頷きながらそう答えると、家鳴達は「ぴぃ!」と嬉しそうに歓声を上げる。

 「宜しくお願いします。」

 家鳴達が一斉に深々と頭を下げる。

 「こちらこそ。」

 「宜しくな。」

 僕達もぺこりとお辞儀を返す。

 「じゃあ、家鳴達のことは任せる。すまないな、2人共。」

 信楽先生がほっと安心した様に話し掛けた言葉に、僕達はこくりと頷く。

 「でも、連れて帰ったら皆きっとびっくりするんじゃないか?特に六合は凄い顔で驚くと思うぞ。」

 六合の驚いた顔を想像し、ぷふっと吹き出す信楽先生。沢山の家鳴達に囲まれ、驚愕のあまりおろおろする六合の姿が、鮮明に思い浮かぶ。

 大はしゃぎでぴぃぴぃと歌ったり、踊ったりする家鳴達を3人が静かに見ていたその時―

 ガシャンッ!

 突然大きな音が響いてきた。家鳴達は驚いてビクッと震える。

 「あの大きな音・・・家庭科室の方からだよね?」

 僕は音の聞こえた方を向き、2人に確認する。

 「家庭科室の霊が、俺達に気付いて暴れ始めた様だな。」

 片方の手をズボンのポケットの中に入れ身構える信楽先生。

 「家庭科室の霊って・・・包丁とかフライパンとか投げつけてくるって奴か?」 

 「家庭科室の霊、凄く凶暴!家鳴達も襲われた!!」

 仁の話を思い返しながら尋ねる壮吾に、家鳴達は興奮気味に答える。

 「3人で家庭科室の様子を見て来るよ。家鳴達は安全な場所に隠れてて。」

 「ぴぇっ!?晴支達行くの?止めた方が良いよ!」

 2人を連れて家庭科室に向かおうとする僕に、家鳴達が心配そうに声を掛ける。

 「心配無いよ。直ぐ戻って来るから。もし危ない妖が来たら、直ぐに逃げるんだよ。」

 家鳴達にそう言い残すと、僕は2人と共に教室を飛び出して行った。


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