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葛の葉奇譚  作者: 椿
第2章:火車と夜汰の災難
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御負け話:酒と焼き鳥と式神と

 葛の葉庵の近所のとある焼き鳥屋。川原での勝負に勝った私と青龍は、朱雀にお酒を奢ってもらう為、此処にやって来ましタ。

 「良い雰囲気のお店ですネ。よしっ、今日は沢山飲みますヨ!」

 少しテンション高めではしゃいでいると、朱雀がキッと私を睨みつけてくル。

 「飲み過ぎて二日酔いになれば良いのよ。」

 何故私にそこまで突っかかってくるのでしょうカ、この人ハ・・・?

 「私、こう見えてかなりお酒強いんですヨ!今までどんなに飲んだって酔ったことありませんもン!!」

 フフン、とドヤ顔をしながら言ってみると、朱雀は「フンッ!」とそっぽを向ク。そんな2人のやりとりを、青龍はただ静かに傍観していル。

 「注文どうする?何が食べたい?」

 このままでは埒が明かないと思ったのか、朱雀はメニューを見ながら私達に問いかけル。

 「ささみが食べたい。」

 「私はつくねが食べたいデス!」

 2人がリクエストを言うと、朱雀は暫し考え、料理を選ブ。

 「じゃあ、色々な種類が食べられる盛り合わせにする?2人の食べたいのも入ってるし。お酒はビールにする?」

 私達が賛成の意を示すと、朱雀は店員にテキパキと注文を伝えル。

 「焼き鳥盛り合わせと、ビール2つにグレープフルーツサワー1つ、それと・・・」

 追加の注文でしょうカ?店員に耳打ちしながらコソコソと何か話す朱雀。注文を受けた店員が下がると、朱雀は私の方を向いてニコリと満面の笑みを見せル。・・・何を企んでいるのでしょうカ?嫌な予感しかしませン。

 「もう・・・今思い出しても本当悔しい!白虎にだけは負けたくなかった!!」

 両の拳をブンブンしながら悔しさを表現する朱雀。彼女は負けず嫌いな性格なので、今回の勝負に勝てなかったことが余程悔しい様デス。悔しそうにする彼女を見て私が「アハハハ!」と大笑いしていると、朱雀に殺気立った目で睨まれてしまいましタ。力と感情のかなり籠った目でしタ。

 おお、怖イ怖イ!

 「お待たせしました。ビールとグレープフルーツサワー、焼き鳥盛り合わせ、そして・・・」

 お酒や焼き鳥が目の前に並べられていク。芳しい良い香りが漂いまス。

 「ねぎま(葱多め)でございます。ごゆっくりどうぞ!」

 「!?」

 お皿に大盛りに盛られたねぎま(しかも葱多め)がドンッとテーブルの上に置かれル。まさか本当にねぎまを注文するとハ・・・。いや、あの笑顔を見た時から、何となく予感はしていましたケド・・・。

 「ほら、白虎。沢山食べなさいよ。」

 朱雀はフフンと笑いながら、私にねぎまをズイッと差し出してくル。

 「フッ。甘いですヨ、朱雀!」

 私は皿を受け取ると、目にも留まらぬ早業で鶏肉と葱を取り分け、葱を全て青龍の皿へと載せていク。

 「なっ!?」

 私の素早い行動に驚いた朱雀は、茫然自失の状態に陥っていタ。

 「・・・。」

 青龍はお皿に盛られた大量の葱を暫く見つめると、お箸でちょんとつまんでもそもそ食べ始めル。

結構美味しそうに食べてますネ。意外と箸が進んでいまス。 


 挿絵(By みてみん)


 「あ゛~、やられた!今度こそ白虎に一泡吹かせてやろうと思ってたのにぃ~!!」

 不満気な顔で青龍が食べている葱を見つめる朱雀。

 「まぁまぁ、せっかくの飲み会なんですカラ!楽しくパァーッといきましょうヨ!!」

 私が宥める様にそう言うと、彼女も渋々納得し、軟骨の焼き鳥をコリコリと食べ始めル。私もつくねを1本取り、一口食べてみル。うん、タレとの相性抜群で、とても美味しいデス!

                            ・

                            ・

                            ・

 「それにしても、茨木童子まで現世に送られてくるなんて・・・まさかまたあの時みたいに面倒な妖が出て来て戦闘・・・なんてことないわよね?」

 サワーの入ったグラスをカラカラと軽く揺らしながら、朱雀が不安気に問いかけル。

 「そうならないことを願っているが…。」

 心の中の胸騒ぎを誤魔化す様に、青龍はビールを口に含み呟ク。

 「晴支は晴明に似て・・・よく危険なトラブルに首突っ込んだり、巻き込まれたりするから・・・。大怪我とかしなきゃ良いけど・・・。」

 晴支を心配し、顔を俯かせてしまう朱雀。今回の事件は謎が多く、そのことが不安をより一層搔き立ててしまウ。

 「大丈夫ですヨ。晴支は少し天然なところがありますケド、とても強い子デス。あの子ならどんな敵が現れたって、きっと打ち勝つことが出来ますヨ。それに、晴支に迫る危機を除く為に、私達が居るんじゃないですカ。」

 2人を励ます様に、私は笑って語り掛けル。

 「そうよね!きっと大丈夫よね!!」

 「白虎の言う通りだな。」

 2人は私の言葉に賛成し、力強く頷く。そして己を奮い立たせる様に、私達はそれぞれお酒をグイッと飲む。


挿絵(By みてみん)


 ―何があっても、自分達の大切な主を守り抜く―

 その決意を、3人は改めて心に刻んだのだった。

 

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