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葛の葉奇譚  作者: 椿
第2章:火車と夜汰の災難
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10

 晴支達も店に戻り、人っ子一人見当たらない公園内の静かな迷路。その迷路の道の真ん中に、和服姿の少年が1人。

 「呪術の力で強化しても、所詮雑魚は雑魚だな・・・。」

 まぁ、面白そうな奴を見つけられたし、良しとするか・・・。

 迷路の中で戦っていた連中の1人を思い出し、少年はフッと愉快気に笑みを浮かべる。

 あいつ、俺がこっそり見てたの気付いてたなぁ。それにあの容姿と気配・・・。

 「土御門晴支かぁ・・・。殺ってみたいなぁ・・・。」

 少年は、まるで新しい玩具を見つけた子供の様に、目をキラキラ輝かせる。晴支と殺り合いたい、晴支を壊したいという暴悪な衝動に駆られ、うずうずする少年。

 「あいつの居る店、襲ってみようか・・・。」

 少年は葛の葉庵のある方角を見つめ、不敵に笑う。

 どんなことをしたら、あいつは壊れるかなぁ。ズタズタに切り裂く?それとも、精神的に苦しめる?

 少年は悪戯の計画を立てる調子で残酷なことを考えながら、葛の葉庵に向かって一歩踏み出そうとする。

 「牛鬼・・・駄目。」

 葛の葉庵へ向かおうとする少年・牛鬼を、繊細で可愛らしい声が呼び止める。牛鬼が後ろを振り返ると、そこには着物に身を包んだ大人しい雰囲気の少女が立っていた。

 「覚も来てたんだぁ。・・・ていうか、何で止めんの?」

 邪魔されたことに少し不満を感じた牛鬼は、威圧的な目で覚を睨み、問いかける。そんな彼の態度に対し、覚は感情の希薄な表情と声で静かに語る。


 挿絵(By みてみん)


 「天逆毎様が、次の指示があるから寄り道せずに戻って来いと言ってる・・・。だから、葛の葉庵に行くのは、駄目。」

 覚は牛鬼を行かせまいと、彼の着物の袖を軽く掴み、じっと目を見つめる。

 「ほんのちょび~っとだけでも、駄目?」

 親指と人差し指の間隔で“ちょびっと”を表現しながら寄り道の許可を求める牛鬼。

 「駄目。まっすぐ戻るの。」

 彼女の意志は固く、「寄り道は許さない」と全身で語っている。

 「ちぇっ、分かったよ!戻れば良いんだろ!!覚のケチィ~。」

 牛鬼はムスッと脹れっ面をしながら渋々行き先を変更する。彼が寄り道を諦めたことを確認すると、覚は彼の後ろについて一緒に歩き始める。

 まぁ、楽しみはまた今度に取っておくよ。

 牛鬼はもう一度だけ、葛の葉庵の方に視線を向ける。

 「いつか一緒に遊ぼうね、晴支。」

 牛鬼は小さな声でポツリとそう呟くと、次の指示を受けるべく歩き出す。そして牛鬼と覚は、邪悪な闇の中へと去って行った。


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