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葛の葉奇譚  作者: 椿
第16章:七夕の邂逅
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6

 「お邪魔しま~す。」

 お祭りを終えた後、俺は土御門達に連れられて閉店後の葛の葉庵へとやって来た。

 「皆お帰りっ!そっちのお兄ちゃんは晴支達のお友達?おいら、ハク!宜しくなっ!」

 「私、志乃。客間まで案内するね。」

 「ピィ!!」

 店に入って直ぐに好奇心旺盛な妖の子供達と家鳴達が一斉に寄って来てギュウッと抱き付いて来てくれた。「俺は天城満里。宜しくな。」と笑顔で挨拶しハク達の頭を優しく撫でると、彼らは嬉しそうに表情を綻ばせた。子供達に手を引かれた先にある部屋に入ってみると、其処には青龍さんと騰蛇さん以外の十二天将が揃っていた。(昔の様に持ち回りで見回りに行っているのだろうか。)

 「今晩は。施設での一件については六合から聞いているよ、天城満里君。それとも、道満と呼んだ方が良いか?」

 「道満!?」

 貴人さんの口から出た道満という名前に、赤星が驚きを隠せず大声を出してしまう。土御門も少し目を見開き驚愕の表情を浮かべている。

 「あ~・・・実は俺、芦屋道満の生まれ変わりなんだ。なんか俺の中の血の記憶によると、母親が芦屋家のかなり遠い親類だったらしい。遠すぎて母さん本人も知らなかったみたいだ。・・・つってもさっき狂骨に襲われた時に前世の記憶が戻ったんだけどな。」

 苦笑しながらそう語る俺に、葛の葉庵の皆の注目が集まる。

「今まではどう過ごしてたんですカ?妖絡みのトラブルに巻き込まれたりはなかったんですカ?」

 俺の直ぐ目の前までズイッと近付くと、白虎さんは上目遣いで問い掛ける。

 「凄く小さい頃は幽霊や妖が見えてました。でも3歳の時に事故に遭ってからはぱったり感知できなくなってました。」

 じぃっと見つめてくる白虎さんの圧に負けた俺は、自分の生い立ちについて簡単に語った。

 「御家族の事は、辛かったな・・・。」

 「再会・・・って言って良いのかわかんねぇけど、こうやって会って話出来て良かったぜ。」

 一頻り互いがこれ迄経験してきた事を語り合うと、葛の葉庵の皆が俺の境遇を気遣いつつ優しい言葉をかけてくれる。今も昔と変わらず良い奴等だ。 

 「色々大変だったんですネ。それはそうと、もっとフランクな口調で喋ってくれて良いですヨ、満里。道満の頃の記憶も今はあるんでショウ?道満の生まれ変わりで彼によく似ている君に敬語を使われるのは変な感じというカ・・・正直気持ち悪いデス。」

 「わかった。・・・ていうか“気持ち悪い”ってさり気なく失礼だな!?酷ぇ!!」  

 俺がすかさずツッコむと、白虎は「アハハッ!冗談ですヨ☆」と笑って答える。そんな俺等のやり取りに葛の葉庵の面々も笑いだす。

 「しかし本当に驚いた。まさかこの時代で道満の生まれ変わりに会えるなんて。でも狂骨の出現まで霊力や特殊な気配は全く感じなかったのは何故なんだろう?」

 六合の問い掛けに、俺は答えられず只首を傾げる。きっかけがあるとすればやはりあの時の事故なのだろうけど、正直俺にもよく分からない。


 「恐らく妖達から自分の身を護る為に無意識に己の霊力を封印したんじゃないかな。」


 突然現れた柔らかな声音とどこか懐かしく神秘的な気配にその場に居た者達が視線を向ける。その視線の先に居た土御門は、いつもと少し違う不思議な雰囲気を纏い微笑んでいた。

 「晴明?」

 俺がぽつりと呟いた問い掛けに、彼はこくりと頷いた。

 「施設の事件でも、学校でも、晴支と壮吾がお世話になって有り難う、満里。それに、皆も久し振りだね。といっても、貴人とはこの間京都で会ったばかりだけどね。」

 晴支の体から表に出て来た晴明の方へ十二天将達は嬉しそうに傍に寄って行く。

 「身を護る為に無意識に霊力を封印したって・・・やっぱりあの時の事故はただの事故じゃなかったって事なのか?」

 恐る恐る問い掛けると、晴明は少し悲しげに微笑みながら静かに答えた。

 「話を聞いた限りでは、妖の仕業である可能性は高いと思うよ。幼いながらに霊力を持つ君を排除しようとしたか、その力を取り込もうとしたかのどちらかじゃないかな。」

 あぁ...やはりあの事故は妖の仕業だったのか。事故の直前、あのワゴン車から禍々しい嫌な気配が感じられた。だから今回の一件で霊力と記憶が戻った時、きっとあの事故はただの偶然じゃなく妖によって仕組まれたものだって分かった。

 「13年前の事故と今回うちの施設が狂骨に襲われた一件・・・何か繋がりがあると思うか?」

 「否定は出来ない。どちらにせよ、こうして力を取り戻した以上妖に狙われる事は確実に増えると思う。」

 「狂骨に術を施し殺した者にも満里の存在がバレただろうからな。」

 真剣な面持ちでそう語られた晴明と貴人の言葉に、俺も葛の葉庵の皆も緊張を高める。

 「相当高度な術式だったから、かなりの手練れだと思う。戦うとなると、かなり厄介だろうな。」

 俺が狂骨殺しの犯人について意見を述べると、白虎と玄武が目をキラリと光らせる。強者の気配に興味を魅かれた様だ。

 「あと土御門達が学校で何度か襲われているのも気になるかな。信楽先生もいるし、危険な妖怪が侵入する事は然う然う無いと思うけど・・・警戒は強めた方が良い気がする。」

 「この間のフードの男もまた仕掛けてくるかもしれないしな・・・。」

 宿泊訓練の山と学校内で現れたっていうフードの男・・・意外と俺達の直ぐ近くに潜んでいるのかもしれない。俺が道満の生まれ変わりだと気付けば、そいつも襲ってくるかもしれない。もし、施設の皆と一緒に居る時に襲われたら・・・皆が危険な目に遭うかもしれない。

 「大事な家族を奪われるのはもう二度と御免だ。だから、俺も妖退治協力するぜ。」

 ぎゅっと拳を握りまっすぐ皆の方を向いてそう言うと、晴明は「有り難う、助かるよ。」と答えた。

 「ハハハッ、懐かしいねぇ!昔一緒に妖退治してた頃を思い出しちまうよ。」

 玄武が豪快な笑い声を上げながら俺の背中を痛いくらい力強くバシバシと叩く。

 「いつも晴明に負けて悔しがってましたよネェ~♪」

 白虎が肩越しにニヤリと悪戯っぽく笑いながら揶揄ってくる。「じっ、実力では決して負けてないぞっ!!」と反論すると、「出タ!道満の負けず嫌イ!!」と更に揶揄ってくる。そんな俺達の様子に、葛の葉庵の皆も楽しそうに笑いだす。「晴明と道満の対決とかすげー気になる!」と赤星や子供達が話をせがんでくるので、帝の前で陰陽術対決をした時の話とか、討伐依頼を受けて凶悪な鬼の一派の根城に行ったら晴明と鉢合わせて一緒に退治した時の話等を色々した。

 「懐かしい話が沢山出来て楽しいけれど、そろそろ私は下がらせてもらうよ。皆、晴支の事、これからも頼むよ。」

 皆が力強く頷き答えると、晴明は晴支の魂の奥へ静かに下がって行った。

  

「じゃあ、俺はそろそろ帰るよ。また妖絡みでなんかあったら、協力するよ。」

 「有難う。天城君も、困った事があったら何時でも言って。」

 俺が声を掛けると、土御門はハクと志乃に背中に伸し掛かられながら答えてくれる。そんな彼に、俺は「あのさ・・・」と話を切り出す。

 「俺の事は、“満里”って名前で呼び捨てにしてくれて良いよ。」

 頬を指で軽く搔き視線を少し逸らしながら、俺は小さくそう呟いた。そんな俺の様子を見て、土御門と赤星は楽しそうにふっと笑い出す。

 「分かったよ、満里。」

 「俺達の事も“晴支”、“壮吾”で良いぜ、満里。」

 2人の言葉で、張っていた気が少し緩むのを感じる。“俺が家族を護らなきゃ。”“しっかりしなければ。”と気負っていたけれど、頼れる仲間が居るというのは、こんなにも心強いんだな。

 「また明日、学校でな!晴支、壮吾!!十二天将の皆もまたな!!今度うちの子供達と一緒にお菓子買いに来るよ。」

 そろそろ帰ろうと席を立ち挨拶を述べると、葛の葉庵の皆は「何時でも来いよ!」と優しい言葉を掛けてくれる。葛の葉庵を出ようと扉に手を掛けた俺だったが、ふとその手を留めくるりと晴支達の方へ振り返った。

 「妖退治、次は晴支達よりも大勢倒してやるからな!!」

 ニッと勝気な笑みを浮かべ一言述べた俺に、晴支達も「僕達も負けないよ。」と力強く返してくれる。


 道満の負けず嫌いは生まれ変わっても相変わらずだね。


 去り際、愉快そうにそう囁く晴明の声が聞こえた気がして、つい嬉しくなった俺は跳ねるように帰り道を走るのだった。

 


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