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エリッサ、幼なじみの世話を焼く

前話で完結だったのですが、なぜかメラニーが人気なので彼女がハッピーエンドになる追話も書いてみました。


 私とデュアン様が婚約してから一か月が過ぎた。

 ここに来て、ちょっとした問題が生じている。本当にちょっとした問題なんだけど……。


 この日も、私とデュアン様、そして友人のメラニーとで町の酒場にやって来ていた。

 いつものようにお酒を飲みはじめ、注文したミートパイが運ばれてくる。私がそれを切り分けようとした時だった。


「あら、さすがは玉の輿に乗った令嬢だわ。パイを切り分けて良妻ぶりをアピールね」


 と即座にメラニーがつっかかってきた。

 私は気にせずミートパイの一切れを彼女のお皿に。


「パイは分けなきゃ食べられないでしょ」

「食べられるわよ! 丸ごと齧ればいいじゃない!」

「それでも貴族か……」

「どうせ私は下級貴族よ! 玉の輿に乗れないただの下級令嬢よ!」


 そう言ってメラニーはお皿のパイを手で掴み、ガブリとかぶりついた。それでも貴族か……。


 これが現在生じている問題になる。

 当初は私とデュアン様のことを応援してくれていたメラニーが、私達が婚約した途端に卑屈になってしまった。

 どうやら私が侯爵夫人になる現実に改めて気付いたらしい。

 けれど、酒場巡りには誘えば来てくれるのだから天邪鬼だ。


「違うわよ! エリッサとデュアン様の邪魔をしてやろうと思っているだけなんだからね!」

「応援したり邪魔したり、メラニーはいったいどうしたいの……」


 私が尋ねると彼女はミートパイを食べる手を止めた。


「私も、高貴な婚約者が欲しい……」


 本音が出たところで、デュアン様が「そうそう」と話を変える。


「今日はもう一人、同席する者がいるのですよ。もうエリッサには話してあるのですが」


 私が相槌を打つと、メラニーは首を傾げた。


「デュアン様のお知り合いなのですか?」

「私の姉の息子、つまり甥です。そろそろ来る頃だと……、ああ、来ましたね」


 酒場に入ってきた二十代半ばの男性にデュアン様が手を振る。すると、彼は私達のテーブルにやって来て頭を下げた。


「はじめまして、デュアン様の甥のピーターです。あなたがメラニー様ですね」

「あ、はじめまして……。エリッサの友人のメラニーです」


 メラニーは少し緊張した面持ちで挨拶を返していた。

 そう、この子はやたらと度胸があるくせに、初対面の人間には固くなる傾向がある。まあ、それも最初だけなんだけど。


 すぐにメラニーとピーター様はうちとけた。お互いにお酒を片手に話が盛り上がりを見せる。


「では、ピーター様はデュアン様のお仕事を手伝っておられるのですか」

「はい、と言いましても、まだまだ足を引っ張ってばかりで、主に雑用を」

「そうですか、侯爵家のような大きなお家ではお仕事も色々とあるのですね。よし、今日は日頃の鬱憤を晴らしてください! 下級令嬢の私がおごり……ごちそうしますよ!」

「ははははは、ではお言葉に甘えてごちそうになります、メラニー様」


 ……まったくメラニーは、言葉通りに受け取って本当にピーター様を雑用係だと思っているね。


 ピーター様は謙遜してああ言っているだけだ。実際はあの若さでもうデュアン様の片腕として働いている。いずれは彼に侯爵家当主の地位を継承するつもりだと、私はデュアン様から聞かされていた。


 でも、この話はメラニーにはしない方がいいと思う。

 ……間違いなく、意識しすぎておかしな感じになるから。


 楽しそうに会話をするメラニーとピーター様を眺めつつ、私とデュアン様は笑顔で頷き合った。

 さて、傷を舐め合っていた下級令嬢二人が揃って侯爵夫人になれるかどうか。そんな未来が来るといいね。






お読みいただき、有難うございました。

書いてはみたものの、メラニーが好きとご感想をくれた方々はたぶんこの追話を読むことはないんですよね。

偶然でも気付いて読んでくれるといいなと思いました。

皆さんのご感想でメラニーもハッピーエンドになりましたよ。


また、異世界恋愛の連載も書いていますので、よろしければお読みください。

『転生幼女、教団はじめました。』

ざっくりしたあらすじ

[聖女として異世界の王国に転生した幼女ルーシャ。敵対派閥からは暗殺者を差し向けられたり、味方からは兵器として利用されそうになったりと散々なので、出奔して自由に生きていくことに。ついでに救い出した神官達が勝手にルーシャを崇める教団を作ったことで賑やかな日常を送る。一方、聖女を失った王国は滅びの道を歩むのだった。]

また、イラストレーター様によるキャラデザも小説の下に貼ってあります。

この下にリンクを設置しました。よろしければいらしてください。


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