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Curtain Rise!  作者: 風見ことは
幕間
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73/75

73話 調整



Societyの面々は、爛々と輝くルミの瞳と冷え切った猪介の瞳に晒されていた。

「じゃあ、早速!猪介くん大丈夫??」

「はい、皆さんはよろしいですか?」

「うっす!!!」

「はい」

「よろしくお願いします〜」

アンバランスなテンション感は、もはや個性と言っていいだろう。

三人が立ち位置で停止すると、猪介はルミを一瞥し音楽を再生した。


元より体格の良い高雅と陽登は相性が良く、前回と比べ粗が取れ確かに見応えが増している。

「お〜」

ルミが小さく頷きながら呟く。

足を大きく振り上げ円を描く振り付け。

前回は高雅のしなやかさが悪目立ちしていたが、タイミングが揃っているだけ見栄えがいい。

「……」

猪介は余裕のできた陽登の表情を眺め、腕を組んだ。

彼の成長は著しく、元々のアイドル好きが転じてか見せ場を意識した振り入れができている。

豹一は足元や、目の前にある壁一面の鏡を気にしている。

陽登が半歩前に出れば前に出る。逆も然り。

回転後、陽登の立ち位置が高雅へ寄れば豹一も寄る。

全体のバランス感、それを補っているのは間違いなく彼だろう。


音楽が止まると、三人も静止し一礼する。

ルミは小刻みに手を叩き、猪介もそれに釣られてゆっくりと手を打った。

「すごいすごいっ、チームとして仕上げてくれたんですねっ」

「一年しかないんで〜そういうのも意識しようってリーダーが…」

「リーダー?」

ルミが問いかけると陽登と豹一は高雅に視線を向けた。

気まずそうに半歩前へでた高雅は重々しく口を開く。

「暫定ですが…」

「いいですね!適任ですよっ!」

ルミが満足そうに呟く横で、猪介は豹一を睨みつけていた。


「講評行きましょうっ!最初がいい人っ!」

呼びかけに誰も動かないのを見ると、陽登はゆらゆらと右手を挙げた。

「じゃ〜俺、お願いしま〜す」

「猫谷さんっ!どうだった猪介くん」

「どう…いいんじゃないすか。なんつーか一番それっぽかったっすよ」

「アイドルらしさがあったよね!カメラがあったら抜かれてるだろうな!みたいな」

「…そすね」

「あと身体の使い方が凄く上手くなりました!見え方を意識したのが影響してるのかな?いい意味で慣れてきた!」

「ありがとうございます〜でもリーダーと並ぶと雑な感じするんですよね〜」

「豚座さんは音取りが細かい上に柔軟性が高いので…!別々の魅力ですよ!!」

陽登が緩く微笑み会釈すると、ルミはそのまま高雅に向き直る。


「申し上げた通り、豚座さんが一番細かいところを仕上げてくれてると思います!」

「ありがとうございます」

「お手本もたくさん見てくれたんですね!観察の細かさがそのまま動きに反映されてたと思いますっ」

高雅は別段謙遜するでもなく頷き、次の言葉を待つがルミは猪介へ視線を向けた。

「……あぁはい。豚座さんをリーダーにするってことは基準があれになるってことっすよね?いいんじゃないすか」

その発言に陽登と豹一は一瞬表情を強張らせ、ルミは口元を抑え「ふふふ」と笑う。


「そういうことだねっ!最後山羊足さんっ」

「よろしくお願いしますっ!」

「山羊足さんはなんていうか…あんまり個人の変化はなかったんだけど、凄く周りを見てるなって感じ…」

ルミは言葉を手繰り寄せるように続ける。

「それ自体はいいことだと思います!でも…なんだろう、動きそのものも合わせてるっていうか…ごめんなさい、厳しい言い方だけど印象に残らないっていう感じです」

豹一は服の裾を摘み、眉間に皺を寄せる。

「印象…」

「あ!でもでも!やっていくうちに見つけていくものだし!そのための練習でもあるので!」

ルミが困ったように猪介を見やると、彼は今にも怒鳴り出しそうなほどに豹一を睨みつけ、口を一文字に結んでた。

「あ……ええと………猪介くん?」

「……ルミ嬢がいいってんならいいんじゃないすか」

「え?な、な…なにか…ない?」

「いいっすよ」

吐き捨てるような物言いに、豹一は表情を歪める。


「なんかあんなら言ってくださいよ!!」

「…最初っから言ってんだろ、てめぇサボってんだよ」

「サボ…!?それ言ってんの先輩だけっすよ!!」

「知らねぇよ、じゃあいいんだろそれで」

ヒートアップする二人に、ルミと高雅が固まると陽登は高雅の肩を抱き苦笑いを浮かべた。

「いや!なんすか!?八つ当たり!?!そんなん言うなら筋通してくださいよ!!」

「筋ぃ?」

呆れ気味の猪介に、ルミは恐る恐る身を寄せる。

「猪介くんには、サボってるって…そう見えてるんだよね?だから…どこがそう見えるとか…きちんと説明して欲しい…かな」


猪介は深くため息を吐くと、心底面倒そうに豹一を見つめる。

「全体がどうとかバランスがとか。そんなん理由にしてんなら的外れだってんだよ」

「的外れ?!ユニットすよ!」

「城が羊太郎や良磨に合わせて歩き方崩すかよ」

「は、はあ???」

「豚座さんだってそうだろ。てめぇらに合わせてバタバタしてんのか?ちげぇだろ」

豹一は憎々しく猪介を見つめていたが、口は重く開かない。

「豹一、お前息切れてねぇな。それ以外に変わったところはどこだ?周りに合わせたじゃなくて、てめぇがやったことだよ」

「……そんなん…」

ぐっと拳を握り込み、声を震わせる豹一を皆が慎重に見守る。

その中でも猪介だけは見下すような態度を崩さない。


「そんなん言いがかりじゃないすか?!先輩が勝手な思い込みで!俺に文句言いてぇだけじゃないすか!!!」

「ああ、そうかよ。んじゃあそれでいい」

「それでいいって!散々文句つけといてそれってなんなんすか!!」

「てめぇがいいならいいってんだよ。俺に何を言わせてぇんだ?」

「だ、だからぁ…」

声を震わせる豹一を横目に、猪介は静かに入り口へ視線を向ける。

「はっきり言っておく。いずれ足引っ張んのはてめぇだぞ。」

「ぇ…?」

「俺は勝手言わせてもらった。お前も勝手にしろ」

猪介は天を仰ぐと、メガネを取り懐へしまった。

「…でも、先輩……俺、ちゃんとやってるっすよ…」

ルミは慌てて、ガックリと肩を落とす豹一の顔を覗き込む。

「こ、個性とかは!そのうち!そのうち出てきますから!」


「……何がしたいとか、俺、ないですし。何ができるか…わかんないっすよ…だから…」

「そうですよね!?まだ始まったばっかりで!」

「…お前いっつもそうだよな」

ルミは不機嫌顔の猪介を宥めるため、なんとか言葉を絞り出そうと努力していた。

しかし、猪介はそれよりも先に豹一へ一歩近づく。

「なんもやんねぇうちから、それっぽくしときゃいいと思ってんだろ」

「それっぽくって…俺、結構マジっすよ!」

「お前が本気で合わせてやんなきゃなんねぇくらい、あいつらはひでぇかよ」

「…で、でも…じゃあ…俺、何ができるんすか…先輩…?」

「知らねぇよ」

拍子抜けするような解答に、豹一が唖然と口を開くと猪介は髪を掻き上げた。


「知らねぇからやらせてんだろ。何ができてなくて何ができるか、それ判断すんのはルミ嬢だ」

「…それは…」

「俺に筋通せってんならまずルミ嬢に通せ。Curtain Riseの正解はお前にはわかんねぇよ」

「……………はい」

トーンダウンした二人に、陽登はへらへらとにじり寄る。

「まぁ〜確かに、山羊足さん必死にやってますムーブはしますよね〜」

「えぇ?!んなことないっすよ!?リーダー!違いますよね!!」

「……」

「リーダー!?」

目を閉じじっとしている高雅と、してやったりな陽登を交互に見つめ、豹一は口を尖らせる。


「…じゃあ先輩は、俺がなんかできると思ってんすか」

「サボってるつってんだろ」

「いやだから!これ以上つーか、その、なんか!なんかあると思ってんすよね!?」

「そりゃそうだろ。お前、器用だからな」

有無をいわせぬ問答に豹一が黙り込むと、猪介は襟元を正しつつ豹一を見つめた。


「豹一、気ぃ張れ」

「…うっす」

眉間に皺を寄せつつも口元を薄らと綻ばせる豹一を見て、ルミは安心したように声を出して笑った。



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