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Curtain Rise!  作者: 風見ことは
第一幕
46/46

46話 羊太郎の話



「うっわ!可愛い!僕天才!?」

復習も兼ねて公演を見返す。

ふりふり可愛い衣装に、超ポップな音楽、僕が考えた超可愛い振り付け!

夢にまで見たアイドル生活。

思い描いていたそのままが形になってる。


「ふんふん、あー…もうちょっとコマンド待ってもよかったかなぁ…Toy Boxってもっと遊びを大事にするよね…!」

何度も書き込みを加えた台本は、お母さんに見せたら捨てられちゃいそうなくらいボロボロになったけど…大切な宝物。


「…よーし」

いつもの癖でSNSを開くと、流れるように検索窓へ『Toy Box』を入力。

インフルエンサーの時からエゴサーチが習慣付いてる。


Toy Boxはまだまだ無名で…城の強火ファンらしい、怖い人が酷いことをたくさん書いてるのが流れてくる。

城がすごいモデルだったのはわかってるし、書いてることは…認めたくないけど的を得てるとも思う。


「はぁ〜こぉんな細かく見てくれるなら、たくさん褒めてくれたらいいのに!」

Toy Boxを検索ワードにすると、どうしてもこういう人ばっかりが目につく。


「かが…ようたろ…っと…僕のファンはみぃんな僕のこと大好きだもんねー!!」

案の定、ヒットするのは『かわいい』や『祝!たろちゃん念願のアイドル!』と胸踊るものばかりだ。


「ふふ、やっぱりー?あ、この人見にきてくれたんだ…!返信しちゃおかな〜?」

好意的なつぶやきの多いアカウントをクリックする。


『Toy Box可愛い〜演技も上手!』

思わず口角が上がり、すぐスワイプする。

『おもちゃの国って…ただ遊んでるだけじゃない気がする…災害とか匂わせ気になる…たろファン追う価値ありだよ!』


「わっ!ねぇ!超わかってる!すっごーい!」

そのつぶやきには複数の返信がついていた。


みんなもおんなじ気持ちかな?

もしかしてみんなもう、Toy Boxが童心の象徴とか災害は…とかわかっちゃってる?!


踊るような気持ちで返信を確認する。


『でも、たろちゃんは可哀想だよね』

……ん?


『酉脇城ってモデルだったんでしょ?なんでアイドル?』

『たろちゃんもっと難しいダンスできるのに』


…………難しいダンスが見たいのかな

僕はToy Box好きだよ。

とっても可愛くて、楽しくて…みんなは…?


『他のグループならもっと』


反射でスマートフォンを投げ捨てていた。

大きな物音に、隣の部屋から妹の苦言が飛んだ。


「……城だって頑張ってるよ…」

スマートフォンを拾い上げると、画面は待ち受けに戻っていた。


足に上手く力が入らない…

みんな、本気でそんなこと思ってるのかな。


その場に座り込んで、ぼんやりと天井を見上げる。

ふと、視界の端に入った、棚の上に鎮座するトロフィー…


難しいダンス。

それだけで手に入れたものはこんなに埃が積もってる。


「…他の…グループだったら……?」



小さな振動が、手の中で僕を呼んだ。


『羊太郎くん、ごめん…明日練習来てくれない?』

城からのメッセージにはスタンプで返信した。


冷たかったかな…?

そう思うけど、少し休まないといけない。


僕はToy Boxのヨウタロウとして、これからもみんなで…


『あのね、僕Curtain Riseに来られてよかったよ。ずっとアイドルしたかったし、演劇も楽しい城は少し不思議だけどたまにびっくりするぐらいの演技するし、良磨ちょっと頼りないけどね?優しいし、誰よりも器用になんでもできるって知ってる。ファンのみんなも喜んでくれるって思ってたし…思ってるよ。すごいダンス…そんなにしないとだめかな?そうすればみんな納得してかわいいって大好きって言ってくれるかな?ねぇどう思う??』


打ち込んだメッセージをまとめて消去する。


猪介はきっと…困っちゃうし…

マネージャーさんってそういうのじゃないらしい…から。



フォトフォルダをスクロールして、公演の中で一番可愛く撮れた自分をトリミングして…


うん、大丈夫。


みんな笑ってるし、楽しいし、プロデューサーさんも褒めてくれてるから方向性は間違ってない。



『結成二ヶ月経過〜!お馴染みのみんなも、初めましてのみんなもありがとう!これからも超頑張るね〜!!』


画像付きで投稿すると、数秒持たずに反応がついた。


『たろちゃ〜ん!お疲れ様!』

『可愛い〜!大好き!』

『最近投稿も公演も多くて嬉しいけど心配!いつもありがとう〜!』


……みんな、僕にはこうやって言ってくれる。


そうだよね、みんなだって本心でToy Boxが…なんて思ってないよね?


変な人がたくさん酷いこと言うから、それで不安になっちゃっただけだよね?


うん、大丈夫。

僕がちゃんとToy Boxってすごいんだぞ!って見せなきゃ

そうすれば変な人も飽きてくれる…


ううん、そんな人黙っちゃうくらい素敵って思ってもらえばいい!


メッセージアプリで城に『学校終わったら行くね!』と返信する。

同時に猪介にも『明日放課後行くよ〜』と送信した。


いつも通りの『承知いたしました。』って堅苦しい文章も、なんだか愛嬌に見えてきた。


だって、悪いように思えばなんでも悪くなるんだもん。

僕は絶対そうは思わない!


スマートフォンを充電器に繋ぎ、電気を消す。

早くなっていた鼓動が少しずつ落ち着くと、ゆっくりと体が溶け込むように力が抜けていく。


大丈夫。だって僕、今が一番楽しいんだから。



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