21.修復不可能。だから、さようなら
「嫌……私は……姫だった、はず。
大罪なんて……知らないわ。
殺してなんか無いもの。
眠ってるだけよ。私を騙すなら、もっと上手く……騙してよ」
ポツリと降り注ぐ液体は涙ではない。
赤く染まった目から落ちる、誰かの血だ。
ぐちゃぐちゃになる程に嘗ての姫は狂い去った。
アルガン……呪われた死神よ。どうか、すべてを元通りにして。
どんなに監禁されても、退屈で気が狂いそうでも。それでも良かった。
代わりは幾らでもいるそんな無意味な椅子に座っていても。
きっと今よりはずっと幸せなはず。
不幸が降り注いでくる。
……ああ、寒い。空腹で死んでしまいそう。
楽になりたい。罪悪感から逃れたい。一刻も早く消えてしまいたい。
「エミィ。カオスは……お兄ちゃんはそんな事望んでない!」
突如響く彼女の声。
懐かしい響きだ、カオス・ロリッタ。あなたの元へと行きたい。
棺の中で永遠に眠り続けるほうが、ずっとずっと幸せでしょ?
あなたがいなくなったセカイは退屈で、辛いの。
あなたがいないこんなセカイ、無意味でしょ?存在する価値なんて、無いでしょ?
なら……壊しちゃおっか。
「エミィ?あなたは私よ。あなたの苦しみも嘆きも全て聞こえてる。
このセカイは、あなたの為だけにあるんじゃない。そんな事分かってるでしょ?
あなたのその身勝手な行動で、何千何百の人が苦しむのよ?
理性を保ちなさい。アルガンの準備が整うまでの辛抱でしょ?このセカイを、あなたが一番愛してるんじゃないの?」
愛。
ずっと私が求めてきた感情だ。
両親から愛されたことはあった?記憶の中ではナイ。
国の将来の為に育てられ、着飾らされる。ただの人形だ。
人形は愛など求めてはいけないのだ。
「愛なんて知らないわよ」
「いい加減にしなさい。私には愛がある、あなたは私。だったらあなたにも愛があるの。
私は……あなた自身よ。あなたの中に存在してる。
あなたが間違った時には叱り、一緒に慶びを分かち合える。そんな存在なの。
あなたは今間違っている。だから私は精一杯叱ってる。
あのね、あなたは確かに、人を殺してしまった。それは大きな罪よ?
それが無罪とまかり通ることは許されない。
だけど、あなたは罪を背負って生きていかなくてはならない。
辛くても、苦しくても。
あなたに、彼らの分まで生きろなんて言わない、所詮は他人だから。
だけど、あなたが死んだら……それは一番の大罪よ」
ポタリ、ぽたり液体が落ちてゆく。
手の平に落ちたその液体は、赤くなんて染まってなかった。
私が始めて愛し……狂う程に求めたのは、あの人しかいないのだ。
召使によって殺された、彼しか愛せない。
本当は違うのかもしれない。
私が逃亡したことから彼の死は決まっていた。
私が……私がカオスを殺したんだ。
「ク…ハハ、ハ」
目から滴ったのは赤い液体と透明な何かで、狂ったように哂い続ける。
このまま朝は来ないわね。ずっと夜のまま。
「ハハハ、フハハハハク……ククク」
何が可笑しくて、何が辛くて、誰が狂ってて。
訳が分からなくなったのを他所に、銃声は容赦なく響き続ける。
エミィと叫ぶ声も掻き消されて、彼女は鮮血を吹き出した。
「ヘ……リィ……如何して」
悴んだ手、ああ何ということだ。
ヘリィが……、たった一人の、私自身が……殺された。
おねがい、冗談だって笑いなよ。
偉大な姫、エミィ・モロガンを騙したことを……認めなさいよ。
「相変わらず、馬鹿ねエミィは。
あなた今、酷い顔してるわよ?
きっと私は――…、このまま死ぬ。
だけど……私はあなた。一心同体よ。
あなたの中で――…生きるわ」
悴んだ手は凍っているかのように冷たい。
まるで……死体だ。
彼女の胸からはドクドクと容赦のないほど、赤黒い何かが溢れ出る。
血液が上がっていくのを感じる。絶望感絶望感。
如何して……如何して死ぬのがいつも私じゃないの?
アルガンは?
如何してもっと早く戦争を止めないのよ。
何事もなかったかのように散らばる人間が妬ましい。
今さら、如何して。如何して今、戦争が止るのよ。
最近、『城出姫の旅』しか更新してない気がします。
グロいの大スキなんですよーアハハ←オイ
本当に今月中完結目指してるので、他の作品は一時休止します。
今、めっちゃ話暗いですが、頑張って進めてこうと思いますので、此れからも宜しくお願いします。




