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城出姫の旅  作者: のん
忠誠と情愛の天秤
19/30

19.夜明け前の静寂を

あ、連続更新です。



「あなたが……、アルガン=エファーゴ。

 呪われた死神ね」



淡々と恐怖など除者にして話を進めるヘリィ。

未だに信じられない、彼女が自分の分身で。自分自身だということが。


「オマえたちの要求はシッテいる」

「そう、なら話は早いわ。

 戦争を止めて欲しいの、そうね。出来れば王宮の人間の記憶を奪って欲しい。

 その方が、次元を止めるのに厄介払いできるもの」

「ただでオレがオマえ達の要求を聞くと思うか?」


妖しい笑みを浮かべる青白い男。

きっとこの男は信用出来ない。いや、きっと協力はしてくれるだろう。

ただ……、最期にはきっと――…。

死神として私たちを殺す。



「分かったわ、じゃああなたの要求は何?」



黒いフード。

その裏は赤く染められている。

それだけでも恐ろしいというのに、この男の笑みは妬けに恐怖の香りがする。

分かってるんだ。この男は死神。

今まで数々の人間を殺してきたであろう悪魔。

信じられない真実でも今なら信じられる気がした。



「フふフハハ、魂だ。オレは魂が欲しい。

 人間の、憎しみに満ちたその魂がな」



まるで身体中に何かが侵入しているような気味の悪い感覚。

きっとこの死神の仕業だ。魂を……、取ろうとしている。

殺される。


「冗談は止して。

 幾ら死神でも……、あなた昔人間だったのよね?

 成り行きの死神は人の魂は奪えないわよ。

 魔女を甘くみないでちょうだい」


ピシャリとヘリィが脅す。

ここに来て、やっと納得が着いた。

ヘリィが魔方陣を描けたのも、呪文を唱えていたのも、死神の居場所を知っていたのも。

彼女が魔女だったからだ。

彼女は……魔女になったのだ。


「ナぜ知っている」

「あら、知らなかった?魔女の間では常識。

 呪われた死神、アルガンは元人間、そして王宮の門の前で処刑された大罪者」


ああ、思い出した。

彼のことはずっと前から知っていたじゃないか。

あの日、わずかな光を求めて窓を眺めていたあの日、名高い王宮の門が赤く染まった。

彼は可哀相な大罪者だ。

モロガン家に逆らうことは国に逆らう事になる。国に逆らう事は大罪だ。

彼は何もしていない。ただ……、王宮に閉じ込められる可哀相な姫を救おうとしただけだったのに。



「処刑された後、憎しみに満ちた魂はそのまま、この森へと辿りついた。

 憎しみに駆られる余り、魂は腐り果てた。

 それを見かねたアイツが……あなたを呪い、死神にしたのよね?」


アイツ……、それはきっとヘリィが言っていたアイツのことだ。

私の記憶を奪った、未だかつて思い出せない記憶に存在する人物。

誰なんだ、一体……誰なんだ。



「ウるさイ。オレは……もう人間じゃない。

 魂に人間の要素など1ミリタリトモ残っていない。

 全て……死神だ」


「だったら私たちの要求呑むかしら?」

「……オレの要求は――…。

 オレの願いはあれから変わってなどいない。

 アイツを殺して欲しい。

 その為にオレはここまで死神としてやってこれた。

 アイツを殺すという最終目的を果たすために、な」



何ということだろう。

この男は憎しみという感情だけでここまで突き進んでこれたのだ。

孤独、悲しみ。

そんな生活から男を救った感情、憎しみ。

憎しみがなければきっとこの男の魂は……あの日からずっとこの森に漂い続けていたはずだ。



「約束する。

 私たちがアイツを倒すから。

 だからあなたは、私たちの要求を呑んで」

「――…分かった」



奇妙な取引。

後0.1秒、この館と共に孤独な男は姿を消した。




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