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もう一人の私
味のしないガムを噛んでいると、先輩が訊いてきた。
「味、しないでしょう?」
こんな不味いものは食べたことがない。ネチャネチャとした食感だけが繰り返される。
「それはね、あなたにあげたんじゃないのよ。あなたの中の女の子の好物なの。その子が味わってるからあなたには味がしない」
「それって……」
「多重人格よ」
「知ってたんですか?」
「ええ、でも口止めされてたの、あなたが自分からガムを噛むまでは黙っててって」
「誰に?」
先輩は、身を乗り出して低い声で言った。
「あなたによ」
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