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ホリゾント・ヘル  作者: 神無時雨
第三章 揺蕩う飛花に山おろし

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三章10話 勝利の息吹

早良親王を突き刺した凱羅。剣を抜き放ち、飛び退って着地。


「なんや…?えらい静かやな。」


すると、今まで無言だった早良親王が、初めて言葉を発する。


「…。私がなぜ、最強の怨霊と呼ばれているかわかるか…?」


朔は困惑する。


「なんでって…?」


「…こう言うことだ。」


ぐらり、と早良親王が倒れる。そして、体から黒いエフェクトが走る。


パンッ、と破裂音がして、早良親王はいなくなった。大量の狼のような霊を残して。その狼は先ほどの針と球と同じどす黒い紫色。おそらく数万体はいるだろうか。


「…!!捌ききれん…!!」


「この量は…まずい!!!」


殲滅戦が、始まる。


▲ ▲ ▲

マリンは、意識が朦朧としていた。

先ほどマリンが雷を使ったのを見て、一度にまとめて感電させられると面倒だと思ったのか、数個の生首たちは髪の毛を解き、バラバラになり襲ってきた。


「ゲッ…!!」


マリンは『冥王の霊笏』で応戦するが、すぐに水を被ってしまう。ぐん、と服が下に引っ張られる。また服に通電させ乾かそうとした隙をつかれ、マリンは首に生首の髪の毛を巻かれてしまう。動きが止まったマリン。チャンスとばかりに他の生首も集まってきて巻きつけを強める。

流石に閻魔の娘といえども酸欠はたまらない。マリンはぐったりとして『冥王の霊笏』を取り落としてしまう。


昴岩はマリンが生首の群れと戦っているところを目撃した。彼は状況が良くない(首が絞められている)ことに気づく。自分の武器である大きな両刃の斧を握りしめて走り出すが、どう見ても間に合わない。マリンはもう力が入っていない。


(まずい!!これはマジで…!!あの子がやられてしまう…!!!)


▲ ▲ ▲

男を追う力樹と輝登。やっと輝登が男の姿を視認した。


「…!!あれは…。坂本龍馬さんかもしれません。」


「なるほど…つまりあの銃はS &W Model 2 Army、つまりリボルバーってことですか。」


「ええ。発砲音も大きいですし、」


そこでまた男が撃つ。輝登は言葉を続ける。


「撃つ時に発射ガスが出ています。回転式拳銃の可能性が高いです。」


「…つまりあまり隙がないってことですね。」


輝登は銃を構える。


「射程外から狙ってみます。」


そう、輝登の銃は遠距離狙撃用。わざわざ相手の射程に入らなくてもいいのだ。輝登は十分離れた屋根の上へ。


「さあ、行きますよ。」


輝登は狙い撃ちを始めるも、相手が上手に避けるため、全然当たらない。時間だけが過ぎていく。


▲ ▲ ▲

伐は受け流されることを避けるため、突くのではなく槍の穂先で斬ろうとしてくる。


「…!!」


それを手の甲で受け止める万里亜。鈍い衝撃が走る。


「…バツ!!お願い!正気に戻って!!」


「……」


伐はまだ目を光らせたまま向かってくる。彼は槍の柄尻を持ち、穂先を振り回してくる。遠心力を利用した強力な攻撃。それを受け止める。左手の鉤爪が折れる。


「わお。こりゃまずい…!!」


しかし鋼を破壊しつつも伐の勢いは止まらない。万里亜は受け止めるのではなく避けることに専念する。しかし狭い境内では、いずれ限界が来る。万里亜は振り下ろされる穂先の横を足で蹴り叩くも、稼げる時間は数秒。


「カズヒト…遅いよ…!!」


▲ ▲ ▲

京都の大空を舞うつばさと陽葉。つばさは右手を顔の右半分に置き、左目を閉じて景色を統一する。


「まだ…行けるでしょ…!『ズームイン』…!!」


金烏の視力の限界に挑戦。地獄の鳥だからか、視力がすごく良い。つばさの視界には、前述のピンチの仲間たちの姿が目に入る。その姿勢のままつばさは陽葉に言う。


「今から私が顔を向けた方向に正確に撃ってください!!」


「…任せて。」


つばさの指示に合わせ、陽葉は頼もしい味方たちへの救援の一撃をそれぞれ放ったのだった。


「これで行けそう?」


つばさが答える。


「ありがとうございます。行きましょう!!」


つばさと陽葉は澪のところまで急ぐ。つばさはさっき見た景色の疑問点を挙げてみる。


「…そういえば、万里亜さんが前見た銃装備じゃなかったのってなんでですか?」


「ああ。彼女遠近両方に適性があるんだ。だから今鉄甲なんだったら近接の方が良かったんだと思うよ。…ってかすごいね。本当に離れた味方の状況が見えるなんて。」


「えへへ。おばあちゃんからヒントもらったんです。」


そんなことを喋りながら、でも全速力で貴船神社に戻って行ったのだった。


そして、師団員たちは2人の能力に驚くことになるのだった。


▲ ▲ ▲

マリンの首にまとわりつく髪の毛と生首。それらを引き剥がすような衝撃が走る。


「…っ!!ゴホッ…!!」


解放されたマリンは酸素を求め喘ぐ。そこにやっと昴岩が到着。


「良く耐え切ったな!!」


彼はそう言い、その筋肉質な腕で豪快な一撃を繰り出す。生首が吹っ飛ぶ。


「っはぁ…!!はぁっ…!!あっぶなー…!」


あのままならやられていたはずだ。誰が助けてくれたのかはわからないが、これでまた戦える。マリンは昴岩の横に並ぶ。川の上に再集結した生首に向けて笏を突きつける。


「そろそろ覚悟しなよ。」


昴岩が一足飛びに距離を縮め、生首を斬ろうとするが、かわされる。彼の斧は大きく水を切り、飛沫が撒き散らされる。攻撃失敗か?いや、違う。その飛沫を突き抜けてマリンが飛び出す。


「最短距離で…仕留める!!」


マリンは笏の先を突き出し生首に向かっていく。見え見えの一撃。

これでは避けられて終わーーー


ガシッ。


マリンは笏の攻撃すら囮にして、両手で生首を掴む。背後に笏が落ちる音がするが、それはどうでも良い。


「へへっ…!やっと捕まえた!!最高出力、くらってみな!!!」


マリンがそう言うと、周囲が瞬間的に青白く発光。


バヂバヂバヂ!!!


ものすごい音がし、生首は飛行のコントロールを失ったようにフラフラする。マリンはそこから飛びのきながら、最後の一撃を見守る。


「昴岩さん!!お願いします!!!」


それに答えることすらせず、深い息を吐き切った昴岩は飛び上がり、縦回転をしつつ生首に迫る。生首はもう避けられない。遠心力で上増しした重い一撃が突き刺さる。強烈に叩き落とされた生首は、緑のオーラを出しながら消えてゆく。


「…終わった…!!」


マリンが腰を抜かすと、昴岩が頭をわしゃわしゃと撫でてくれる。


「よく頑張った…!!すごいぞ!」


ともかく、これで休め


「ちょっと待ったーーー!!!」


大声の主は、肩で息をする一仁。


「すまねぇが、来てくれねぇか。伐が…操られてんだよ…!!」


昴岩は瞠目して驚くが、マリンは不敵に微笑む。


「先輩方。ちょっとあたしをそこまで運んでくださいな。なんとかなるかもしれません。」


3人は移動を開始した。


▲ ▲ ▲

今まで動き回っていた男が、急に何かを察したかのようにピタッと止まる。数瞬遅れて周囲の地面が余す所なく爆ぜる。あまりのことに呆然としかける輝登だが、照準を合わせ撃つ。


「ここしかありません…!!」


男は、しかし自身の銃を振り切って弾く。

せっかくのチャンスがーーー


「…って思いました?」


輝登がイタズラっぽく笑った時、すでに男の体に銃弾がめり込んでいた。先ほどの一撃の後、間髪入れず全く同じ軌道でもう一発撃っておいたのだ。

男の動きが鈍る。そこを逃すまいと力樹が追撃。男が吹っ飛んでいく。力樹は尚も追いかけ追撃を入れまくる。輝登の弾丸が男のリボルバーを弾き飛ばす。これで相手の攻撃手段を奪った。男の放物運動が止まった。男はゆるゆると立ち上がり、どこからか刀を抜く。


「…ここでやらんと龍馬の名折れじゃきに。行くぜよ。」


記憶にある限り初めて男が喋り、力樹に向かってくる。しかし、近接戦に持ち込んだ。


「輝登さんは乃蒼さんの救援に!!!」


力樹は大声で叫び、自身の戦いに没頭し始める。


一方、きちんと聞こえていた輝登は屋根を飛び移って乃蒼の元へ。ほどなくしてたどり着く。しかし、そこの光景は、割り込みを許さないようなものだった。


乃蒼はいつでもテンションがフラットである。いつも気だるげな表情を浮かべている。でも。刀とナイフのリーチの差。人数の差。負傷。不利で不利で仕方ないはずなのに。これがゲームならクソゲーと割り切ってやめるのに。


(面白い…!これが…高揚感…!!)


彼は今、最高にトランスしている。左から切り掛かってきた藩士を体捌きのみでかわし、その勢いで近くの壁を蹴って別の藩士の頭上にナイフを振り下ろす。弾かれる。回転しつつその藩士の脇腹をえぐってやった。


(ああ…!スカしてちゃ見えない世界があるんだ…!!)


後ろから足を狙って低い一閃がくる。その刀を思いっきり踏み抜き、武器破壊。それに戸惑う藩士の1人に肉薄。両手を忙しなく動かし、致命傷レベルで切り刻む。もう彼に用はないので蹴り飛ばして近くの川に落とす。

残り2人。


(輝登くん…すごいタイミング待ってくれてるな…。悪いけど、そんな隙は多分ないよ。)


地面を強く蹴り、1人の刀を受け止め、もう1人に足払いをかける。ナイフを上に投げ上げ、近くの甕を倒れている1人に全力でぶつける。落ちてきたナイフをキャッチするが早いか、やっと起き上がったそいつに切り掛かる。


鋼が打ち合う甲高い音が響く。少し間が空いた時、乃蒼は後ろを向いて逃げ出す。近くのコンビニに入る。藩士が追いかけてくる。藩士の後ろにごとん、とペットボトル飲料が落ちる。それで振り向いた藩士の後ろに乃蒼が現れる。


「残念。こっちでした。」


そのまま乃蒼は容赦なく首を刎ねる。

残り1人。体当たりの要領で藩士を店外に吹っ飛ばす。すぐに銃声が何発もする。


(おっ援護か。ありがたいけど…今はな。)


乃蒼は銃に翻弄される藩士と距離を詰める。藩士は斬られまいととにかく刀を合わせてくる。しかし。


「手数はこっちの方が多いんだよね。」


左手のナイフで刀をロック。右手で片手薙ぎ。上に下に斬り払う。たまらず瀕死の藩士が後ろ飛びで逃げようとするが、足元のゴツゴツした拳大の石を投擲し、それと同時に地面を蹴る。藩士が石を刀で弾いた隙に、乃蒼は心臓と思しきところに右手のナイフを突き刺す。


(っし捉えた…!!)


あとはそのままめった刺し。藩士の全身から緑のオーラが溢れ出し、蒸発するように消えていく。


「…ふう。」


輝登が興奮して駆け寄ってくる。彼に褒められまくり、乃蒼は照れたのだった。


◆ ◆ ◆

強烈な西日の中、力樹と男は動かずに睨み合っている。力樹はわざと視線を泳がせる。チャンスとばかりに男が飛びかかってくる。恐ろしい速度だ。しかし。力樹はふっ、と男の前から消える。周りを見回す男。その背後に力樹が逆さまに降ってくる。


「近接戦になった時点で、あなたの負けは決まっていたんですよ。」


その言葉を最後に、力樹の武器がめったやたらに男を切り裂き、最後に大きな刃を胴の中央にねじ込む。


「…見事…!」


そう言って、男はオーラを出しつつ消えていく。力樹は男が振る刀を足場に、飛び込み前転のように背後に回り込んでいたのだった。

彼は空を見上げる。


「他のところも無事に終わってくれると良いのですが…。」


◆ ◆ ◆

振り回される槍にやられると思って万里亜が目を閉じた時、伐が吹き飛ぶ。驚愕で目を開けると、彼の白衣、袴に多数の穴が開き、後ろの壁のところまで飛んでいた。まるで縫い付けられたように。


「よくわかんないけど…ありがとう!!」


万里亜が立て直した時、一仁の焦った声が飛び込んでくる。


「…すまん!!遅れた!」


「万里亜先輩!!」


マリンが駆けてくる。昴岩におんぶされてここまできたので体力が回復した。マリンは周囲を見ただけで状況がわかったらしい。


「操られてるね…。」


「崇徳上皇らしいぞ…」


マリンと一仁が意見を交換する。


「まあ、操ってる人が分かれば十分。」


マリンが言った時、伐が復活し、飛びかかってくる。それをいなしながらマリンは言う。


「あたしの雷はね、個人に対して落とすんだよ。崇徳さん、あなた閻魔帳に載ってるでしょ?」


伐が槍を横に振る。マリンはそれをリンボーダンスのように上体をそらして回避。左手をピストルの形にして言う。


「地獄でおねんねしな。『裁きの雷』。」


伐の体内で何かが爆ぜているかのように、伐が倒れたあと体をのたうち回らせるが、それもすぐにおさまる。彼はゆっくり目を開ける。


「…あれ…?俺は一体…」


「「もどったああああああ!!!」」


マリンと万里亜の声がユニゾン。周りに霊の気配もなくなった。


「ここもクリアか。」


その昴岩の言葉を皮切りに、夕焼けに包まれたその場は戦勝ムードに包まれたのだった。


▲ ▲ ▲

「これは…まずいぞ…!!」


目の前の、早良親王の置き土産である狼たち。それらはまさかの自己増殖を繰り返し、瞬時に恐ろしい数に膨れ上がる。朔が呆気に取られていると、上空から不可視の衝撃が訪れる。それは狼の数を大いに減らしていった。


「…陽葉か。」


攻撃の主を理解した凱羅は、この精密射撃ぶりに驚く。彼はつばさが陽葉の近くにいることをまだ知らない。


「行くで。」


凱羅と朔は駆け出し、オオカミの数を減らしにかかる。しかし圧倒的な増え方に、2人の攻撃は間に合わない。


「…ここの敷地外に出したらあかん!!」


「そんなことになったら…本当に大惨事だ…!!」


だが現実はそううまくはいかない。


「リゲル・オリオン・ブレイク!!」


上空から凱羅が直刀を叩きつけたあと衝撃で浮かせた狼たちを切り刻んでも、


「やあああ!!!」


朔が必死に周囲に対処してもキリがない。このままでは本当に止められなくなってしまう。


しかし。


「っしゃ!!避難誘導組、合流!!」


朔が驚いて見ると、入り口に美羽と櫻田姉弟が立っている。美羽は大きなガトリング銃を携えている。櫻田姉弟の姉、雛はレイピアのような細い剣を、弟、弥次郎は峰が反り上がっている青龍刀を構えている。


「行くぞぉー!!!」


3人が朔と凱羅に加勢し始める。だいぶ減りが早くなってきた。


「そろそろ詰めるで。『天狼・牙奏爪奏(がそうそうそう)』!!」


周囲に鋭利な風が吹き荒れる。凱羅の四方八方が霧散する。


「つ…強え…」


朔は桁外れなパワーに負けないように剣を振る。あと少しだ。朔の宿霊剣が、凱羅の直刀が、雛のレイピアが、弥次郎の青龍刀が、美羽のガトリング銃が、敵を撃滅する。

そして。


「…っそこ!!!」


最後の一匹を、朔が刈り取る。そして数秒、全員が周囲を見回したのち、どっと尻餅をつく。


「お…終わった…!!」


「…3人とも…きてくれてありがとうな。」


「い…いえいえ…!!」


朔は宿霊剣を鞘にしまう。その刃は沈みかけの太陽の残光を反射して赤く光る。朔たちは、疲労を訴える体に鞭打ち立ち上がる。まだ、ここで止まれない。何が起こるかはわからない。


「本部…戻るで。」


「「「「はい!!」」」」


そして、物語は最後の戦場へと移る。


◆ ◆ ◆

澪は陽の落ちた貴船神社の石段中盤でかれこれ数時間も立ち止まっていた。別にサボっていたわけではない。しかし、おーちゃんも澪も進もうとすると体がさまざまな変調を訴えるのだ。悪寒がする。耳鳴りがする。目が眩む。明らかに普通だとは思えない。


「ッ!!!」


真横から突き刺さる殺意。澪は一切躊躇することなく後ろに飛びすさり階段を転げ落ちる。優しいおーちゃんがクッションになってくれ、怪我はない。


「ドうして、逃ゲルの?」


あまりにも不気味な声に澪が階段の上を見上げると、そこにはボロボロの白装束を着ている、霊だと思われる、長い髪を下ろした女がいた。と言うのも、顔には般若の面をつけていて表情がわからないからだ。頭にはロウソクを左右に一本ずつ結え付け、手には藁人形、五寸釘、金槌を持っている。首には鏡がぶら下がっていて、高下駄を履いている。

…明らかに丑の刻参りの格好である。状況が状況であるため、澪は何の言葉も返せない。何が死に直結するかわからない。


その時、野生の猪が女めがけて飛び出してくる。


「邪魔ヨ!!」


女は下駄にも関わらずうまくかわしながら釘で猪を引っ掻く。そして女はその血のついた釘を、藁人形に打ち込んだ。


パギャッ、と異様な音が鳴り、猪の体が空中で四散する。その生臭い血を浴びながら、澪は悟る。


真名はこの女に傷をつけられ、腕を吹き飛ばされたのだと。


(今のを見るに…無条件では発動できない。)


と言うかもし無条件ならチートである。一番あり得る媒体は。


(血…もしくは肉だと思う。…と言うことは。)


澪は横目でおーちゃんを見る。


(この子は霊体だから血肉っていう概念はないはず…!なら、おーちゃんに頑張ってもらうのが勝利条件…!!)


澪は立ち上がる。


「頼むよ!!おーちゃん!!!」


澪は自身の装備のうち、相手の行動を阻害するものを選んで取り出す。


「時間稼ぎ…カしラ。残念ダったワね。この周辺にはアなたがサッき苦シんダ結界ガ張られテいるノよ。何人たりトモ入っテこれナいわ。」


澪は救援が絶望的であることを噛み締める。そんなことが、折れる理由になるものか。


「はあっ!!」


澪が煙幕弾を投げるのに合わせ、おーちゃんがその神出鬼没を活かして女を攻撃する。女はかわし続ける。


(やっぱり作戦は合ってる。あの人はおーちゃんを攻撃する手段は…)


パギャッ。


聞こえてはいけない音が聞こえた。聞こえるはずのない音が。

煙が晴れたあと、澪の視界には女しかいなかった。おーちゃんが、やられてしまった。


「霊が相手でモ、関係ナイのヨ。さア、観念シなサイ。」


女が下駄を履いているとは思えない速度で距離を詰めてくる。朔たちのような刀などの武器を持たない澪には、迎撃手段はない。


(まずっ…!!)


作戦は、最初から機能していなかった。相手の能力をみくびった報いだ。誰も、助けに来れる人なんていない。

澪はここで、終わり――――


その時、閃光が走った。夜闇を切り裂く、鮮烈な金の光が。


「ナに!?!?」


女が吹っ飛ぶ。


そう、助けに来られる人はいなかった。

でも、矢なら別だ。


「うひゃー…あっぶな…!!澪ちゃん、大丈夫?」


そう言って、通ってこられないはずの参道を普通に登ってきたのは陽葉。そしてつばさ。


「すごい体調悪かったけど、撃ったら楽になったよ。」


「攻撃を喰らって能力が弱まったんだね。」


2人は澪に手を差し出しながら言う。


「あとは任せて。」

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