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輪廻転生って信じる?  作者: Lynx097
十章_戦技舞闘会

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748話_side_Sol_講義棟

・収益化設定をオンにしてみました。折角なんでね!



 ~"武神"ソル~



 『戦技舞闘会(アースラグナ)』のエントリー期間が最終日を迎えた今日、放課後になって私は学生ロビーを訪れていた。目的はロビーに併設されているラウンジの一角に居るであろう、友人に会うためだ。

 探す必要はない。何故ならば最近の彼女は最早定位置というか指定席と言ってもいいくらいに常に同じ場所に居るからだ。ロビーのほうからもよく見える席に腰掛けているウィスタリアカラーの人影は、私の友人のレーナんことマクダレーナ・エデルトルート・カマセーヌである。

 彼女が最近ずっとあの席に座っているのは、舞闘会(アースラグナ)に参加するためにチームメンバーを募るのが目的らしい。レーナんには彼女特有の美学というかこだわりがあるらしくて、強者である自分は望まれる立場でないと気が済まないようだ。つまり自分からメンバー探しをすることはプライドが許さないので、誰かが声を掛けてくれるのをああして待っているのだ。とても目につきやすい場所で。



「……うーん」



 レーナんの姿を遠目に眺めつつ、私は内心で首を傾げていた。

 最終日の今日も今日とて彼女があの場に居るということは、今をもって彼女をチームに誘う者は誰も現れていないということだ。

 私はそれが少々腑に落ちない。

 だってレーナんといえば『激震』の二つ名で知られる強力無比な魔法使いである。魔物相手の近接戦闘は勿論のこと、遠距離攻撃や範囲攻撃もお手の物で、しかもそのすべてが尋常ならざる威力を発揮する。しかも現役にして歴戦の討伐者でもある彼女は実戦経験も豊富で、先の『ブラッドフォード・オンスロート』においては単独討伐数のレコードまで打ち立てているそうではないか。

 だからこそ不思議だ。何故彼女を誘う者が現れないのか。舞闘会(アースラグナ)で優勝を狙う学生にとっては喉から手が出るほどに欲しい戦力に違いないのに。男子でも、女子でも、どちらからでも引く手数多であるのが本来あるべき光景ではないのか。

 レーナんには彼女を特別慕っている下級生の女子が二人居て、彼女達もレーナんをサポートするためにそれとなく他学生に声を掛けたり噂を流したりしているようだが、それも効果なしだ。


 エントリーの締め切りは今日の十七時。つまりもう幾許の猶予もないということだ。

 レーナんはああいう性格の人なので、意地を張り通して刻限まで待ちの姿勢を崩さないのだろうけど、流石にああしてぽつんと独りで座っているのを、友人として放ってはおけない。

 というわけで、私はラウンジに踏み込むとレーナんの居るテーブル席の、彼女の向かいに腰を下ろした。



「あらソルるん。ごきげんよう」


「ごきげんようレーナん。首尾はどうだい?」



 私の問いに、レーナんは『見ての通りだ』と言わんばかりに肩を竦めて見せた。

 彼女の眼前には冷めた紅茶と食べかけの菓子があって、時間潰しのための本はとうに読み終わってしまったらしく閉じて机上に置かれていた。

 たぶん、放課後になってすぐに席に着き、それからずっとこうしていたのだろう。

 私がそのことに疑問を切り出すよりも先に、レーナんのほうから話を振ってきた。



「そういう貴女はどうですの? 意中のアシュタルテさんとは仲良くなれましたの?」


「おかげさまで、ってとこかな」



 先日のレーナんのアドバイスのおかげで、アシュタルテさんともマリアさんとも良好な関係を築けていると思う。まあ、私が勝手にそう思っているだけなので向こうがどう思っているかはわからないけど。

 なんというか、変な感じ、マリアさんとはお互いにじりじりと距離を測り合っているような状態で、アシュタルテさんには可愛がってもらっているというか。一応、私のほうがアシュタルテさんよりも二つも年上なのだが、アリーナでの勝敗で格付けが済んでしまったというか、その距離感がしっくりくるのである。

 ちなみに、なのでマリアさんとは打ち解けているとはとても言えない状態なんだけど、アシュタルテさん曰く『マリア相手にそれならば充分に親密だ』ということらしい。まあ、なんとなく察するところではある。



「ここのところ、放課後に忙しそうにしていたのはその関係?」



 レーナんからの続けての問いに、私は頷いた。

 ここのところレーナんの様子を伺いに来ることもままならなかったのは、私のほうも用事があったからだ。

 というのも、



「実はアシュタルテさんからの打診で、舞闘会(アースラグナ)に使うユニフォームのテスターをやらせてもらうことになって」


「ユニフォームのテスター? この時期にですか?」



 目を丸くするレーナんの驚きも尤もである。だって今日エントリーが終わって、来週からは予選が始まるというのにユニフォームのテストなどしている場合ではないのが普通の感覚である。

 しかし突貫スケジュールで新ユニフォームの開発をしているのは私にも大いに責任があるというか、早い話が私とアシュタルテさんがアリーナで試合をした結果として既存の学院指定の運動着では不足があるということが判明してしまったからだ。

 最終的に素っ裸だったから。私達あの時。観戦客も居る本番で、流石に同じことを起こすわけにはいかないのだ。


 なお、本当に一から開発をしているわけではなくて、装備としての雛型は既に存在していて、それを今回用に落とし込む作業が主となるらしい。なので既にプロトタイプが作成されていて、テスターとして私に声が掛かったというわけだ。



「ちなみに、どんな感じの装備になるのです?」


「たぶんだけど、ボディスーツ的なインナータイプになると思うよ」



 私が技研でテストをしているプロトタイプは全身をぴっちりと覆うスーツみたいな感じで、おそらく完成品も同様となるため、本番ではその上に別の衣服なり装備なりを着込むことになるだろう。

 即ち、仮に装備が全部吹っ飛んでも裸になることを防ぐための最終防衛線ということだ。完全にボディラインが出るタイプのインナーなのでそれはそれで恥ずかしいのかもしれないが、裸になるよりは万倍マシだろう。防具として上等にしすぎると、それはそれで舞闘会(アースラグナ)の試合展開そのものに影響を与えかねないのが難しく、開発しているアシュタルテさんや技研の人達はその辺の塩梅を調整するのに一番苦労しているみたいだ。

 デザインも考慮されていて、それ単体でもスポーツウェアとして通用するようなものにするつもりだとアシュタルテさんは語っていた。その辺ちゃんと考えないと出場者が『ダサいから着たくない!』って言い出しかねないとかなんとか。



「それって、男子も同じ?」


「うん、勿論。だから男子学生のテスターも居るよ」



 そう、私てきにはそれも結構嬉しくて。というのも男子のテスターはコーリッジ君という一年生が務めているのだけど、耐久性などの試験のためにテスター同士で模擬戦を行う機会が結構あるのだ。

 で、コーリッジ君の戦法がまた面白くて。

 アシュタルテさんとの試合で本場の『詠唱術(スペルキャスト)』の奥深さを嫌と言うほど知ったつもりになっていたが、コーリッジ君の魔法はアシュタルテさんとはまた違う方向で非常に特殊なのだ。

 コーリッジ君の話をすると、レーナんは得心がいった様子を見せた。



「確かに、彼は中々奇抜な魔法を使いますわね」


「あれ? レーナん知り合い?」


「多少ね」



 私は知らなかったが、なんでもコーリッジ君は先の長期休暇には『剣の誓い』――つまりレーナんの所属クランに一時参加して討伐者活動を行っていたらしい。ということはレーナんがレコードを打ち立てた『オンスロート』にも、同じ陣営で参戦していたということだ。

 なるほど、と私も得心する。

 コーリッジ君といえばアシュタルテさんと同じく、年下とは思えないほどに落ち着き払った男の子だと思ったが、過酷な戦場を経験しているが故の確かな実力と立ち居振る舞いなのだろう。


 っと、いけないいけない。

 つい自分のことばかり喋ってしまった。

 私がここに来た目的を思い出し、今度はこちらからレーナんへと問い掛ける。



「ねぇレーナん、ちょっと気になることがあるんだけど」


「どうぞ?」


「これだけわかりやすく待ってても誰もレーナんを誘いに来ないって、ちょっとおかしくないかな?」



 もしかすると、私が見ていないところで勧誘はされていて、しかしレーナんの目に適わなかったためにお断りしていただけ、という可能性も考えられたが、レーナん曰くそれもないとのこと。

 つまり、本当に誰も来ていないのだ。

 その疑問を投げ掛けると、レーナんは「ああ、それね」と苦笑を浮かべて見せた。



「大方、どこかの誰かが邪魔でもしているのでしょう」


「邪魔? なんで? てか誰が?」



 きょとんとして困惑するしかない私の前で、レーナんは物憂げな溜息を吐いた。



「実はわたくしには、家が決めた婚約者が居たのです」


「あ、そうなんだ?」



 まあ、レーナんは由緒正しい伯爵家のご令嬢なのだし、そういうこともあるのだろう。

 私が気になったのは彼女の表現が過去形で語られたところだ。



「居た、ってことは……」


「一応言っておきますが、残念ながら死んではおりません。単純に、とうの昔に婚約関係は破棄されているというだけのことです」


「残念なんだね……」



 その言い草だけで、察しの悪い私でもなんとなく話の流れが読めてしまう。

 解消ではなく、破棄って。穏やかじゃないなぁ。



「ええと、つまりその、元婚約者? がレーナんの邪魔をしてるってこと?」


「でしょうね。いかにもアレのやりそうなことですわ」


「ええーと…………なんで?」



 その元婚約者とやらの人となりを知らないが、そうでなくても微塵も理由がわからない。

 レーナんの実家の家格を考えれば婚約相手もそれなりの貴族ではあるだろうから、その影響力を駆使してレーナんの邪魔をしているということなのだろうが。

 つまり、レーナんをチームに誘おうと考える男子学生が現れないように裏で牽制しているとか、そういう感じの。



「気になるのでしたら、このままここに居ればよいですわ」


「え?」


「アレのことです。どうせもうすぐ現れますわ」



 それは要するに、レーナんの顔を見るためにってこと?

 勿論、この場合は悪い意味で。

 ソイツが邪魔をしたせいで誰もチームに誘ってくれずに独りぽつんと座っていたレーナんを笑いに来るのかな。





 …………。





 どうしよう。ちょっと殴っちゃうかも。



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