第68話 副業の漫画
キシャナはいくつか簡単なレシピ料理をメモに書いてサリーニャに渡してあげた。
「まだ乾燥昆布と味噌がたくさんあるから、具材次第で色々な味噌汁を作れるよ」
「自分が作った料理より他人が作った料理の方が美味しく感じるのよね」
「その気持ちは分かるよ。私も自分の料理よりシェーナの料理が好きだな」
「やっぱりそう思うよね! 人妻ダークエルフや女騎士が作る料理は……何ていうか家庭的で温かくて愛情があるのよ」
キシャナとサリーニャは意気投合して話が盛り上がる。
たしかにシェーナも自分の料理よりキシャナの料理が口に合う。
シェーナは美味しく料理を食べてもらいたいと思って提供しているので、その思いがサリーニャに伝わってくれたのは素直に嬉しい。きっとキシャナも同じ思いで料理を提供しているのだろう。
「でも、自炊は大切だからね。俺は錬金術と料理は一から素材や食材を使って品物を完成させるところは同じだと思うよ。天才的なサリーニャなら、きっと美味しい料理を作れる。面倒くさがらずに頑張ろう」
「まあ……君がそこまで言うなら頑張ってみるわ。暇な時にでも、君が私の料理を味見に来なさいよ。他人の評価を参考にしながら改良していくわ」
「俺でよければ、喜んで味見に行くよ」
やる気を出してくれただけでも、一歩前進だとシェーナは思う。
食事を堪能した後は三人で食器を片付け終えると、サリーニャはシェーナ達を最奥にある部屋へと通す。
そこには広い空間の壁に本棚が並べられて、大量の本が収納されている。
その様子は、まるで図書館のようだ。
「すごい量の本だね。錬金術に関する書物とかなの?」
「いいえ、全部漫画よ」
「えっ!? これ全部そうなのかい」
「私が小さい頃から描いていた物もあるから、これぐらいの量になるわね。常連のお客さんにはここを案内して好きな漫画を選んでもらっているわ。ちなみに錬金術の書物は上階の工房にあるから一緒にしていないわよ」
漫画は地下施設が完成するまで居住地区の平屋を一軒借りて保管していたらしい。
幼年漫画、少年漫画、少女漫画、青年漫画、女性漫画と対象読者を分類して、さらにジャンル別による分類もされている。
「何か読んでみたい漫画はある?」
「そうだな……ファンタジー漫画とかはあるの?」
「あるわよ。少年漫画と青年漫画の区画にいくつかあるから、お好きな物を手に取ってどうぞ」
まるで図書館にいる司書みたいだ。
サリーニャはシェーナが求めている漫画が置かれている本棚へ案内すると、キシャナも同様にサリーニャから聞き出す。
シェーナは適当に本棚から一冊選んで手に取ると、『魔王と勇者の一騎打ち』と書かれたタイトルの漫画だ。
その場で立ち読みすると、絵の構図や登場人物もしっかり描かれていて物語に引き込まれる。




