第8話 嫌われ者
「……あら?」
甘ったるくて反吐が出そうなやり取り(※被害者:オレ&ゲイブン)をしつつ講義室に到着した時、真っ先に異変に気付いたのはユルルア姫だった。
「これは、どうしたのでしょう……?」
オレ達も一緒に首を傾げた。
(おい、何で半分近く生徒がいないんだ? 特待生のほとんどがいないぞ? もうすぐ講義が始まるはずだろ? 講義室を間違えたのか?)
(ユルルアがもし間違えたとしたら、余程のことがあったのだろうが……)
「この後で講話がありますから、講義室が急に変更になったのかしら……?」
少し考えて、ユルルア姫が一人の女子学院生に声をかける。
「……いきなり御免なさい! ねえ、そこの貴女!」
声をかけられた彼女や彼ら、僅かな平民の特待生達は教室の隅で固まって話し合っていた。
「一限目のマーロウスントの公用語の講義、この講義室で行われるのですわよね――?」
こちらを見た、彼ら彼女らは蒼白な顔色をしていた。
どうしたんだ、とテオが問い詰める前。
彼ら特待生達はお互いの顔を見合わせると、テオ達の前でいきなり全員揃って土下座したのだ。
「お助け下さい!」
「無礼も不敬も承知の上です!」
「後で僕達全員、如何様な御沙汰も受けます!」
「――どうか、どうか!」
「第十二皇子殿下! お助け下さい!」
◆
皇族の中で、テオは『厄介者』である。
皇族として生まれたが、今は公の場でまともに働いていないからだ。
処刑の後遺症でオレがいなければ歩くこともままならない上、皇太子の同母弟だから、まだ仕方のない『厄介者』で済んでいる――とも言える。
『ああやって【黒葉宮】で不遇なまま、一生を過ごしていくのだろう』と思われているようだ。
とは言え。
『確かに第十二皇子は「厄介者」ではあるけれど、第二皇子のように「嫌われ者」でないだけマシだ』とも密かに言われているようなのである。
テオの異母兄、第二皇子アルドリックは、母親の皇太后アーリヤカに甘やかされて育った結果、嫌われ者かつクソ超問題児に育ったのだ。
誰にも優しいユルルア姫でさえこう言った。
「私は公開処刑が嫌いですし、冤罪や讒言等による処刑を鑑みればいっそ取りやめるべきと思っておりますけれども……アルドリック共の時だけは最前列で石を投げに参りますわ」
◆
アルドリックは己が二番目に生まれたから皇太子になれなかったと信じている。
幸か不幸か、母后アーリヤカが早産を促す薬を飲んでまで彼を早く産もうとしたことは知らない。
結局それには失敗して、アルドリックはヴァンドリックの誕生から二週間以上遅れて産まれたのだった。
アルドリックは己を産んでくれた母アーリヤカが大好きだ。
どんなことをしたってアーリヤカだけは彼を褒めてくれるし、彼だけが絶対的に正しいのだと断言してくれる。
「アルは可愛い妾の子。 そのアルがすることに誤りなぞ欠片もある訳が無いのじゃ」




