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キミの気持ち

「はるちゃーん!ご飯にしようって、ばぁばが」


遠くから聞こえた甥っ子達の声に心底ホッとする。


「わかったー」


二人に返事をして、遥希(はるき)の元に向かう。


「遥希ー、ご飯にするよー」


私の隣で無言の仁王立ちをしていた澤井さんに、律希(りつき)と朋希(ともき)が気が付いて挨拶をする。

チラッと彼女を見ると甥っ子達にはニコやかだった。


私、澤井さんに何かしちゃったかな…?


しっかりしたお母さんだね、って言い回しが良くなかった?

それとも、滑り台させてあげて、みたいなのが嫌だった?


子どもたちを見守りながらずっと考えていたけど答えは出なくて、でもはっきりと嫌悪を示された無言の時間はまあまあに地獄だった。


「さっきまであっちで、悠叶(ゆうと)と拓海(たくみ)に遊んでもらってたー」


律希が澤井さんに言う。

さっき澤井さんが言っていた、上の子のことだろう。

同い年なのに三人も子どもがいるのか、とここでもまた、自分との差を目の当たりにした気がした。


あいりちゃんに声を掛け、遥希を抱っこして、澤井さん達のもとへ戻る。


「あの、じゃあ、これで…」


へへっと笑うと、澤井さんはスンッとした顔で、ああ、と言った。

なんで私にだけ当たり強いの〜怖いよ〜と思いながら、甥っ子達を連れて母のいる基地に戻った。


***


「え〜恭平くん達、来てるの?」


母にさっきまでの事を伝えると、好意的な声をあげた。

せっかくだから挨拶してこよっ、と母はウキウキと人混みに消えて行った。


しばらくして帰ってくるや否や、恭ちゃん達に合流するよ、と荷物をまとめ始める。

状況が飲み込めず固まる私とは裏腹に、わーい!と甥っ子達はさっさと準備をした。


数分後には、幼馴染夫婦とその子ども達、知らない陽気なお兄さん、母と甥っ子三人と一緒に大きなレジャーシートに座っていた。


……何この状況…。


母は上機嫌だけど、相変わらず澤井さんは私に対しては塩対応だし、知らない男の人いるし…。

早くご飯食べて帰りたい、としおしおしながら姉が持たせてくれたおにぎりを頬張った。


「初めまして!はるさん!」


知らない男の人が、ニコニコと元気いっぱいな声を掛けてくれる。


「あ、はい、初めまして…」


正直、こういうタイプは苦手だ。


「自分、恭平さんの後輩で、拓海って言います!」


拓海…ああ、さっき律希が言っていたのは、このお兄さんのことだったのか。


「夏希さん達にも良くしてもらってて、律希くん達ともよく遊んでもらってます」


にこー!と笑うのが大型犬っぽい、憎めない感じの人だった。

義兄とも繋がりがあるのか、正直面倒だな、と愛想笑いの下で思った。


「だから羽琉、この後は皆さんと遊んでね」


母が当たり前のように言う。


「…は?」


その言葉に思わず素の声が出た。

母は気にも留めずに続ける。


「律希たち、まだ遊びたいみたいだし、恭平くん達いれば大丈夫でしょ?お母さん、先にバスで帰るから」

「え、ちょっと…」


私の動揺をよそに子ども達はお昼をすでに食べ終えて、早く遊ぼうと拓海さんを急かしている。

拓海さんはサクサクッと食事を終えて、甥っ子達と共に人混みへと消えて行った。


それを合図に、母も自分の荷物だけまとめ、恭平くん達に挨拶をして去っていく。

母の背中には、自分は一仕事終えた、みたいな解放感を感じた。


えっと…と不安な目をふたりに向けると、無表情な澤井さんの隣で、恭平くんはなんともない風にグッと親指を立てた。

グッ、じゃないのよー…。


「あいりもにぃに達のとこ行くー」


あいりちゃんにねだられて、恭平くんが席を立った。遥希は私の膝の上でうつらうつらとしている。


ふと気付けば、澤井さんとふたりになっていた。

気まずさしかない空気の中で、それでも一応お礼を言えた私は偉かったと思う。

まあ、それさえ、ああ、と一言で流されちゃったけど。


すっかり眠りについた遥希をバスタオルの上に下ろして一息つく。

持ってきていたミルクティーを口に含む。

クーラーボックスのおかげでまだひんやりとした甘さが身体にやさしかった。


「…私さ」


澤井さんが前触れなく口を開いた。


「あんたみたいなタイプ、嫌い」


はっきりと嫌悪を口に出される。

まあ、最初から態度で気付いてましたけどね、と苦笑いしか出なかった。


「うまくいかなくなったからって実家に急に帰ってきて、ろくに働きもしなければ、家のこともしないとか、甘え過ぎ」


ああ。

だから、最初から私に対して当たりがキツかったのか、とシャープな彼女の横顔をチラリと窺う。


毛先に向かって明るくなっている髪の毛が、強い日差しで金色に輝いている。

今日、初めてまともに彼女を見たかもしれない。


「…でも、せっかくこんな機会だし」


立てた片膝に頬杖をつきながら、ぶっきらぼうに言う。


「身の上話くらい、聞いてやってもいいけど」

「………え…?」


全然聞きたそうじゃないのに、早く話しなさいよ、という圧はすごくて。

彼女の雰囲気に負けて、私はポツリポツリとここまでの経緯を話し始めた。

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