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ハズレスキル『丼マスター』で異世界スローライフ?〜ゴミ拾いしてたら始祖竜が懐いたので、辺境の最強村で至高の牛丼屋はじめます〜  作者: 月神世一


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EP 6

不穏な影と、子供たちの悲鳴


「はーい皆さーん! キュルン☆ あなたの心に舞い降りる大天使、キュララだよーっ! 今日はなんと、サスガ屋特製・カツ丼10杯の大食いチャレンジ企画でーす!」


ポポロ村の中央広場は、朝から異常な熱気と喧騒に包まれていた。


天使のT-チューバー・キュララが、ホログラムカメラに向かって愛想を振りまきながら、山積みにされた特盛カツ丼を前にポーズを決めている。


「すごーい! キュララちゃん、細いのにいっぱい食べるのね!」


「応援するわよー! 終わったら私のテントでマシュマロ焼きましょ!」


「はいっ、お茶のおかわりです!」


村長のキャルル、自警団のダイヤ、そしてエルフのルナといった『ポポロ村の絶対防衛戦力』であるヒロインたちが、キュララの配信を盛り上げようと、こぞって広場の中央に集まっていた。


しかし、カメラの死角(衝立の裏側)では、全く別の光景が広がっていた。


「もぐっ、もそそっ……! 悔しいですぅ……あの鳥女に太客リスナーを取られるなんて……! でもカツ丼は美味しいですぅぅ!」


芋ジャージ姿の人魚姫・リーザが、キュララが一口だけ食べたカツ丼を次々とスライドして受け取り、涙目でブラックホールのように胃袋へ吸い込んでいる。


完全なる『やらせ(替え玉)大食い配信』である。


「はぁ……。あいつら、朝から元気がいいでござるな」


広場から少し離れた村の外れ、森へと続く裏道で、良樹はホウキとちりとりを片手に深い深いため息をついていた。


所持ポイント『3 pt』の男に、広場のどんちゃん騒ぎに混ざる資格(とポイント的余裕)はない。今日も地道に枯れ葉を集めて、日銭を稼ぐしかないのだ。


【 ピロッ♪ 善行(村の清掃)を検知しました。 +2 pt 】


「よし……これで5ポイント。あと95ポイント貯めれば、牛丼(並)が食えるでござる。千里の道も一歩からでござるよ」


良樹がホウキを握り直した、その時だった。


「――っ、静かにしろ。村の主力バケモノどもは、どうやら広場に集まってるみたいだぜ」


「クソッ……! おのれポポロ村め。あのクソ執事と猫耳のせいで、俺たちの『黒鉄商会』は一晩で木端微塵だ。借金取りに追われて、もう逃げ道はねぇ……」


ガサガサッ、と森の茂みが揺れ、物騒な話し声が聞こえてきた。


良樹はビクッとして、慌てて近くの大きな木箱の陰に身を隠した。


そっと覗き込むと、そこにはボロボロの黒い戦闘服を着た、十人ほどの柄の悪い男たちが息を潜めていた。


全員の目が血走り、その手には殺傷能力の高い『魔導アサルトライフル』が握られている。昨日、リバロンとニャングルの裏工作によって一瞬で社会から抹殺された、裏組織の残党(奴隷狩り部隊)たちだった。


「タダで潰されてたまるか。こうなったらヤケだ」


リーダー格の男が、血走った目で村の外れを見据えた。


「村の端っこで遊んでる『ガキども』を攫うぞ。何人か攫って地下闘技場に売り飛ばせば、高飛びの資金くらいにはなるはずだ」


「なっ……!?」


木箱の陰で、良樹の顔面からサァッと血の気が引いた。


男たちの視線の先には、ポポロ村の幼い子供たちが五、六人集まって、人参マンドラを追いかけて無邪気に遊んでいる姿があった。


広場からは遠く離れている。キャルルたちに助けを呼ぼうにも、キュララの配信のどんちゃん騒ぎで声は届かないだろう。


「いくぞ! 抵抗する奴は容赦なく脚を撃ち抜け!」


男たちが茂みから飛び出し、一斉に子供たちへと襲いかかった。


「きゃあああっ!?」


「だ、だれ!? やめてっ!」


銃口を突きつけられ、黒ずくめの男たちに乱暴に腕を掴まれた子供たちが、恐怖で泣き叫ぶ。


「泣くんじゃねぇガキ! 命が惜しけりゃ大人しく――」


(ヤ、ヤバいでござる! 子供たちが攫われるでござるよ!)


良樹の心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。


助けに行かなければ。村の男として、いや、中二病の『漆黒の魔闘剣士』として、ここで飛び出さなければ絶対に後悔する!


「と、止めるでござ……る……っ!」


良樹は震える足に力を込め、木箱の陰から一歩踏み出そうとした。


しかし、ステータス画面に表示された【残高:5 pt】という非情な数字が、彼に現実を突きつける。


防弾用の『魔導シールド』すら召喚できない。腰の『竜撃砲』はチャージに3分かかる上、こんな至近距離で撃てば子供たちまで巻き込んでしまう。


(ダメでござる……今の拙者が丸腰で飛び出しても、ハチの巣にされて終わりでござる……っ! 誰か、誰か来てくれでござるぅぅ!!)


恐怖で足がすくみ、動けない良樹。


無力な己を呪いながら、ただ震えることしかできない。


「ママぁぁ……っ! たすけてぇぇ!」


一人の小さな女の子が、男の手を振り解こうとして、無情にも地面に突き飛ばされた。


男が舌打ちをして、泣き叫ぶ女の子の頭に、冷たい魔導ライフルの銃口を突きつける。


「うるせぇガキだな。お前は置いていく。ここで死ね」


男の指が、引き金トリガーにかかった。


子供の悲痛な叫び声が、平和なはずの村の路地裏に空しく響き渡る。


万事休す。


誰もが絶望した、まさにその瞬間だった。


――カチッ。


子供の泣き声に重なるように。


路地裏の奥から、乾いた、しかし異様なほど鮮明な『真鍮製のオイルライター』の音が響き渡った。

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