第12章 第4話 ペルタと現実
アカデミーブロックの研究室に、鼎と桃香は訪れていた。その研究室は鼎の友人である巴が使っている部屋である。
「ペルタのデータの修復は順調だよ」
この日の巴の機嫌は比較的良い方だと言えるだろう。データの修復が上手くいっているらしく、嬉しそうだ。
「そう遠くないうちに、彼女は現実世界で目覚めるはず」
「それは良かった…のかな」
鼎は素直に喜ぼうとしたが、彼女が生活していたエリア666が既に吹き飛んでいる事を思い出した。彼女が目覚めるのはエリア015なので、安全ではあるが。
「目覚めた時にどう説明すればいいんだろう…」
「桃香もそういう事悩むんだ…」
「ペルタだって可愛い女の子だしー」
「ああそういう…」
桃香が悩んでいた理由は、鼎が思ったよりしょうもなかった。巴としては他の誰かに押し付けるからどうでもいいと言ったところだ。
「秋亜さんに頼むよ。こういうの得意そうだし」
「代表にそういうの押し付けるんだ…」
巴は崩壊災害に対する動揺は、既に乗り越えたらしい。世間的には、それぞれのエリアのジオフロントに対する信頼そのものが揺らぎ始めている。
「しっかし…あの災害な何だったのか…悲劇って言葉で片付けられない立場だからなぁ」
「それはボク達だって同じだよ」
巴は独自にあの災害が起きた原因について考察していた。彼女には「自分はただの一市民とは違う」という自覚があった。
「ジオフロントの老朽化とは思えないんだよね。それが原因なら、他のエリアも次々に吹っ飛んでる筈だし」
「やっぱりハッキングかな?」
「そうとしか考えられないけど、やっぱり普通のハッカーじゃできないと思う」
「キルウェアを仕込んで暴走させた…でもそんな程度じゃシステムに弾かれるよね」
巴と桃香は可能性について議論していたが、確かな答えに辿り着く事はできなかった。仮説は立てられるが、確証はないのでそこまでだった。
「それよりも、どうにかしてペルタを早く起こさないとね」
「現実世界の肉体の維持の問題ね…」
科学技術が大幅に進み、昏睡状態の人間の肉体の維持も簡単になった。それでも不死になる技術が開発されていない様に、休眠状態の体を永遠に維持する事は不可能だ。
「彼女はずっと眠り続けていて、起きたら家族がいない…」
「中々辛い状況だよね…」
「でも彼女だって、これからの世界に向き合わないといけない」
「ボクは慣れっこだけど、ペルタちゃんは大丈夫かな…」
巴と桃香、そして鼎は複雑な感情に囚われていた。こうした少女に対してどの様に対応すればいいか、未だに答えは出ていないのだ…




