34 プレゼント
お題「エプロン」
「このパスタ、いつもより美味しい~」
「そうか?少しニンニクの量を調節してみたんだ」
「秀は料理の才能があるわね♪」
「……そんなこと言って、俺ばかりが料理を作ってる……」
「何か言った!?」
「何も……」
全く、いつもこの調子だ。彼女は料理は一切しない。付き合い始めの頃は、それでも挑戦してくれてたが、あまりの下手さについ俺が手を出したら、この様だ。
彼女に料理をさせる方法はないものか……。俺だって彼女の手料理を食べたい。友達はみんな彼女に作ってもらってるってのに……。
「はあ……」
「どうした? 秀。ため息なんて」
「ああ、瞳が相変わらず料理をしないんだ。俺も手料理を食べたいよ」
「瞳ちゃん、家庭的に見えるのになあ」
「それが全くさ。料理は今や俺の担当になってる」
「あははは! お前シェフみたいだな」
「笑い事じゃねーよ。はあ……」
「辛気くさいぞ。じゃあ俺が秘策を教えてやるよ」
「お前の秘策なんて信用ならねえ」
「まあ、聞けよ。…………」
「そんなことしたら……!」
「まあ、やってみろよ」
「……」
悪友の言葉を信じてもいいものか……。だが、やってみる価値はあるかもしれない。
俺は、ある高級店に入った。
そして、いつものように瞳の家へ向かった。
「秀、いらっしゃい。今日の夕飯は何かしら」
「……瞳、これプレゼント」
俺は紙袋ごと手渡した。一流ブランドの袋に瞳は釘付けだ。
「今日って何か記念日だったっけ?」
「いや、瞳に贈りたくなって……」
「なんだかわかんないけどありがとう!このブランド好きなのよね♪」
がさがさ
ぴろーん
「……秀、これは……?」
「いや、その、えーと」
がんっ
「何もぐーで殴ることないだろ!?」
「嫌味!?」
「ち、違うよ!せめて一緒に料理が出来たらと……」
「秀、お腹空いた」
「……わかったよ」
ちきしょー。失敗したじゃねーか!
俺の贈ったエプロンはごみ箱行きになりそうだ……。




